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無菌豚というのは、存在しません

街中などで、「無菌豚」という文言を見たことはないだろうか?


混ぜ屋として、働くようになってから、
「無菌○」という言葉は動物・畜産ではありえないということを感じた。

そんな中で、「無菌豚」という表記を見て、絶句してしまった。



都内某所のカレー屋にて


なんで、「無菌豚」なんて表記に至ったのか、
書いてみたいと思う。


まず、このメニューに書かれている「SPF豚」が原因だと思う。

先に言っておくのだが、
「無菌豚」=「SPF豚」
では全くないということを言っておこう。


その「SPF豚」について、書こうと思うのだが、
「SPF豚」は、略称で、Specific Pathogen Freeの略がSPFなのだ。
日本語にこの英語を訳すのであれば、
『特定の病原体を含まない』
という英語になる。

特定の病原体としているのは、
①マイコプラズマ肺炎
②豚赤痢
③萎縮性鼻炎
④オーエスキー病
⑤トキソプラズマ感染症
の5つ


これらの病原体が確実にフリーといえるのは、
どこまでなのかわからない…
(そこまで詳しいわけではないの…)


つまり、「SPF豚」として、5つの病気を排除していることが条件ではあるが、豚の病気は5つだけではない。
昨今では、PEDやPRRSといわれるウィルス性の病気などもあり、
これらを制御するのにも、「SPF豚」を生産している農場だけでなく、
養豚をしておられる方々は努力している。


で、話は戻るが、「SPF豚」が「無菌豚」なんていう誤解が発生した原因は、1966年にNHKで放映された「無菌豚を作る」という番組の影響があると、赤池洋二氏(2002年当時の日本SPF豚協会会長 現:名誉会長)
が、「わが国におけるSPF養豚の現状」という題で、
日本養豚協会会誌にて書いておられる。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/youton1987/39/2/39_2_79/_pdf/-char/en


日本養豚協会 会誌 39巻 2号


で、そんな誤解が起きたからこそ、今でも「無菌豚」だとか、
「清浄豚」なんていう表現で販売が行われていることがあるのだ。
(食肉販売業者のみなさんは説明しておられると思うが…)

だからこそ、様々な形で「SPF豚」が、「無菌豚」「清浄豚」ではないという、発信を行っているのだ。


2023年7月に会員に向けて発信された、
日本SPF豚協会だより No.92
においても、SPFポークの誤った表現防止にご協力ください。
という呼びかけも行っている。


「無菌豚」でもなければ、「清浄豚」でもないので、
生食なんてもってのほかだし、
加熱が不十分である場合には、問題が起こりかねないことから、
行政としても生食に対して、やめるように言っている。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/leaflet-ippann.pdf


厚生労働省 肉の食中毒


というわけで、「無菌豚」「清浄豚」という文言と共に、
「SPF豚」とあった場合には、
日本SPF豚協会へご連絡をいただきたい。



SPF豚について、もっと知りたいという方は、
日本SPF協会 50年史 ー苦悩と模索の半世紀ー
をご覧いただきたい。

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