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深く潜れ。狂人らしく。

Look back in anger —2024年を振り返る—
《THIRD VOICE》

Don’t Look Back in Anger

2024年がもうすぐ終わる。

月並みで格好悪いがはっきり言わせてもらう。
私は、2024年に生きた。ちゃんと生きた。
よくやったと思う。
人からすれば当たり前のことを当たり前にする生活だけれど、
私にとってはとても新鮮で不安でうっとおしいものだった。

朝決まった時間に起きてバイトへ行く。
やりたくもない、好きでもない、好きになりたくもない、これっきりにしてほしい、楽しくもない楽しくしようもない。
そんな作業を定期的こなすだけ。
すると不思議なことに私の銀行口座に月に一回お金が振り込まれる。
そのお金で電気代や車のローン、携帯代、サブスク代などを払ったり、
猫や自分のご飯を買ったりする。その残ったお金をプールしたり、必要なものを買ったりする。

こうやってざっくり文字にするとなんだか有意義に過ごしているように見えるが実情内情はまったく違う。
生活に余裕なんてなく、一般社会人とは遠く離れた生活なのだ。

私の夜ご飯はいつもスーパーで20円で買えるうどんかそばを茹でるだけのもの。味もないし具もない。それでもまだ食えるだけいい。“食べ物”というカテゴリーのものを店で買うことができて、それを電気代を使って使うIHヒーターで沸騰させた湯にぶち込む。
この一連がすでに私にとっては贅沢なのだ。
ここ半年ほど私は“焼いたもの”を食べていない。
フライパンやオーブン、グリルを使ったもの、油を使って炒めたものなどそういったものは食べていない。

肉は牛肉以外は食べた。体調がおかしくなったり、風邪をひいたりしたからだ。それでも焼いてはいない。豚肉と鶏肉を茹でて食べた。

そんなものでも私にとっては贅沢でしかない。

食以外も同じようなものだ。
いつ買ったかわからない黒いロンT数枚と黒いシャツ数枚をローテーションするだけ。靴はドンキで買ったブーツ、一度底が剥がれてしまったが接着剤でなんとかごまかしながら履いている。

髪はもともと長いのが良いので伸ばしてはいるがおしゃれ長髪ではなく、
ただの小汚く伸びきっているだけ。結っていると後ろ姿がおばさんに見えるし結わないままでいると闇堕ちしたローランドみたいだし、サングラスをかけると一世を風靡したゴーストライター問題の佐村河内にも見える。

そんな状態でバイトでもしなけりゃそれこそ死んでしまうようなギリギリの生活だ。その生活が約1年続いて思ったのは、もしかしたらこれはこれでいいのかもしれないということだった。

ギリギリの生活でも欲しいものは本と映画くらい。
生きてはいけるし、言いたくはないけど充実感まで感じている。
味も具もないうどんと、接着剤でくっついたチープなブーツ。
洗濯しすぎてよれてきた服。小汚い髪に混じった白髪が目立ってきてもそれはそれで良いという気がしてきた。

このままでいいじゃないか。
家に帰れば猫が待っている。猫と遊んでそのまま寝落ちして、
また決まった時間に起きてバイトへ行く。
このままでいいじゃないか。

いや、ほんとうにそうなのか?
このままでいいのか?

あのわさびがもたらした私の内なる深海から声が聞こえる。
ほんとうにこのままプカプカ浮かんでいるつもりか?
水面と並行に浮かんでいる私から見えるのは雲ひとつない青空。
清々しい海風を顔で捉えて、空の青の奥を見つめる。
空の奥の奥には広大な宇宙が広がっている。
そこから手を振っている人がいる。

気持ち悪い。

私は体ごと反転した。
見えるのは暗い暗い海の底。あ、いや実際に底が見えるわけではない。
底に通じるはずの深い青の通路が見える。
私はここを通るのだ。

頭の中に歌が流れる。

all the things that you’ve seen
Slowly fade away

おまえはよくやった。

So I start a revolution from my bed

ここからでもいいじゃないか。

But “Don’t look back in anger,” I heard you say…
Take me to the place where you go
Where nobody knows
If it’s night or day

真っ暗闇だけどおもしろいことがたくさんできる場所へ向かおうか。

I’m gonna start a revolution from my bed

“ Don't ”  Look Back in Anger.

深く潜ろう。もっと深く。誰にも見つからない底の底へ。

希望がないということは、決して絶望ではない。


※引用:Oasis /Don't Look Back In Anger


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