新規事業の立ち上げには「スピード」が命である4つの理由
よく新規事業の立ち上げでもっとも重要なのはスピードだと言われます。
繰り返しスピードが重要だなんていわれ続けると、なんとなくそうなのかなぁ?っていう気になってしまいますが、なんでスピードが重要なのでしょうか?
何も考えずに、鵜呑みにすることほどコワいものはありません。
スピードが新規事業の生命線である理由を考えて見ましょう。
1.スピードが足りなかったら、ライバルに先を越されるから
いちばん最初に思いつく「スピードが命である理由」は、新規事業の立ち上げにもたついていると、ライバル企業に気づかれてせっかくのチャンスを台無しにしてしまうからではないでしょうか?
あなたが、「いいアイデアを思いついた」とどんなに強く思っていても、もしかしたら同じことを考えている人はどこかにいるかも知れません。
そして、もし誰かが同じことを考えている可能性があるのなら、できるだけ早く有利なポジションを獲得しないと、相手がそのポジションにたどり着いてしまいます。
競争の激しい市場では、いいポジションはひとつしかありません。相手よりも早くいいポジションにつくことが、成功の近道なのです。
たとえどんなに面白いアイデアを思いついても、いつか誰かが始めないと何も生まれませんし、どんなにいいアイデアを思いついても、実現するのに時間がかかりすぎたら、意味がないのです。
あれこれ、先回りしてリスクばかり気にしていても、何も始まりません。
ビジネスチャンスなんて、その辺に転がっているわけではないのです。とくに日本の市場のように、成熟した産業においてはそうです。
市場がありそうだと思えてきたときには、すでに誰かがその市場を作って、参入障壁を作ってしまっているかも知れません。手遅れになる前に、すばやく市場に参入することが必要なのです。
2.市場が求めているから
いつの時代にも、ニーズはあるものです。まったくニーズがない状態とは、言い換えれば人知の限界に至った状態なのではないでしょうか?
市場はつねに新しい機能、ソリューション、快適さ、利便性、発見、驚きなどの新しい価値を求めているものです。
人々に、生活水準を高めようとする気持ちや、今よりも自分を高めたいといった向上心がある限り「これで満足だ」という上限や、悩み事がいっさいなくなるなんてことはありません。
人は、いつでも、いままで誰も提供できなかった価値を求めているのです。
そのようなニーズや悩み事にこたえるような新しい価値を、誰かが提供できたとき、そこに市場が生まれます。
そして、そのとき誰よりも早く、新しい市場カテゴリを作ることができさえすれば、市場をリードするブランドを作ることができます。
また、ブランドが浸透するにしたがって、新しい商品やサービスが普及するスピードも速まり、さらにブランドが浸透する好循環が生まれるのです。
このように、早くニーズを見つけて、早くニーズにこたえることで、市場を活性化し続けることができるのです。
価値はつねに進歩を続けるのです。
3.学習スピードが早いほど、事業の成長も早くなるから
生まれたときから完璧なスキルを備えている人がいないのと同じように、新規事業の立ち上げスキルも、はじめから身についている組織などありません。
結局は、どれだけ多くの練習や訓練をつんできたかが成功を左右します。
新規事業では、仮説検証の繰り返しをどれだけ早くまわせるかが命です。
できるだけ多くの失敗をして、早く経験をつんで学習することが、遠回りのように見えて実はいちばん早い方法なのです。
人は誰だって、できれば失敗なんてしたくないので、できるだけ確実な方法をとりたいと思うものです。
そのため、合理的な考え方にしたがって、消費者の行動を予測しようとしたり、市場の成長を予想したりしたがります。そして準備万端にして取り掛かりたいと思うものです。
でも、市場は合理的に動いているとは限りません。人は残念ながら、ときより非合理的な判断をする生き物なので、予測できない行動をすることも多いのです。
だから、あまり合理性や論理的な正しさを追求しすぎると、市場機会を逃してしまうこともよくあるのです。だれも経験したことがない新規事業では、なおさらでしょう。
そんな不確実性の高い状況では、消費者の消費傾向や市場特性ををいち早く実地で学んだ企業だけが、事業の成長のチャンスをつかみ取れるのです。
4.時間をかけすぎると捨てられなくなるから
「サンクコスト」という言葉を知っていますか?埋没費用とも言いますが、簡単にいうと「過去に行った取り返せない投資」のことです。
サンクコストについては、「コンコルドの誤謬」が有名ですね。
コンコルドとは、かつてイギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機の名前ですが、製造段階から採算が取れないとわかったにもかかわらず、これまでにかけた時間と投資が無駄になってしまうことがイヤで赤字を垂れ流しながら運航を続けた、サンクコストの典型例として、よく使われている話です。
不思議なもので、人は時間をかけた分だけ、自分の考えに固執してしまう特性があるようです。
これはかつて採算がとれていない既存事業でもおなじです。これまでかけてきた苦労を無駄にしたくない一心で、これ以上つづけても採算はとれないのをわかっていながら、赤字を出し続けても事業継続にこだわってしまう事例は山ほどあります。
もちろん、これから始める新規事業も例外ではありません。一度思いついたアイデアを時間をかけて検討したりまわりを説得したりしているうちに、いつの間にか発案者の心の中に、これまでかけてきた苦労や時間に対する「惜しみ」や「執着」が生まれているかもしれません。
新規事業をはじめるメリットは、いろいろ試すことができることなのです。この最大のメリットを生かすためには、すぐに方向修正できるように、つねに平常心でいられるようにしておく必要があります。当初のアイデアや仮説を捨てて、新しいアイデアを思いつけるようにするためにも、スピード感が重要なのです。
これがまさに、「新規事業の立案にとってはスピードが命」である最大の理由なのです。