『ウエハースの椅子』江國香織【読後脳内】

再読。
この作品は、僕が初めて読んだ江國香織の小説である。
朝起きて、本棚を見て「今日はこれを読もう」と軽率に思う。紙の本のステキなところ。

僕は今、人生のおそらく最も自由な部分にいる。
壁もない木もない山もない。
ただのだだっぴろい場所で、どこに行ってもかまわないと言われている。
だから僕らは閉じ込められている。

昨日、なんとなく暇だったので、そのとき感じていたことをそのまま書いた。

「何か」が何かもわからないのに、それをしたいと強く感じていること。
その「何か」はまだわからない。
でもその状態に、絶望という名前をつけて差し支えないものだという気がしてきた。
絶望から逃げ、脱却することは根本的にできないのだと思う。
絶望は単一的なものではなくて、多種多様で折々で、どこにでもいるから。
まるで四次元的に。
仮に今すぐ僕たちの望みが全てかなったとして、それでも僕たちは絶望となかよしのままだろう。

人間はきっと独りでも幸せだ。
何の因果か、高度な社会を作った人類は、同時に独りでも幸せでいられるためのものも準備した。
誰かに閉じ込められていないと、人はその人と密にはなれない。
誰とも密でなければ、僕らはどこにだっていけるかもしれないが、それは閉じ込められていないことを意味しない。

幸福は手に入らないから幸福であり続ける。

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