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献血にご協力ください。

人生初の献血で起きた話である。

ある日、暇すぎて京都駅の辺りを彷徨っていた。
すると、献血のバスが停まっていて、その前でお姉さんが、「献血してー」と、通行人に呼びかけていた。普段のボクなら、自発性が全くないのでスルー。

しかし、その時は違った。お姉さん、まぁまぁ可愛い。とてもちょっとだけ、深キョンぽい。どっかのおじさん曰く、ボクは「田舎から出て来た感」のある娘が好きらしいので、さしずめ深キョン田舎verであろうか。

ボクは歩きながら、カントリー深キョンに気付かれるまでガン見。
凝視しつつ、ぼんやり歩いてると、深キョンに気付かれてしまった。
目があうと深キョンは、「お兄さん、お若いですよね!献血していきませんかっ!?」と言ってきた。

深キョンからすれば、普通の献血のお願いなんだが(言い方に難あり)、
その一言を聞いた瞬間、ボクはフリーズした。

猫騙しを食らったボクは「えっ。あっ。はいっ。えっ。」と答えて、アホなのがバレた。そして言われるがまま、深キョンにバスへと連れていかれる。

『あのバスMM号なんじゃね?』と思ったりもしたが、当然そんなことは一切なく、問診&献血の説明開始。

問診票には、献血の量を200mlか400mlかを自分で決める項目があった。もちろん初めてなので、200mlにチェックを入れたのだが、深キョンに「若い男性ですから、400mlいきましょう!!!」と言われる。

おいっ!深キョン。あんた、まぁまぁ可愛いからって、血を抜く量を勝手に決めてんじゃねえよ。とちょっと思ったけど、可愛い娘の頼みだ。400mlくらい好きに抜いてくれ!と、覚悟を決める。
そして、MM号もとい、献血バスのベッドに横たわる。その側で、深キョンが色々と準備している。

すると深キョンが、「針が刺さるとき結構、ショッキングかもしれませんので、目を閉じておいた方がいいかもしれませんよ。」と言う。

何とも思ってないボクは「いや、注射は苦手じゃないんで大丈夫ですよ。」
「えっ…。でも、針もかなり太くて…。」
「いやいや、全然、問題ありませんよ。ははは。」なんて余裕ぶった男を演出。こんな押し問答の後、深キョンが、「分かりました。では、注射していきますね。」と言う。

いよいよである…。

すると深キョンが隠し持っていた、注射針を見せてきた。よく見てみると、注射針がかなり太い。普通の注射の比ではない。超太い。ちょっと待って。今からボクはコレを刺されるのか…。瞬時にボクの脳は死を覚悟し、見せ場のない走馬灯が再生される。やはり専門の人の話は聞き入れるべきだった…。

針をぶっ刺された痛みと血を抜かれて、虚無っているボク。
あれよあれよと言う間に、400mlを回収し終わり、血抜き終了。
献血後にもらえる、お菓子とジュースを異常に食うボク。引く献血関係者たち。

すると、突然深キョンに呼び出される。
「驚かないで聞いてくださいね…。問診票にA型と書いていただいたのですが、実はO型だったんです。」
読んで字の如くである。Aだと思い、20年生きてきたが、Oだったのだ。

とても申し訳なさそうにする深キョン。憂いの表情も可愛い。「あの…。A/Aの両親からも、Oが生まれることも全然ありえますので…。気にしないでください。」と、フォローを入れる深キョン。だが、ボクは何にも感じなかった。別に今更、血液型が違うからといって何ら変わらない。
「そうですか!逆に気にしないでください!全然気にしてませんから!」と爽やかな笑顔で深キョンに告げ、彼女の不安を払拭し、ボクはMM献血車を後にした。

ただ、オカンが言うてた「お前は鴨川の橋の下で拾ってきた」発言の信憑性が少し上がった。

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