小説『Mind Dance』
狭いアパートの重いドアを開き、行儀悪く靴を脱ぎ捨てて部屋に入ると、ゆらめくように夜がやってきて部屋全体を闇が吞みこんでしまっていた。
外を歩いているときはそれほど暗さを感じなかったのに。ため息をつき私がいない間この部屋にずっと留まっていた空気を換気するために奥の窓に向かう。ガラス戸を開き、ベランダに出て周辺を見回すと幾世帯もの家の窓に、ぽっとそこだけ浮かび上がるような照明がいくつか灯っている。透明な風がしのび込みレースカーテンが揺れる。部屋が薄ぼんやりとした生き物に見え