美味しさの再現性
シェフの料理には再現性があります。
昨日、シェフが取材で『どうやってイズム(美味しい料理の作り方)を共有しているのですか?』質問されていました。僕も考えてみると、解像度の高さから生まれていると気付きました。
今回は美味しさの再現性をテーマに、そのために必要な解像度の高さをどう鍛えるか、について詳しく説明したいと思います。
調理技術と調味技術
体で覚える調理技術と、頭で創り上げる調味技術があると思います。
どちらの精度を上げるにも圧倒的な経験量は必要不可欠です。
調理技術にも3つあります。
一つは、洋食屋さんのオムライスのように、長年の経験値から生まれる技術。体に覚え込ませて料理を作るやり方。
もう一つは、計量、加熱時間、温度変化、など極めて定量的に調理するやり方。
最後の一つは、味のKPIを設定して、それに向かって逆算して調理を設計するやり方です。
最後の一つはシェフから学びました。例えば、美味しいパスタのゴールをどれだけ解像度高くイメージできているか。
例えば、オイルパスタ。
アルデンテが過ぎるとソースが乗らないため、弱めのアルデンテになります。
他には、トマトやクリームパスタ。
逆にソースがよく乗るため、アルデンテが弱いと野暮ったい印象に。ソースの濃度との対比が気持ちいいため、アルデンテは強めに。
パスタの話はこちらのYouTubeでも少し解説されています。
こういった自分の中での味の方程式をどれだけ持っているか、が良い料理人の一つの基準になると思います。
一流の定義
少し話が変わるのですが、僕なりの一流の定義をさせてください。
僕は、広告が好きで鹿児島大学では理系を専攻していたにもかかわらず、広告業界でキャリアをスタートしました。
そこで出会った本で、アイデアのつくり方という広告業界のバイブル本があります。
有名な一説で、アイデアについてこう定義されています。
アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない
さらに、こう書かれています。
既存の要素を新しい組み合わせに導く才能は、物事の関連性を見つけ出す才能に依存するところが大きい
この本を初めて読んだ時の衝撃は今でも忘れられません。
その後、色んな本を読んでみると、同じことが違う経験や違う角度から語られている本にいくつも出会いました。
三流は、何も学ばない人。
二流は、方程式を学び、自分で使える人。
一流は、方程式を自分で作れる人。
そう思います。
さて、話を美味しさの再現性に戻します。
僕はレストランでの修行経験は、sioしかありません。(しかも1年間ですが)
毎日、お客様やスタッフに繰り返される説明を聞きながら、これが当たり前だと思っていました。
しかし、味のKPIという考え方はどうやら特殊みたいです。入ってきたスタッフに聞いていくと、こういう料理の話は、これまであまりなかったと言います。
味のKPIがあれば、より早く美味しさの作り方を理解でき、実践できると思います。
超一流は、本質を見つけて、世の中に提案する人です。
アイデアであれば、あの本の著者ヤングであり、
料理であれば、シェフではないかと思います。
美味しさの再現性とは、味覚経験すべての言語化から始まる
シェフは何度も言います。
『口に入れるものすべてに全神経を集中させろ』
日常に落ちているヒントを見逃さなかった人、それを噛み砕いて言語化した人が、一流になるんだと思います。
美味しさを再現するのであれば、まずはどれだけ味の引き出しを持てているかが重要です。
まずはインプットし続けること。そして、自分なりの方程式を見つけられるまで掘り下げ続けること。その結果、その人はその道のプロフェッショナルとなり、一流と呼ばれるのです。