precogの鑑賞サポート 〜劇場・イベント編〜
誰もが安心して劇場で作品を鑑賞したり、イベントに参加できるよう、precogが企画制作する公演やイベントでは、アクセシビリティを高めるための工夫に取り組んでいます。いろんな人がアクセスしやすい・参加しやすい劇場空間づくり、その工夫とは?
子ども連れのご家族や、障害のある方など、なかなか劇場に足を運びづらいと感じている方もきっと観劇へのハードルが下がるはず。観劇体験をお届けするための取り組みをご紹介します。
1. 耳の聞こえない方、聞こえにくい方に
① 舞台上字幕
どの座席からも見やすい舞台上や舞台付近に日本語や英語で字幕を表示します。
チェルフィッチュ×金氏徹平『消しゴム山』では、日本語と英語の字幕を舞台上のスクリーンに映し出しました。聴覚障害の方や英語話者の方にも観劇をお楽しみいただけます。
② 手話通訳
舞台上や舞台付近で日本手話通訳を行います。
ママリアン・ダイビング・リフレックス/ダレン・オドネル『私がこれまでに体験したセックスのすべて』では、6人の出演者に対し3名が舞台上で手話通訳を行いました。
③ タブレット字幕貸出
タブレット端末に字幕を表示し、手元でご覧いただけます。
日本語字幕だけでなく、英語字幕、かんたんな日本語を用いた字幕などに切り替えて表示できます。聴覚障害のある方、英語話者の方、日本語に不慣れな方、子どもなどにも楽しんでいただけます。
④ 音声補聴(ヒアリングループ貸出)
明瞭な音声を補聴器に届ける機器を貸し出します。
セリフや音楽といった舞台の音声の聞こえを補助。補聴があれば音が聞こえやすくなる難聴者が利用することで観劇のサポートとなります。
⑤ 事前解説
作品の上演前に、あらすじを解説します。手話通訳や、かんたんな日本語で解説を行うことで、聴覚障害者だけでなく、知的・発達障害者、子どもにとっても作品をより分かりやすく楽しむ工夫をします。
True Colors MUSICALの事前解説の様子。画像やパンフレットを用いてわかりやすい解説を工夫しました。
⑥ 筆談ボード
会場の受付に筆談ボードをご用意しています。
聴覚障害のある方や発声障害のある方と筆談にてコミュニケーションを行います。
2. 目の見えない方、見えにくい方に
① 音声ガイド貸出
情景描写や人物の動き・表情などの目から入る情報を説明するナレーションが聞ける音声ガイド機器を貸し出します。
True Colors MUSICALは英語での上演だったため、”日本語セリフ吹替のみの音声”と”日本語セリフ吹替に舞台上で何が起こっているかの説明が加わった音声”をご用意。視覚障害だけでなく、子どもや文字が読みにくい方にも観劇を楽しんでいただけます。
エクストラ音声貸出
チェルフィッチュ×金氏徹平『消しゴム山』東京公演では、音声ガイドの仕組みを使って、舞台上の上演にかさねて聞くことでエクストラな観賞体験ができる音声機器の貸し出しを行いました。作・演出の岡田利規が書き下ろしたテキスト『山がつぶやいている』を、俳優の太田信吾が読み上げたナレーション音声を制作。障害の有無に関わらず、上演と合わせて聞くことで自由な鑑賞をしていただけます。
② タッチツアー
作品の上演前に、舞台上で実際の舞台美術や衣装、小道具などを直接触ることができるツアーを実施します。
True Colors MUSICALでは視覚障害者や発達障害者を対象にタッチツアーを行いました。監督や出演者らと舞台に上がり、衣装や小道具に直接触れながら説明を受けることで、作品のイメージが膨らむと好評でした。
チェルフィッチュ×金氏徹平『消しゴム山』京都公演では、セノグラフィーの金氏徹平氏とともに子どもや視覚障害者を対象としたタッチツアーを行いました。舞台美術に実際に触れ、アーティストの解説を聞くことで、上演だけでは伝わりづらい作品の情報を体感してもらう場となりました。
③ 点字パンフレット
点字版のパンフレットをご用意します。
視覚障害の方もご覧いただけるパンフレット。ご希望に応じて事前に郵送も行います。
3. 客席設計
① 鑑賞マナーハードル低めの回
演劇は観たいけど心配なことがあるという方にも気兼ねなくご観劇いただくために、鑑賞マナーを少しだけゆるくする回をご用意します。
チェルフィッチュ×金氏徹平『消しゴム山』では、親子連れや障害のある方、観劇経験が少ない方などにもお楽しみいただける上演回を設けました。観劇に対する心のハードルが少し下がることで安心して劇場にお越しいただけます。
▶︎note:鑑賞マナーをゆるくした『消しゴム山』上演回レポート ~子どもも障害者も劇場へ~
② ゆずりあいエリア
演劇は観たいけど心配なことがあるという方にも気兼ねなくご観劇いただく座席エリアを設けます。
True Colors Festivalの公演やイベントでは、障害のある方・子ども連れ・シニアの方など、大勢の人の中での移動が難しい方や何らかの理由で見えづらい方も一緒に観賞できる「ゆずりあいエリア」を設計。いわゆる健常者の方にとっても多様な社会を作る「当事者の一員」であるという意識を持ってもらえる場となりました。(写真は野外イベント・True Colors DANCEのゆずりあいエリアの様子)
③ 車椅子席
車椅子専用のスペースをご用意します。
車椅子に座ったままの観劇、または会場の座席での観劇をお選びいただけます。
④ 補助犬利用
補助犬利用で観劇いただける座席をご用意します。
補助犬と気兼ねなく鑑賞できると、利用者にも好評です。
⑤ 介助者1名無料
介助者の同伴が必要な場合に、介助者1名様まで無料でお席のご予約を承ります。
⑥ 通路側席
小さなお子さま連れの方、上演中に入退場をする可能性のある方や客席の中まで入っていくことが難しい方には、通路側の席をご用意します。
通路側の席は入退場しやすく、安心して観劇いただけます。
⑦ 優先入場
鑑賞サポートをご利用の方、小さなお子さまを連れてくる方、お手伝いが必要な方などは、通常の開場時間よりも前にご入場いただけます。
時間や混雑を気にすることなく安心して座席についていただくことができます。
4. 会場アクセス
① ルート案内
最寄駅から会場までの段差の少ないルート、視覚障害者向けのルートをウェブサイトに掲載します。
True Colors MUSICALでは、段差のないルートを3つ、視覚障害の方のためのルートを2つ作成し、ウェブサイトに掲載しました。
② 最寄り駅からのご案内
車椅子の方や視覚障害のある方など、劇場までのアクセスにサポートが必要な方のため、駅までの送り迎えを実施します。
研修を受けたスタッフが最寄り駅から劇場までのアクセスをサポート。道に迷わず安心してご来場いただけます。
5. モニター検討会
① 事前モニター検討会
障害当事者の方々に事前に字幕や音声ガイドを体験してもらい、アクセシビリティの向上につとめています。
事前に鑑賞サポートを体験してもらうことで、ブラッシュアップ。上演直前まで工夫を重ねていきます。
② モニター意見交換会
公演やイベント終了後に障害当事者の方々からフィードバックをいただき、振り返りを行い、よりアクセシブルな公演・イベント運営を目指します。
来場者の方々の意見は貴重なものばかり。アクセシビリティへの期待の声をたくさんいただいています。
観劇のアクセシビリティに向けた取り組みは、まだ始まったばかり。
precogは、多様な来場者を想定したきめ細やかな鑑賞サポートをご提供できるよう、これからもアイデアをもちより工夫を重ねていきます。そして、スタッフ一人一人による心のこもった丁寧な対応で、誰もが安心して観劇いただける環境を整えていきます。どうぞご期待ください!
<写真>
高野ユリカ:1−①、2−①下2枚、3−①⑥⑦、5−②
提供:特定非営利活動法人シアター・アクセシビリティ・ネットワーク(TA-net)1-②
提供:日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS、撮影:冨田了平:トップ、1−⑤下、1−⑥、2−①上、5−①
提供:日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS、撮影:西野正将:1−③④⑤上、2−②上、2−③、3−③④⑤
提供:日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS:3−②
◼︎ True Colors Festival – 超ダイバーシティ芸術祭 –
◼︎ チェルフィッチュ×金氏徹平『消しゴム山』
◼︎ ママリアン・ダイビング・リフレックス/ダレン・オドネル『私がこれまでに体験したセックスのすべて』
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