【観覧注意】ネジはたべれますか?/この世界で俺だけがぴょんこではない
雪、雪が降っている。
白い六角形の結晶らしいが俺の目はそこまで見れん。
東京の冬も肌を刺すように寒い。
眼下には雪が乗った金髪の髪がちらほら見える。
……
室内に戻ろう。
俺は領火さんのおかげで世界を超えた。
これで俺はぴょんこと暮らすことができるようになりました。
ありがとうございます、領火さん。
室内には、ぴょんこの皮が張られたソファーやぴょんこの皮で出来た敷物があった。
これもそれもぴょんこの独占欲の発露した結果だ。
ぴょんこが発症したフェノメノンということですか?猿渡さん?
俺は詳しくないのでわからない。
目の前で起こっている現象が何故そうなのかわからない。
俺は頭のネジをどこかに落としてきたので、特に何も感じない。
だからそれでいい。
「夕食ができましたよー!ダーリン!」
ぴょんこが裸エプロンで出迎えてくれた。
自分の皮で作ったエプロンとかどうなんだよ?
あと裸で調理は衛生に悪そうだが、これが彼女のフェノメノンだとしたら特に問題ないだろう。
ぴょんこが出してきた料理はぴょんこの肉を焼いたものと米だった。
俺も彼女も肉にはライス派で良かった。
「もも肉だから柔らかいぴょん」
俺は解体され、血抜きのために吊るされているぴょんこを想像した。
それを解体するのもぴょんこなら、食べるのも九割九分ぴょんこだ。
この世界の生物は基本的に全てぴょんこになったからだ。
まあ俺にはどうでもいいことだ。
今、ぴょんこと暮らせるならどうでもいい。
「美味しいですか?」
ぴょんこのもも肉は、筋肉が程よくついていて牛肉のようであった。
ぴょんこの肉をぴょんこが食べる。
それをただこの世界の生物で唯一のぴょんこ以外の人間である俺が見ていた。
「俺、この世界の動物園がどうなっているか気になる」
「動物園デートですか?いいですよ、日程開けておきます」
ぴょんこだらけの世界でフレイメノウとして活躍するぴょんこ。
それを見る観客のぴょんこ。
面白い風景だ。
だが、この世界で俺だけがぴょんこではないのが少し寂しいかった。