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【2027年度からついに適用!】いまさら聞けない「新リース会計基準」とは?
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1.はじめに
ここ最近、新聞等の報道で「新リース会計基準(以下、新リース基準という)」に関する記事を目にする機会が増えてきました。これによると、新しいリースの会計基準が2027年度から適用になり、リースに関連して発生する資産及び負債が原則として企業の貸借対照表(B/S)に計上することが求められるとのことです。
例えばオフィスの賃借料のように、これまで何の疑問も持たずに費用として計上されてきたものが今後は資産として計上することになるので、会計処理のあり方が大きく変わることが見込まれています。
また、新リース基準を適用する企業によっては貸借対照表など、財務内容にも大きなインパクトを与える可能性があります。
しかし、リースの会計処理に関連する会計基準はこれまで様々な歴史的な変遷を辿ってきています。その上、会計処理の考え方そのものも分かりにくいのが現状です。
そこでこの記事では、リース取引に関してこれまでどのような考え方で会計処理が行われてきたのかを解説した上で、新リース基準についてリースの資産計上に関する基本的な考え方をできるだけ分かりやすく説明していきたいと思います。
2.リース取引とは
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まずはそもそもリース取引とはどのような取引を指すのでしょうか。おそらく「リース」と言うと殆どの読者の皆さんはオフィスのコピー機や社用車などを思い浮かべると思います。この他にも航空会社が航空機を調達する場合には購入だけでなくリースにより調達するケースもあるというのも割と知られた話です。これ以外にも産業機械や工作機械、医療機器など対象物件は多岐に渡ります。
一般的なリース取引の概要は上記の図で示す通りです。すなわち、リース会社がメーカー等から機械等のリース物件を取得し、これをユーザーに提供して使用する代わりにリース料の支払を受ける仕組みです。これは法的には賃貸借取引の一形式です。
ただ、リース事業協会が公表している「リース統計」によると、2023年度のリース取扱高(リース物件のリース期間における支払リース料総額)は約4兆6千億円となっています。近年は減少傾向にありますが、最初の現行のリース会計基準が公表された1993年を含む1990年代以前は、リース取扱高が増加傾向にありました。
このようなリース取引に関する会計基準が公表された背景には企業の設備投資におけるリース取引の重要性が年々増していたという背景もあったのです。
なお、リースの会計処理には貸し手にとっての会計処理と借り手にとっての会計処理とがあります。これ以降は「借り手」にとっての会計処理に焦点を絞って解説していきます。
3.現行のリース基準の考え方
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それでは、これまでのリース基準の特徴はどんなところにあるのでしょうか?リース取引は、現行の基準が公表される以前は通常の賃貸借処理として会計処理が行われていました。これが前述のリース取引に関する会計基準の適用によって会計処理方法が大きく変わることになりました。その大きな特徴はリース取引を「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」に分け、それぞれの会計処理を規定したことです。とりわけ資産計上が求められるファイナンス・リース取引が出てきたことが現行リース基準の大きな特徴です。
例えば、1機あたりの購入価額が100万円の機械について、3年間のリース契約を締結したとします。3年間のリース料総額は150万円だったとします。ところが、中途解約する場合に多額の違約金を支払わなければならず、実質的に解約不可能だったとするとどうなるでしょうか?
しかもその間に購入価額を超えるリース料総額を支払う訳です。これは実質的には機械を割賦で購入したことと同じになります。
このように①実質的に解約不可(ノン・キャンセラブル)で②物件の購入対価を超えるリース料総額を支払うこと(フルペイアウト)の2要件を満たすリース取引のことを「ファイナンス・リース」と言います。
このように考えるとファイナンス・リースに該当する取引は、賃貸借処理ではなくリース物件を資産として計上するのが取引の実態を表しているようにも見えます。この点、現行のリース基準ではファイナンス・リースについては資産計上を求めています。
これは上記の例で言えば毎月リース料を費用として計上する代わりに、購入価額を見積もり(ここでは100万円)、これをリース資産として計上します。そして、他の固定資産と同様に減価償却を行うことによって耐用年数にわたって費用として計上していくのです。
なお、ファイナンス・リースにはリース期間終了後に所有権が移転するもの(所有権移転ファイナンス・リース)と移転しないものもあります(所有権移転外ファイナンス・リース)。そのいずれも原則として資産計上が求められます。
ただし、これまで説明したファイナンス・リースの会計処理には一部例外があり、重要性が乏しいと認められるリース取引については通常の賃貸借処理として月々のリース料を費用として計上することも認められます。
例えば(1)少額資産で購入時に費用処理する方法を採用している場合、(2)リース期間が1年以内のリース取引のようなケースです。この他、(3)所有権移転外ファイナンス・リースの場合にはリース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリース取引について通常の賃貸借処理が認められています。
オペレーティング・リースは「ファイナンス・リース以外のリース取引」として定義されていますが、こちらも賃貸借処理としてリース料を費用計上していきます。
4.新リース基準の考え方と実務への影響
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これに対して2027年度に適用予定の新リース基準は、リース取引範囲の定義を、現行基準よりも拡大させた形になっています。すなわち、リースとは「資産を使用する権利」の移転と捉えるのです。これによれば、契約の形式がリース契約であれ賃貸借契約であれ、取引の実質が資産を使用する権利の移転であるならば「使用権資産」として資産計上の対象となります。
例えばオフィスの賃貸借契約の場合だと、借手にとっては建物の一区画をオフィスとして使用する権利を取得することになるので、これも「リース」に該当する可能性があります。
この点、現行の会計基準の下では建物の賃借料は毎月賃借料を費用として計上することで足りていたのですが、新リース基準の下ではそのような処理に代えて、一定の期間でオフィスを賃借すると見積もり、当該期間の賃借料合計額に基づき「使用権資産」を計上することが求められます。
これ以外にも「所有権移転外ファイナンス・リース」や「オペレーティング・リース」についても上記のリースの定義に照らせば費用計上ではなく、資産計上が求められるものが出てくるはずです。
資産計上範囲が拡大するということは、企業の貸借対照表の資産が膨らむことを意味し、場合によっては企業の財務内容に多大な影響を及ぼす可能性もあるのです。
新リース基準の適用により資産計上額が増加すればROA(総資産利益率)やROE(自己資本利益率)等の経営指標に影響を及ぼす可能性があります。
また、資産計上の範囲の拡大に伴い、関連する業務も拡大するかもしれません。新たな業務フローが追加されるかもしれませんし、関連するシステムも変更が必要になるかもしれません。
いずれにせよ、新リース基準の適用は、企業によっては多大な影響を受ける可能性があります。そのためにも会計基準そのものの理解のみならず、企業のビジネス等に与えるインパクトを今のうちから把握しておく必要があります。
今回の記事が貴社の取り組みのご参考になりましたら幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。
次回の記事では、具体的な会計処理や、対象となり得る契約の種類などをご紹介いたします。お楽しみに!
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