ストリートファイターのプロリーグにパンピーがアナリストとして挑んだ時のお話 part5(最終回)

まずはパート1からお読みいただけるとありがたいです。
パート1
https://note.com/ppsnuwa/n/n4d28c1bd3502
パート2
https://note.com/ppsnuwa/n/n62646ec0b3f2
パート3
https://note.com/ppsnuwa/n/n3edf637cabbb
パート4
https://note.com/ppsnuwa/n/n53a1b1c78759

いよいよパート5になります。
今回でアナリストをやった話は最終回にするつもりでございます。
よろしくお願いします。

ではさっさと本編に行ってしまいましょう。

13.ついにやってしまったミス

 順調にリーグでポイントを重ねていくG8Sでしたが、11節にて私が非常に後悔する羽目になります。対名古屋OJA BODYSTAR戦での出来事です。
 先述の通りぷげら選手と対戦が想定されるプレイヤーのデータをそろえていたわけですが、このときアウェイぷげら選手相手にホーム側で出場が濃厚だったのがどぐら選手でした。

 元々どぐら選手の配信のヘビーリスナーである私にとっては配信に張り付いているのは日常茶飯事だったため、どぐら選手からベガのネタについて多くの話を聞く機会がありました。ですが、ここである「ミス」を犯してしまったのです。
 日ごろからベガの話を聞いているため、あまりにセットプレーの内容に慣れてしまっていたのです。この慣れが生んでしまったミスは「もちろんぷげら選手もこのネタ知ってるだろうな」という勝手な思い込みです。

 格闘ゲームにおいては使用キャラとそれ以外で大きな知識差が生まれることは珍しくありません。使用者しかわからない攻めのパターンなどの知識も多分にあるのですが、ここまでのぷげら選手の豊富な知識量とその強さに完全に「この人なら知ってるよな」と勘違いしてしまったのです。

 この時どぐら選手が使ったネタは、ベガがトリガー2発動中に大Pやサイコアックスに遅らせてコマンド投げを仕込むことで、相手がVリバーサルを打っていた際にコマ投げが確定するというネタ、ちなみにこのネタはVリバーサルを遅らせることで回避できます。

 恐ろしいことに、対策が漏れたところはちゃんと返ってきます。

 ついに迎えた本番、予想通りどぐら選手がぷげら選手相手に登場します。試合を見守る中で、どぐら選手のこの遅らせコマ投げがガンガン決まるのを見て「ん・・・?おかしいな?」と私は思い始めます。
 最後の最後もコマ投げで勝負が決し、嫌な予感がして私はこのネタのことを恐る恐るチームの皆さんに確認してみると・・・。

 ガチ&ぷげ「え?そんなネタだったんすか!?」

 本当に申し訳ない。
 今後はどんなに 細かいネタもちゃんと全部共有しようと心に誓ったのでした。

14.格ゲー人生で一番悔しかった日

 見事リーグ戦を首位で勝ちぬいたG8Sは1月29日のグランドファイナルへ駒を進めました。プレーオフを勝ち抜いたのはmildom BeastとV6プラス FAV RhotoZ!の2チームです。
 このリーグで最も危険だと当初から目していた2チームの予想通りの勝ち上がりに、G8Sのメンバーにも緊張が走ります。
 
 そして迎えた本番当日、まずはmildom BeastとV6プラス FAV RhotoZ!の対戦がはじまります。
 7ポイント先取のグランドファイナルのルールで、6-6までもつれ込む大接戦。ウメハラ選手対ときど選手の最終決戦で見事ときど選手が勝ち、V6プラス FAV RhotoZ!が勝利しました。
 ある意味予想通りでもあったGood8Squad対V6プラス FAV RhotoZ!が実現しました。リーグ戦の1位対2位、まさに文句なしの頂上決戦です。
 
 彼らの対戦を手に汗握って見守る私たちスタッフ一同、2巡目を全勝で折り返し6-2とあと1点で優勝に大手をかけたこの時、見守る私たち、そしてもしかしたら戦う選手にも少しホッとした感情があったのかもしれません。

 そこからの出来事はみなさんご存じのとおりです。
 
 あまりに悔しい敗戦、涙を流すガチくんの姿をみて我々スタッフ一同は言葉一つ発することができずに10分ほど沈黙していたのを覚えています。
 
 この時私たちのSFL2021は終了しました。
 
 「勝たせてあげられなかった」というとあまりにおこがましいかもしれませんが、「私たちがいる意味」そして「その価値」を証明しきることができなかったような、そんな気持ちをずっと背負うことになりました。
 
 私たちの存在がいままで表に出ることがなかったのも、やはりこの日の敗戦のためと言っていいでしょう。

15.実はお話していた人がいたこと

 影の存在としてSFLをサポートしていた私たちでしたが、このことを話していた人が一人だけいます。それはみなさんもご存じであろう白水さんです。
 とあるイベントで偶然ご一緒させていただく機会があり、当時はリーグ戦の真っただ中ではあったものの、優勝するとSFLの世界戦が予定されていたこともあり、海外プレイヤーのIDなどの情報については間違いなく白水さんのご協力は必須になるだろうと思っていたのです。そしてこれまでFGCに長く貢献してこられた白水さんにだけはこのお話を耳に入れておきたいと思ったのです。

 そしてもう一つ白水さんに話しておきたい理由がありました。

  "こんな面白いことやってるのに誰にもしゃべれないなんてあまりにも酷だろ!"

 つまり王様の耳はロバの耳です。葦の近くの穴ではなく白水さんに僕は叫んだわけです。
 今までアナリストのことを皆さんにお話できなかったことが、ある意味僕にとって一番つらかったことかもしれませんね。

16.アナリストを終えてみて、いろいろ考えてみる

 というわけで私のアナリストとしての役目は終わりました。正確な期間でいうと2021年8月の頭から、2022年6月のトパンガチャンピオンシップ終わりまでの10か月間程でした。

 そしてSFL2022が見えてきたタイミング、ちょうどドラフトのあたりでしょうか、私も本業の方で異動があり多忙になったことに加え、ガチくんからも「今年は立川選手をスパーリングパートナー兼コーチに迎えての取り組みをしてみたい」という説明もあり、今年のアナリスト活動は断念する形となりました。
 
 非常に貴重な経験をさせてもらい、Good8Squadのオーナー様、スタッフの皆様、選手の皆様、得体のしれない人間の参加をOKしていただいたチームラプラスのオーナー様には感謝しかございません。ここまでプロの対戦に食い込んだパンピーはいまだかつていなかったでしょう。

 この経験は必ずいつか誰かの役に立つだろうと思い、今回このnoteを書かせてもらうことに至ったわけですが、それに合わせて格闘ゲームにおいてアナリストという存在が現実的なのかどうかの議論も避けられません。

 というわけで“リアル”な話をしていきましょう。

 今回私たち二人は先述の通り「報酬をもらう」ことを前提にアナリストとしての活動をスタートさせました。ただ事前に具体的な金額の話をしていたわけではありませんでした。
 
 というのも「すでに存在しているもの」であれば、値段はおおよそ見当つけることができますが、「これから生み出すもの」に値段をつける基準がなく、金額の目安が見えなかったからです。

 スタート地点では「一体どれだけのものをどれだけの時間かけて作るのか」というところから手探りで始まっているため、この活動にゴーサインを出してもらえた時点で感謝せねばならない事案でした。

 チームが未知数のものに対して大きな金銭を出せるわけもなく、最終的にはこの活動を理解してくれたことへの感謝もあり最低限の金額で落ち着くこととなったのですが、もしも同じことをもう一度やってほしいということになるならば最低でも200万ぐらいは欲しいですね。

 これは今のストリートファイターのプロシーンを鑑みてもこれだけの額は最低限欲しいと思えるほどの作業だったと思います。
 ですがストリートファイターリーグの優勝賞金は今年でも500万、この状況ではアナリストを200万で雇うというのはあまりに現実味がありません。最低でも賞金1億は超えないと出せない金額です。私ももちろんそれは理解しているので今回は落とし所を探したというところです。

 もし仮にストリートファイターのプロシーンがプロ野球と同等の収益が上がっていたとした場合、今回の稼働で私がチームに要求したであろう金額は1000万近い額になったと思います。これが高く思えるのかどうかは皆さんによって受け止め方は変わると思いますが、職人を半年間稼働させることを考えれば、それ相応の費用がかかるのは当然で、このデータの作成にかかる膨大な時間、その他戦略アナリストとして稼働する時間や労力といったものを勘案した場合、もはや一種の特殊技能と呼んで差し支えないものになっているのではないかと感じます。

 つまるところ結局何が言いたいかというと

 「まだ外部アナリストでマネタイズはできない」という事実です。
 
 チームスタッフに固定給でさせるということもあり得るでしょうが、やめてあげてください、とても割に合いません。そのスタッフが退職するだけです。

 そして夢見て無償でやるということもやめてください、絶対に途中でやめます。

 らーめん才遊記の芹沢達也の「金の介在しない仕事は絶対に無責任なものになる。」という言葉は至言であり本質です。

 格闘ゲームのアナリストは「誰でもできるのに誰もやらなかったこと」で、その事実がいかにこれが過酷なものなのかを示していると思います。

 そして今回「誰でもできるのに誰もやらなかったこと」をやり切れたことは私の誇りです。

17.さいごに

 ちなみに今後のアナリスト活動につきましてはまったくの未定です。
 スト6にタイトルが変わることもありますが、とても片手間でできることでもなく、稼げるものでもない以上、本気で取り組みようがないといった方がいいでしょう。
 やろうと思えばできないこともありませんが、業界が儲かってなさすぎるので、外部に金が出せない以上やる意味がない。
 
 そして今回この話をnoteにしようと思った理由としては

「他のチームはGood8Squadに2周置いていかれているぞ」ということです。

  彼らのあまりの強さに「グッパチはヒール」と表現する人間が非常に多かったですが、金も時間もかけて新しいことにチャレンジし、あれだけ真面目に取り組んでるチームが一番強い。これ以上に納得できることはあるのでしょうか?弱いチームに寄り添った表現してんじゃねえよふざけんな。
 
 今年からタイトルがスト6に変わり、よりSFLのレベルが上がることを夢見てここで筆を置くことにします。

 ご質問・お問い合わせなどがあれば答えられる範囲で答えます。
 ツイッターでリプなりDMなりでご連絡ください。

 ここまで読んでいただいた皆様、ありがとうございました。


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