海外・オーストラリアのSaaS事情[前半]~Sazae溝尻さんインタビュー~
オーストラリア発のITコンサルティングファームSazaeのCEO溝尻さんに、オーストラリアのSaaS事情についてお聞きしました。日本との違いは歴然です。
SaaSを使っていない会社はない!
オーストラリアのSaaSの普及率は、日本よりも圧倒的に進んでいます。
SaaSに対する理解が深いですね。
日本はまだSaaSの話をすると「オンプレミス」にこだわるケースもあるじゃないですか。
オーストラリアではオンプレミスなんてほとんど存在しないですよ。
確かに大手の銀行さんとかデータベースを国内に置かなきゃいけない場合などはありますけど、
日本の大手企業さんにSaaSの話をするとまず
「そのSaaS、オンプレミスあるの?」
みたいなところからスタートするじゃないですか。
それって日本のSaaS状況が遅くなっている原因で、
まだSaaSの理解が遅い証拠だと思うんです。
オーストラリアではそんな会話はほぼ聞かないですね。
DXはすでに終了
それから、デジタルトランスフォーメーション(DX)というキーワードはほぼ聞かないですね、DXはもう終わってるから聞かなくなっていると思っています。
今どき自社プロダクトとか、すごく独自のシステム以外でスクラッチ開発でシステムをつくってる会社はごくわずかで、SaaSを使っていない会社はそうそういないです。
日本だとシステムを開発するときに「孫請け」みたいな形があるじゃないですか。もしかしたらその仕組みもSaaS利用を妨げているのかもしれません。SaaSではそういった形では管理できないですから。
紙なんてもうないですよ。
ファックスはもう見たこともないです。
プリンターは多少ありますけど、ほとんど使うことがないです。
オーストラリアは英語圏なので世界各地から英語のSaaSサービスがすぐ入ってくるっていうのも大きいと思います。SaaSの種類が圧倒的に多いですね。その分、コンペティションも激しいんですけど。
たとえばCRM(Customer Relationship Management:顧客管理システム)の選択肢は、日本では限られているけれど、オーストラリアではもっと選択肢が多いです。
オーストラリアは
時給が高いのと、
人がすぐ転職するので、
SaaSなどのソリューションにより前向きに取り組まないと
ビジネスが回らないケースが多いと思います。
スクラッチ開発は、スピード感を持って対応できないのであまりないですよ。ごくわずかにあるんですけど、それもまたコンペティションがむちゃくちゃ激しくて。だいたい開発はインドとか中国とかに外注したり、オフシェアに自分の会社をつくったりするパターンも多いです。
各社のITマネージャはITコンサル並みの知識あり
オーストラリアでエンタープライズの場合は、バックオフィス系のシステムを導入するときに、自分たちで導入することもありますけど、アクセンチュアのような大手ITコンサルファームにお願いする会社も多いです。
オーストラリアの事業会社の
ITマネージャの人たちって、ITコンサルタント的なんです。
ITの知識と、経営的な知識もあるから、設計もしっかりしています。
技術的なことは表面上しか知らなくても、きちんとプロジェクトを組み立てて、ITロードマップをつくって、その上で外注しているので、
日本のようにSIer頼みにならないことが多いと思います。
SaaSの導入に関してはSaaSベンダーが持っているパートナーを連れてデリバリーしていることもありますね。
日本の経営層にたりないのはITリテラシーとIT投資という視点
日本の経営層は、オーストラリアと比べるとITリテラシーが低いと思います(ごめんなさいね)。
経営者のIT知識とITをビジネスに直結させるセンス
がまだ低いと思います。
基本的にシステム開発・ITをSIerに丸投げなんじゃないかなと思います。
ITはコストセンターではなく、
ITを投資と認識して、
積極的にIT投資をして差別化を計るべきだと思います。
なのに、日本ではSIerさんに丸投げして、
SIerさんは、エンジニア系上がりの人が多く、クライアントに良かれと思って、クライアントが欲しいと思うものを業務整理などもあまりせず、そのままスクラッチで作っている状況になっていると思います。
でもビジネスも業務も日々変わるので、
スクラッチ開発だとそこがIT負債として、ビジネスの錘(おもり)になっていることが多々見受けられます。
オーストラリアだと、
ITコンサルタントみたいな人がITマネージャをしてる場合が多いため
システム開発を長期目線で投資として見ているので、
業務整理をしてから、SaaSを導入する場合が多いです。
後半に続く――