われわれのほん 4 Kaede Yamato 2024年7月5日 07:27 人は、何らかの理由から、疑問を感じているのに同意してしまう場合がある。つまり、暴力によって「あらゆる可能性を閉ざ」されているわけではないが、かといって自発的でもない、にもかかわらず同意してしまうことがありうる(ハラスメントにおいてはこうしたケースが問題になる)。中動態の世界 國分功一郎 医学書院 p159 加えて、戦争を否定した平和憲法のもとへ復帰するのだという期待が、基地をそのまま残した復帰という現実に裏切られ、そのことが日本に対する大きな落胆となった。そもそも、沖縄戦そのものが、本土の「国体」を守るための戦いだった。その戦争のなかで膨大な数の沖縄の人びとーー大半が非戦闘員の一般市民だーーが殺された。そのときに沖縄は本土に見捨てられ、犠牲になったのだが、基地を残したまま復帰することで、沖縄はもういちど見捨てられ、またもや犠牲になったのである。はじめての沖縄 岸政彦 新曜社 p65「復帰して良かった」を選ぶ回答が見えなくするものとは、「復帰」によって解決されるべきだった課題であり、その課題を抱えたまま生きる人々である。数値で語られる発展は平均の上昇を問い続け、一人ひとりが生きる上での困難をならして見えなくしてしまう。沖縄戦と米軍支配という人々の連続した経験の中にある困難を見落としてしまう。さらに社会構造のジェンダーバイアスによって、女性や子供たちが直面する複合的な困難は見えにくくなる。そうした視点が「復帰」報道には不可欠であり、それを意識することで「聞き取られなかった声」に巡り合う可能性は開かれていく。いま沖縄をどう語るか 謝花直美 高文研 p.102戦争を体験した祖父母や両親からでさえ、戦中の話を膝を突き合わせて聞いたことがあるという者は世代を問わずに、少なくなっているようだった。沖縄においても、戦争とは体験ではなく、座学によって知るものへと変わりつつあるのだ。沖縄戦と民間人収容所 七尾和晃 原書房 p5沖縄の住民にとっての「捕虜」生活が、米軍にとっての「保護」という強い信義と建前を孕んでいたことは、しかし今に至るまで、律子をはじめとする収容所生活の体験者たちにとっては意識されていない。それは、半世紀を超えてなお続く、沖縄における米軍駐留の在り方の、微かにして、だが決して噛み合わぬ悲劇の芽ばえであったのかもしれなかった。米軍が「Civilian Camp」と呼んだ民間人収容所について、海軍の作戦記録書を繙けば、そこには再三再四にわたら、民間人の心理的、肉体的な配慮についての指示と報告がなされている。収容所内への米兵の立ち入りは原則として禁止され、そこには早期に住民による自治の体裁を確立しようとする米兵側の努力と、そして時には焦りの痕跡さえ見られた。沖縄戦と民間人収容所 七尾和晃 原書房 p10沖縄戦の悲劇は、十・十空襲以前の学童疎開船「対馬丸」の米軍潜水攻撃による遭難に始まり、米軍の慶良間諸島上陸時における住民の集団自決事件で本格化した。日本軍の方針によるこの事件は、肉親どうしによって互いに殺し合う惨劇を生んだ。日米両軍の戦闘の激化と日本軍司令部が住民避難地域の南部へ撤退して持久戦を展開するなかで,①日本軍の住民スパイ視虐殺事件、②食糧強奪、③避難民を壕・墓から砲煙弾雨のなかへ追い出していった事例、④陣地漏洩の名目で乳幼児の毒殺・絞殺・刺殺、⑤母親が日本兵に殺されるよりはと、愛児を締殺した事例、⑥住民同士間におけるスパイ視虐殺事件などの諸相が顕現していった。沖縄の県民像 沖縄地域科学研究所編 ひるぎ社 p199-200植物園の受動的な運動は風変わりなものばかりだが、なかでも、オランダフウロの種子が見せる運動ほど興味深いものはないだろう。オランダフウロの種子は破裂し、母たる植物から分離する。その後、通りかかった動物の毛皮にくっついて運ばれ、地面に落ちるとゆっくり動きはじめ、土壌に裂け目を見つけてその穴に入り込む。この一連の流れは、じつに驚異的といっていい。内部エネルギーをそなえた器官でさえ実行するのが難しい運動で、ましてや"死んだ組織"にとっては、想像すらできないほど複雑なものだからだ。植物は<未来>を知っている ステファノ・マンクーゾ 久保耕司訳 NHK出版 p111すべての植物がそうだが、オランダフウロも自分の種子をできるだけ広範囲に撒き散らす必要がある。そのために母たる植物は、自分のそばに子どもたち全員を置いておこうなどとはしない。逆に、あらゆる戦略を講じて、子どもたちを遠くに追いやろうとする。こうした戦略や進化論的に重要で、多くの正当な理由がある。最大の理由は、子どもたちが互いに競い合わないですむようにすることだ。植物は<未来>を知っている ステファノ・マンクーゾ 久保耕司訳 NHK出版 p116動物が周囲の環境の変化に"運動"によって対応し、変化を避けるのに対して、植物は絶え間なく変化する状況に対し"適応"によって対応する。植物は<未来>を知っている ステファノ・マンクーゾ 久保耕司訳 NHK出版 p165植物は<未来>を知っている ステファノ・マンクーゾ 久保耕司訳 NHK出版 p180-181歩くのが好きなのは、道端に咲く花の名前がわかるからなのかもしれません。昔と今ではアスファルトの割れ目に咲く花もずいぶん変わってきました。今増えているのはセダムとクラピア。案外多いのがスミレ。大橋鎭子さんが教えてくれた「ていねいな暮らし」洋泉社編 洋泉社p140薩摩は琉球を「附庸(ふよう)」という曖昧な形で実効支配することで琉球ルートでの中国交易の実利を確保する思惑を有していた。西国の雄藩(ゆうはん)として薩摩が討幕のエネルギーを蓄積した背景には、「薩摩口」といわれる琉球経由の中国貿易回廊の確保があった。琉球での黒砂糖の栽培を促して砂糖貿易を独占、抜け荷(密貿易)にさえ関与しながら力を蓄積した薩摩のしたたかさにおどろかされる。人はなぜ戦争をするのか 寺島実郎 岩波書店 p194もっとも、たいていの僕の記憶は日付を持たない。僕の記憶力はひどく不確かである。それはあまりにも不確かなので、ときどきその不確かさによってぼくは誰かに向かって何かを証明しているんじゃかいかという気がすることさえある。しかしそれが一体何を証明しているかということになると、僕にはまるでわからない。だいたい不確かさが証明していることを正確に把握するなんて、不可能なんじゃないだろうか?中国行きのスロウ・ボート 村上春樹 中央公論新社 p13人間の脳はわずか1.5kg前後にすぎない。人はなぜ戦争をするのか 寺島実郎 岩波書店 p85普通のサラリーマン家計が毎月実際に使える所得、つまり給料から税金や年金・社会保険などを納めた後の手元に残るお金を「勤労者世帯可処分所得」という。人はなぜ戦争をするのか 寺島実郎 岩波書店 p252・私たちは法的規範ー法律コード-の世界に暮らしており、それが生活のあらゆる側面を導いている。・日常生活で、私たちには規則の断片しか見えない。銃乱射事件が新たに発生するたび、対人殺傷用銃器、銃の連射装置、銃購入のための身元確認には、異なる銃規制法が関わっていることを学ぶ。バーニー・マドフが首謀者となった大規模なポンジ・スキームが発覚したあとには、詐欺に関するルールや証券規制について学んだ。アメリカのオピオイド中毒を巡る訴訟でパーデュー・ファーマとジョンソン&ジョンソンが歴史的な和解に応じたあとには、不法行為法と製造物責任について学んだ。人を動かすルールを作る 行動法学の冒険 ベンヤミン・ファン・ロイ&アダム・ファイン 小坂恵理訳 みすず書房 p4違反が確認される場所には、違反行為を禁じるポスターを貼るのが正しい対策だと直感的に考えたくなる。しかしまずは、こうした場所から違反行為を一掃しなければならない。さもないと、ポスターを見た人はルールが破られていることしか連想しない。実際のところ、ポスターはルールの効果を弱めてしまう。こんなルールがあるのかとポスターを見て思い出しても、みんながルールを破っている場面を目撃したらどうか。そうか、ルール違反は社会規範で守られていると勘違いするだけでなく、当局は違反行為に無関心だと考える可能性さえある。法律が常に堂々と破られる環境では、法律の重要性を強調したところで、かえって法律の力や法律の執行能力を弱めるだけでなく、もっと広範な法体系の合法性まで損いかねない。 要するに行動を改善させるときには、社会規範についての伝え方がきわめて重要である。社会規範について効果的に伝えるためには、どんなオーディエンスや行動が関わり、どんな社会規範が影響し、それがどんな社会的意味を持っているのか理解する必要がある。いったんそれを理解したら、訴える内容を強調したメッセージを作成し、犯罪予備軍を違法行為から遠ざけることができる。しかも、ネガティブな社会規範が誘発され、法律の機能が損なわれる心配もない。人を動かすルールを作る 行動法学の冒険 ベンヤミン・ファン・ロイ&アダム・ファイン 小坂恵理訳 みすず書房 p155私たちの生活は大量の法律によって支配されている。自分が結んだ契約のすべてについて考えてほしい。どれも私たちの権利や義務を事細かく記している。こうした契約の小さな活字をじっくり慎重に読む人はほとんどいないし。しかも、いまでは契約書をスマホで読む機会が多く、活字はさらに小さくなっている。最後までスクロールして「同意する」(時には「キャンセルする」)ボタンを押すが、契約の中身を十分に理解しているわけではない。たとえ時間をかけて契約上のルールを読んだとしても、理解できずに苦労するし、ましてや覚えてなどいられない。人を動かすルールを作る 行動法学の冒険 ベンヤミン・ファン・ロイ&アダム・ファイン 小坂恵理訳 みすず書房 p163人を動かすルールを作る 行動法学の冒険 ベンヤミン・ファン・ロイ&アダム・ファイン 小坂恵理訳 みすず書房 p250.251.252.253.254淋しいことに気づかないように深夜まで働いている人が集まるような店に身を潜めてそんな処世術ばかり身についていくのかないつかティファニーで朝食を マキチヒロ 新潮社 31話 ダウンロード copy 4 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート