トイレをかぶったら世界がかわった
シーンと静まり返った部屋の中
背広を着たお堅い男性、数名をまえに
「わたしは、ひどい尿モレになり、こころまで病んでいました」
トイレをかぶる人生は、背広を着た男性を前にプレゼンの「尿モレ宣言」からはじまりました。
トイレをかぶったら世界が変わった人ってどんな人?
いえいえ、そんなことはなくどこにでもいる平凡な主婦です。
4人の子を持つ、ふつうの。
40歳の転機
40歳を目の前に「よし!!40歳になったらなにをしようかな!! 」
ウキウキ、ワクワク過ごしていたころ
ん……生理が来ない……
気持ち悪い……
嘔吐下痢症かなぁ……
なんて考えていた2008年のはじめ、わたしは妊娠
「ハァーーーーー!? まさか!!! 」
頭を後ろから鈍器でどつかれたような衝撃を受けました!
11年前の29歳のとき、助産師さんに言われた「4人目は、もう産まない方がいいよ」という言葉が頭の中を駆け巡りました。
29歳で3人目を出産後、子宮を支えている靭帯がのびて膣の外にさがってくる「子宮脱」になったのです。
「4人目もう産まない方がいいよ」は、そのときのアドバイスです。
40年目のどん底
お腹の赤ちゃんは、すくすくと育ち自然分娩で無事に高齢出産
40歳、骨盤底筋にダメージを与えることとなりました。
骨盤底筋のダメージ
それは、尿のコントロールがうまくできなくなる恐ろしいダメージです。
最近テレビCMで目にすることが多くなり、尿モレと言えば「ちょいモレ」と思っているあなた!!
とんでもない、超・絶・ひどい尿モレです。
トイレに行きたいと感じて歩き出したその一歩の振動でモレる。
一歩・二歩・三歩
ジャ・ジャ・ジョー
止めようと思っても止まらない
手洗いで水をさわったり、足元が冷えたりすると急にトイレに行きたくなりトイレ直前でモレることもしばしば
尿のコントロールが完全にうまくいかなくなりました。
尿モレするーーー
はずかしい!
誰にもバレたくない!
自信喪失!!!!!
自己肯定感が低いわたしの、わずかに残っていた「自己肯定感」は、すべて消え去りました。
気持ちも、からだも、どよ~ん
40歳の悪あがき
ヤバいと考え抜き「どうにかせねば」
わたしは、思いついたのです。
「前もってトイレに行く作戦」を
トイレに行きたくなってトイレに行くからモレるので
モレないように前もってトイレに行けば大丈夫なはず。
結果、大失敗。
トイレの回数は爆のびし、日中だけで20回以上行くことに。
そうです、頻尿になってしまったのです。
夜間の回数も多く4~5回トイレに起きることに。
「熟睡」という言葉もわたしから消えました。
尿意コントロール機能を失ったわたしは
トイレから離れることが恐怖
家から出て、モレたらどうしようの心配
このまま、尿モレする人生になるのか不安
相談するところもわからない
治してくれるところもわからない
「ぎょえぇーーーーーー! 」
24時間、頭の中はトイレ一色
人として尿がモレることは、超絶情けない……
心はズタズタ
肯定感ゼロ
心を病みました……。
チャンス到来
ある日、テレビから「尿モレには、骨盤底筋トレーニングがいいです」という言葉が聞こえてきました。
ん??なに?なに?
太ももの間にペットボトルを挟んで骨盤底筋を鍛える方法を紹介していました。
さっそく、一緒に実践
「おおおおーーなんだか、デリケートゾーンあたりに力が入るぞ」
「骨盤底筋って、ここなんだ」
『骨盤底筋トレーニング』というものがあることを知った瞬間でした。
そこからわたしの骨盤底筋トレーニング検索は、はじまります。
おしりの穴を締める方法
→毎日100回1セット×いっぱい 隙間時間にやる 寝るまえにやる 1日500回位は、締めてたな
骨盤底筋スクワット
→足をがに股にして呼吸と合わせてスクワット
→腹圧がかかるからモレるのよね
腹筋も大事
→膝を立てて頭を持ち上げる→これこそ超腹圧がかかるので漏らすためにやっているのって感じだった
やりました。毎日、毎日、毎日
5年たってもジャンプ、走ることはNG。
腹圧によるモレは、消えず。
「もう終わりなのか、わたし…」
尿モレを治す手術しか残された道はないのかと、絶望感に押しつぶされそうになっていました。
再出発
「いや待て、最後にもう少しやってみよう」
そこから今まで取り組んできたことを一旦手放し、専門書で調べたり、骨盤底筋について調べたり独学を開始しました。
尿モレする自分の身体を実験台にこうしたら、ここに力が入る、ここへは、どうしたら力が入る?
試行錯誤の連続
やっと、グワァッと力が入る感覚をつかみ
締めて引き上げる感覚をとうとうつかむことができました。
「ヤッタァーーーー! 」
そう、尿道括約筋を締められるようになったのです。
毎日、寝るまえと朝起きたときに3回ずつ丁寧にトレーニングを開始
骨盤底筋を鍛えられるようになりました。
尿道括約筋にアプローチできるようになったので
独学で調べた「排尿筋反射」で
なんと、膀胱コントロールを習得
トイレをがまんする練習から、日中8回以内の正常値に戻すことに成功。
「やりました!やりました! 」
病院、薬に頼らず尿モレを克服することができたのです。
6年かかりましたが(長かった、よくやった自分)セルフケア方法で完全に克服することができました。
ちょっと駆け出しても
ちょっと飛び上がっても
トイレの前に立っても
もうモレなくなりました。
「最高~!!! 」
「大丈夫」だと強い確信が生まれ、頭の中にずっとあった「トイレ」の呪縛がほどけました。
トイレをかぶる
2015年9月28日 尿モレサポートの活動を立ち上げ、トイレをかぶりました。
そう、背広を着たお堅い男性、数名をまえにして
「わたしは、ひどい尿モレになり、こころまで病んでいました」
と尿モレ宣言した、あのプレゼンです。
6年間、地道にコツコツさまざまな種類の尿トラブルと向き合い
尿トラブルの深い、暗い闇を経験。
試行錯誤のために独学で調べる中、みえてきたもの
世の中には、みんな口には出さないけど
同じ思いをしている人
これからするかもしれない人
諦めている人がいる。
その人たちの顔がみえました。
突き動かされる思いがどんどんわたしの中にあふれてきて止められなくなり
「自分の実体験で世の中を変えよう! 」
今、思えば「アホ」なんじゃないかと赤面するくらい大きな野望を抱いたのです。
広島県の起業支援に即、申し込み
誰にもバレないように尿モレを隠していたわたしが公の場で尿モレについて熱くプレゼンしました。
「なにやってんだ」って正直思いましたが走り出しました。
「尿モレしていました」って発信しながら
とうとう、トイレをかぶったのです。
きっと、誰にもマネできないんじゃないかな
トイレをかぶって自分の尿モレ体験談を声高に発信しているアホ活動は。
尿トラブルは、からだが元気でも頭から不安、心配が離れず
24時間を、120%楽しむことはできません。
尿トラブルをそのままにしていて治ることはありません。
尿トラブルのあらわれ方は、モレるだけではありません。
尿モレを気にして活動範囲が狭くなると、これからの長い人生においていいことなんかなにもない。
2015年、ふつうの主婦が自分の尿モレ経験から「尿モレのケアは大切です」と声を上げて、はじめは誰も見向きもしてくれませんでした。
少しずつ、少しずつ地道な努力を積み重ねて現在は、地域の高齢者にむけてセミナーでお伝えするまでになりました。
「先生」って呼ばれています(照)。
尿モレ、尿トラブルのことがよく理解できて「ありがとうございます」と言われることが増えました。
尿トラブルが良くなった方も。
トイレをかぶったらわたしの世界がかわりました。
幸せいっぱいな100歳になるには「良い排尿ができ、自分でトイレに行けることだ」と実体験から強く思うのです。
「トイレをかぶって、同じ思いをする人をなくすこと」
わたしの天職です。
トイレをかぶってわたしの世界は、大きくかわりました。
そして、これからも。
最後まで読んでくださったあなたと一緒に、幸せいっぱいな100歳になりたいです。