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保育士が子どものケンカを止めようとして労災になった話



これは私が幼児クラスだったころ。

子どものケンカの仲裁をしていたとき、一人の子が勢い余って私の小指を思い切り押してしまった。

その場はなんとかしのぎ、争いは収まったのだが、痛みは止まらない。

それどころか、ますます熱を持ち赤みがましてきた気がした。

これは保育に支障が出る。

そう思った私は、主任に事情を話し、早退して通院することにした。

園の近くの整形外科に行く。

症状は突き指で全治二週間。痛み止めを飲み、安静にしていれば治るとのことだった。

そして、会計の時。

ふと、気になったことを尋ねてみた。

「そういえば、この怪我は保育中に起こったものなんですけど、これって労災になるのですか?」

とたんに、受付の人の表情が困惑したものになる。

「少々お待ちください」

何やら、裏で色々と話しあっているようであった。

五分ほどその場で待っていたと思う。労災という言葉は知っていた。だが、主任をはじめ、誰からもそのようなことは言われていなかった。

「おまたせしました。おそらく労災になるかと思います。職場で労災の書類を書いていただき、後日持ってきていただく形になると思います。」

そう言われ、お金を払わずに病院を後にする。

これは、労災になるのかどうか。

次の日、園に戻って、事務の先生にきいてみる。

すると、あっさりと。

「あ、それは労災になるね。書類を書いてもらっていい?」

と言われ、その結果労災になった。

私は、二つのことで驚いていた。

まず、保育中の怪我は労災になるということ。

他の職場で働いていれば、当たり前かもしれない。

だが、突き指という軽いけがでも労災になるとは思いもしなかった。

保育中の怪我は労災になる。このことを意識している保育士は、意外と少ないのではないか。

そして、もう一つは、誰もそのことを教えてくれなかったこと。

保育中に怪我をして、受診をするということは、主任、リーダーをはじめ、多くの先輩保育士が知っていた。

にもかかわらず、労災になるということを教えてくれなかった。

先輩方を責めたい訳ではない。

単純にいい忘れたのかもしれないし、労災の経験がなかったのかもしれない。

労災か労災ではないかで、例えば受診料を自分で払うかそうでないかが変わってくる。

今回の場合でいえば、5000円くらい自分で払うか払わないかが変わってくるのだ。

これだけでも、労災にするということは大きいことなのではないかと思う。

そして、自分が先輩や主任になった時、それを後輩に伝える必要があるのではないかと思う。

この文章を見ている人の中にも、保育中に怪我をして、労災であると知らずに自腹で受診料を払っている人がいるのではないかと思う。

そうならないためにも、保育中の怪我は労災にするべきであると思う。

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