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夜叉となった川が愛を取り戻すまで💛

 川の大きな愛。川は旅を経て豊かに育ち、滋養を百万の生活にもたらし、海へと溶けていく…。その川が、日本の川々のいくつかがいま愛を忘れ、百万の生活を脅かしています。 

 友だちに誘われて、合唱部にうっかり入ってしまった高校1年の春。わずか半年ほどでしたが、混声合唱曲の優しい世界に漂いました。夏休みは学校に通い、練習に励みました。初レンアイもこの頃、初めてのデートで着たワンピースはいまもタンスで眠っています。暑かった夏の微熱は、秋の合唱コンクールを経て、冬の木枯らしに吹かれ、そっと冷めていきました。

 さて、あの夏に数々の合唱組曲を唄いましたが、いちばんのお気に入りは丸山豊作詞・團伊玖磨作曲「筑後川」の第5楽章「河口」。いまさらながらググったら、この組曲は久留米音協合唱団の5周年記念委嘱作品で、ブリヂストン2代目社長 石橋幹一郎氏が義兄の團氏に依頼、誕生したとのこと。

 その最後を飾る「河口」は、1986年(昭和61年)度NHK全国学校音楽コンクール高等学校部門の課題曲となり、1988年(昭和63年)には高校教科書にも採用され、卒業式でも広く歌われているそうです。知らなかった!

 ともあれ、大好きな「河口」を含む合唱組曲「筑後川」は、川の生涯を唄い、川の慈愛を称える作品です。

 阿蘇の火山岩から生まれ、ダムに止められて深く重くなり、瀧へと落ちて、魚を育てて漁師を支え、土地を豊かにして百姓を支え、祭りで人々に称えられ、やがて有明海とひとつになる壮大なフィナーレ。

 「筑後平野の百万の生活の幸を祈りながら、川は下る、有明の海へ」

 高校のかび臭い練習室で初めて、上級生が歌いあげる「河口」を聴いた時に、心が震えました。わけもなく、こみあげた涙。あれは、川の愛への感謝と歓喜がわきおこり、情動が大きく動いたのだと思います。

 しかしながら、川は時に、夜叉になります。夜叉は鬼神ですが、仏教では仏法を守る神(八部衆)のひとりとされています。いま、川が夜叉に化しているのは、わたしたちの過ちに怒り、正そうとしているのでしょうか。

 百万の幸を祈りながら海へと下る川々よ、私たちに過ちがあれば、正します。ですから、ひ弱な人々を苦しめるのはもう止めてください。人身御供を捧げることをもう赦してください。

 私は世界の全体無意識に静かに耳を澄まして、私たち人類だけの幸福を願うのを止めます。私だけでは、その祈りをハチドリの一滴ほどしか運べませんが、私のようなハチドリたちが一滴ずつを一所懸命運ぶはずです。

 地球のために宇宙のために、世界を必ず善くします。ハチドリの私たちがそうします。だから、夜叉の心を鎮め、愛の心を取り戻して、あなたたちのそれぞれの海への旅路で、それぞれの百万の生活の幸をお守りください。

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