ミュージックビデオ製作回顧録 その2
まずはじめに
本格的な夏がやってきてますね。去年の今頃、上の作品など3本のミュージックビデオの制作をすすめていました。その回顧録です。
詳しいことは前回の投稿の最初の方を読んでもらうと大体のことが分かってくるんじゃないかと思いますので、そちらでお願いします。
上の動画は中ムラサトコさんのブックレットアルバム「私の中に住む街」に収録されている「ないしょの話とかき氷」のミュージックビデオです。今作も歌詞はありません。ミュージックビデオを撮影するうえでタイトルとブックレットに記載されている曲に対するサトコさんの思いを読んでヒントにしました。
ブックレットはこう書き始められていました。
『夏の終わり。…』
あれ!やばいな。
と言いますのも、「三津浜の今を映像に残す」プロジェクトでミュージックビデオを制作するにあたりサトコさんから「このアルバムは三津浜の1年を表しています。春から始まって冬まで、そしてまた春がくる。最後の曲が終わるとまた1曲目から始まるような構成になっています」というようなことを聞いておりましたので「それなら、4曲のミュージックビデオを制作しよう。春夏秋冬だ」と。そしてこの作品は夏のパートとして制作することを決めていました。そしたら「夏の終わり」でした。
こうなったら開き直りですね。
別にブックレットの内容に忠実にやってくれという注文があるわけではなし、思うままにやろうと、書いてあることを元にしつつ自分なりにアレンジを加えて完成したのが上の作品です。
異色の作品!?
他の3作とこの作品の異なる点があります。それは音楽が始まる前にドラマ部分があることです。そのため出演者には演技の経験がある人が良いだろうと松山の演劇関係者から声をかけて今回の4名が参加してくださいました。皆さん、少ない期間の中でこちらの要求する芝居を瞬時にやってくださり大変助かりました。
ここだけの話、最初の脚本から一部をカットしたものになります。編集の段階で脚本の流れとして、どうにもしっくりこない部分があり結局カットしました。ちょっとその後もいろいろあり、手を変え品を変え試行錯誤があったのですがこれを書いている撮影から1年後の私としましては、上のカットしたバージョンで「いいじゃん」という気分です。途中のシーンをカットしたことによって漂うヘンテコな雰囲気が良いと思います。
元喫茶店で
撮影は三津浜の陸の玄関口にある元喫茶店で撮影しました。撮影当時はほぼ倉庫のような状態でしたが、それでも少し片づけさせてもらったら喫茶店の雰囲気がすぐ蘇って良いロケ地を提供してもらえて有難い限りでした。
撮影の小道具を準備するのにいちばん困ったのがアコーディオンでした。演奏しているシーンでは楽曲に使用されている楽器と同じものを出していますが、スネアドラムとオルガンは知り合いが持っていたのですぐに借りれました。ところがアコーディオンを持っている人はそうそういませんでした。どうしたものかと思案しました。楽器屋でレンタルする方法があるか、音楽している知り合いに片っ端から連絡して持ってないか聞こうか、と考えながら仕事の休憩中に新聞をパラパラめくっていると地元新聞社が開催したアマチュアカメラマンたちが応募した写真のコンテストの結果を写真付きで掲載しているページがありました。そこを何気なく見ているとアコーディオンを持って笑顔で写真に収まる男性の姿が!さらに!!その背景の街並みがどこか見覚えがある…三津やん!!
というわけでその背景の場所へ行くとすぐ近くにウクレレ教室などをしている喫茶店があったわけです。すぐさま訪ねました。事情を話すと写真と同じではないけど使っていないアコーディオンがあるからと貸してくださいました。
どこからどこへ繋がっていくか、分からないものだなと思います。意外と答えはすぐ近くにあるものだなと。
そして衣装です。今回も八木さんです。演奏シーンでの衣装は八木さんお手製のスーツ風Tシャツです。楽団の衣装をイメージしました。でも何処かヘンテコなものということで、Tシャツにネクタイをしているような柄があるものや紋付袴の柄が入ったものという注文を出しました。すると八木さんは無地の白Tシャツにミシンで黒い線を描いて今回のような楽団のような衣装を作ってくれました。
ワンオペはつらい
ドラマ部分の撮影も録音も自分ひとりでほぼやりました。基本的に他の作品でも1人、もしくは2人というスタッフの体制で撮影をしてきましたが、ちょっと無理だなということは薄々気付きながらやってました。この作品の撮影中にもし今後このような状況での撮影やることになるなら、別の方法でやろうとハッキリと決めました。より1つの作業に集中するための方法を今後は行います。それについてはまた別の機会に記すかもしれません。
夢の中、幻覚、意識朦朧とした頭の中
そして演奏シーンです。イメージは映画の原初、引きの固定された画角で出演者たちが手回し駆動のフィルムカメラを前にチョコマカと動くというもの。通常の速度で撮影し編集時に4分の1くらいスピードを速めています。主人公の女性が朦朧とする意識の中で見た夢のような、幻覚のような世界を表しました。ここはブックレットに書いてあった文章からイメージを膨らませています。
出演者の人たち、関係者の人たちにたくさん助けてもらって完成までいけたと思っています。また、ワンオペでの自分なりにできる限界点がわかり今後の自分の制作のかたちを方向付ける作品となりました。
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