どんな本読んでるの?「思い込み」から開放してくれた本たち【スタッフnote】
こんにちは。アーティストプロデュース事業部の兵藤茉衣です。
読書は大の苦手で、映画やドラマやアニメや特撮ばかり見ていたのですが、出産直後に一時的に光の刺激に敏感になったことと、新生児の昼寝中に物音を立てられないことが原因で、光の出ない静かな余暇活動が必要になり、読書をはじめました。
育児休業から復職した今も(若干廃れつつも)、本を読むように心掛けていて、たまにプリコグスタッフが担当してるプロジェクトに関係しそうな本をお薦めしたりしています。
いろんなところでいろんな人にお薦めしてきたなかから、気づかないうちに自分が作ってしまっていた「思い込み」に気づかせてくれたり、そこから開放してくれた本たちを、ご紹介したいと思います。この記事で紹介している本を見て「そういうことに関心あるなら、この本がおすすめ」という方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えてください!
『舞台の上の障害者 ─境界から生まれる表現』
長津 結一郎 (著)
「障害」と「健常」は、何が違うのか?違いはあるけど同じところがあったり、同じだけど違うところがあったり、そもそも人間はひとりひとり違うのだから「障害」と「健常」という物差しで分けられるのか?分ける必要があるのか?でも両者が明らかに違うから、今の「健常者」によってつくられた制度の中では生きづらい人がいるわけで...
いろんな線引き(境界)が流動的で、割り切れないはずなのに世界は割り切れないまま存在してること、その流動的な境界や割り切れない部分を割り切らないまま何かを生み出せる表現のポテンシャルに心躍ると同時に、ぼんやりと「これで本当にいいのかな?」と思っていたことにカチッとはまる言葉が沢山あって、自分の鈍さをグサグサと刺してくれた本。
文化事業の評価ハンドブック 新たな価値を社会にひらく(SAL BOOKS 3) (文化とまちづくり叢書)
文化庁×九州大学共同研究チーム (著, 編集)
「評価」と聞くと、点数や順位をつけられるなど、一方的に判定されるイメージがあります。(私にとって、思い出されるのは、美大受験のあれやこれや。何を基準に絵の上手い下手が評価されてるのか分からなかったし、よく分からない基準で点数つけられることも疑問でした。)
しかし、「評価=Evaluation」の語源は、「価値(valuer)を見出す(e-)こと(-ation)」だそうです。本来の意味の「価値を見つけ出すこと」と、自分が「評価」という言葉に対して抱いていたプチ嫌悪感とがかけ離れていることに驚いて、この本を手に取りました。
なぜ評価が必要なのか?誰が評価するのか?
「事業の成果をどう示したらいいんだろう?」「売上や来場者数など、定量的なものだけで評価されても困る」「助成金報告書に何を書いたらいいのか分からない」みたいな声をよく耳にします。少しでも心当たりのある方には、是非手にとっていただきたい。本の紹介文にある通り「アートを学ぶ学生、ホール・劇場運営者、自治体の文化事業担当者に最適、最強のガイド」だと思います。
「社会」を扱う新たなモードーー「障害の社会モデル」の使い方
飯野由里子 (著), 星加良司 (著), 西倉実季 (著)
「障害の社会モデル(障害は個人ではなく社会にある)」という考え方を理解してるつもりになっていたけど、自分の言動がそれに伴えてない時がある、ということに気付かされた本。
鑑賞サポートを紹介するときに「目の見えない人向け」「耳の聞こえない人向け」と分類してきたけれど、社会モデルの考え方に基づくと「こういう“人”向け」ではなく、「目が見えることを前提に作られた“社会”向け」「音声日本語で情報発信してる“社会”向け」だって良いはず、と思ったりします。
社会モデル的な考え方に立脚して考えられてないことに、気づかずに振る舞ってることも多いんだろうな、と思います。すこしづつ自分の中に染み付いてるものを剥がしていけたらと思い、自分にとって大事な章をときどき読み返しています。
『障害者の舞台芸術鑑賞サービス入門 人と社会をデザインでつなぐ』
南部充央 (著)
本書の中でも繰り返されている通り、「同じ障害種別でも人によって必要なサポートがさまざまで、書いてある対応があてはまらない場合もある」ことを肝に命じつつ、公演の度に読み返しています。
これまでプリコグが運営してきた公演・イベントで「この時こうだった」「こういう意見があった」「ここで悩んだ」というスタッフの気づきを書き留めている「バリアフリー社内wiki」と、この本を両方を見ながら、バリアがフリーなイベントの設計を考えるようにしています。
プロジェクト・ヘイル・メアリー 上/下
アンディ・ウィアー (著), 鷲尾直広 (イラスト), 小野田和子 (翻訳)
なぜここで紹介するのか、理由を述べるとネタバレになってしまうので、紹介しづらいのですが、ライアン・ゴズリングで2026年に映画化予定なので、映像化する前にぜひ小説で読んでほしい。
未知との遭遇と、その未知なものが未知じゃなくなって、心が解れていく過程って、どうしてこんなに美しくて“良い”のでしょう。
SF小説ですが、私はこの本を「星と伝説」「古事記」「北欧神話」などを並べて置いてる星座と神話のコーナーに置いています。
マット・デイモンが火星に取り残されてジャガイモを育てたり失敗したりする映画『オデッセイ(火星の人)』の原作者による最新作です。
文:兵藤茉衣(アーティストプロデュース事業部/プロデューサー)
株式会社precog(プリコグ)は、芸術祭、映画祭、演劇・ダンス公演、スクール事業など、舞台芸術をはじめとする、さまざまなアートプロジェクトの企画・運営を手がける制作会社です。近年では、アートと福祉の取り組みにも力を入れ、芸術に関する新たな事業の開発にも取り組んでいます。
【スタッフnote】では、プリコグスタッフの日常や、仕事を通して得た新たな気付きや知見の数々、プロジェクトにかける想いなどをお届けしていきます。
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