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6.誕生時のカルマ(個人差あり)
昨日から脈々と続く血の話。
注射で気になるもの、ひとつはズバリ針の太さでしょう。中でも太さを実感するのは献血の時なんじゃないでしょうか。
献血の針は見るからに太いです。ふっとい。ほぼ爪楊枝です。入れる前からの心理的恐怖もなかなかなもので、入った後も格別です。異物感が…。
ただ、安心してください。実際の痛みは採血の時とさしてかわりません。痛いものは痛い。100か109くらいの差です。え?安心できない?
私が初めて献血したのは高2くらいの時でした。
母と兄と家族3人、スーパーにて買い物を済ませた後、駐車場に出てみると献血カーが来ていたのです。募集しているのはA型とB型でした。我々男兄弟2人は特になにも思わず、たらたら車へもどっていたのですが、母は医療従事者という事もあり何か思うところがあったようです。
「スーパーの駐車場にまで来てB型を募るのはよっぽど血が足りてないからかもしれない。あんたたち、行ってきな」
んん、確かに当方現役の男子高校生。生き血ならエリザベート夫人も渋々許容範囲レベルかもしれません。しかし人には心の準備というものがあります。嫌です。
「嫌です。」
と兄。
さすが兄。以心伝心のみならず私の軽々上をいく素早い否定です。
というのもこの素早さには理由がありまして、単純に兄は注射が嫌いなのです。結構嫌いなのです。きっと日頃から献血を断るイメトレでもしているのでしょう。
しかし、そんな兄の生みの親、我らが母親はそんな事では引き下がりません。イメトレしているのでしょうか。
ひとしきり押し問答を繰り広げた後、兄が負けたのでしょう、撤退しました。物理的にです。そうです、相手の主張がどうであれ、物理的に距離をとれば実現は叶いません。なんという搦手でしょう。感服です。
母が肩をすくめた後、ゆっくりと振り返ります。
「俺は弟だぞ!」
「血を抜く」という迫りくる狂気の運命と、進行形で迫っている母のプレシャーにより半ば(?)正気を失いつつも、かろうじて精一杯の反抗を口にします。
意訳:長男が拒否するならば次男の俺にも拒否する権利があるはずだ。何かと優遇されるのが長男ならば、冷遇されるのは次男ならば…。
「いいから行きな。」
一蹴。
「お母さんは献血できないんだから。輸血歴あるからね。」
そうなんです。当時は知らなかったのですが、輸血歴があると献血できない規定になっています。
はて?ありがたい事に、私が物心ついてから母は事故や大病したことはないはずです。いつ輸血したのでしょう。
「あんたを産んだ時に血が止まらなくなって輸血したのさ!」
さすが母。以心伝心というか心の中を読んできます。
物心以前の話ですので記憶にないのも当然です。というか当時は人間初日です。
これには私も天を仰ぐことしかできません。曇りでした。
「でもお母さんだって鬼じゃない、献血した後にハイチュウ買ってあげるよ」
小さい頃から私が注射をすることになると、頑張ったらからと母はよくお菓子をひとつ買ってくれました。
しかし私も高校生ハイチュウにつられる玉ではありません。
「メントスがいい」
こうしてハイチュウより歯ごたえがあるという事で中学くらいからお気に入りのメントスを確約してもらい、無事に初献血に一歩踏み出す事となりました。
皆さんも人間初日のカルマにはお気をつけください。