#感動ズッキーニ のつくり方
これまで何とも思っていなかったのに、ふとした瞬間の意外な一面。ギャップにときめき、踊る心。
今年の夏、ズッキーニに恋をしました。
--
夏野菜の定番であるズッキーニ。この季節になるとスーパーでは大量に見かけます。
ズッキーニはキュウリのような見た目ですが、キュウリ科ではなく、かぼちゃの一種とのこと。味わいはたんぱくなのでプラットフォームになる野菜です。
肉質はシャキではなく、もっと身が詰まっているような独特の食感。僕も昔、家でズッキーニが食卓に出たとき、きゅうりだと思って食べたら思わぬ食感で戸惑ったことを覚えています。正直、好んで食べるものではありませんでした。
ズッキーニが改めて美味しいなぁと思ったのは今年の5月ごろ。新しいレストランに入れるための煉瓦造りの薪焼き窯を見に、群馬に行きました。
そこでシェフが焼いたズッキーニに、塩とオリーブオイルをかけて食べます。そのジューシーさといったら、、とんでもなく驚きました。
ズッキーニの魅力を生かすには、程よい厚さのステーキに限ると今月のsioのコースでも提供しています。
こんがり焼いたズッキーニのステーキはボートです。たっぷりの食材を乗せて口の中を駆け巡ります。
茄子と同様、油との相性が良く、水分をしっかり持っているので、程よい厚さでステーキにするとジューシーに仕上がります。
シンプルに焼いたズッキーニの美味しさは、何よりもこのジューシーさ。
逃げることができる水分があるということは、つまり、、、そう #sioのイズム 伝家の宝刀『サウナ理論』が適用されます。
解放区となる水分があることで、多少のストレスは許されるのです。
むしろ、水分があるにもかかわらずジャストの塩味でアプローチしてしまうと物足らない皿に仕上がってしまいます。
つまり、塩味を少し尖らすことが重要です。しかし、やり過ぎは厳禁。この塩梅が難しいのです。何度も食べて、ズッキーニの水分量とのバランスを知る必要があります。厚さが違えば適正な塩味も変わります。
sioが出しているズッキーニのステーキは、熱々で出すわけではありません。
こんがりと焼いたズッキーニの上には、アボカドとブラータチーズ、アンチョビで出来たワカモレによってコク=旨味を追加しています。淡白なズッキーニを補完しているのです。
そこに、キウイの甘酸っぱさ、ハラペーニョの辛味、ウイキョウのサラダ、ハーブの香りを合わせて、5味+1を作り出しています。
5味+1とはsioが提唱する美味しさの方程式
1皿が甘味、酸味、苦味、旨味、塩味
+
辛味、香り、食感で絶妙なバランスで成り立つ
このズッキーニの一皿は極めて点で仕上げたレストランの料理なのです。
レストランの料理とは、味わい、温度、カット、シチュエーションなど、どこかを点で仕上げている料理だと思います。
だから、感動が生まれます。
今年のズッキーニの料理もそれに当たります。
僕以外にも、沢山の方に感動していただける料理となりました。
しかし、点で狙う料理ばかりだと疲れてしまいます。言ってしまうとすべて豪速球で、多用すると目が慣れてしまいます。
コース全体で驚きと感動を与えるには、前後の文脈が必要不可欠なのです。そんなことを考えながら、sioは10皿のフルコースを作っています。
少し話が逸れてしまいました。
さて、『焼いたズッキーニのステーキはジューシーさと淡白さがゆえに、プラットフォームになる。』というのが今回の結論です。
そして、この理論に則ったものは #感動ズッキーニ と呼びたいと思います。
ぜひ自宅でもステーキ→ボートスタイルを試していただきたいと思います。
理論に則って、上に乗せるものを考えてみると、簡易的に刻んだアンチョビと粉チーズ、マヨネーズでいいでしょう。もしかするとマヨネーズだけではなく、はちみつを入れて少し甘酸っぱくしてもいいかもしれません。刻んだナッツが入って食感のアクセントになっていれば楽しいでしょう。
どんな食材を乗り込ませて、#感動ズッキーニ という舟を走らせるのかは皆さんの気分次第です。
8月に入り、今年の夏も佳境を迎えます。
ズッキーニをもっと知ろうと調べてみました。
どうやら黄色い花が咲くようです。また、花言葉が出てきました。
『ほのかな恋』
ズッキーニを、たしかに好きになった夏でした。