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子どもの気持ちを整理する


ある日の夕方の保育でのこと。
私はAくんと一緒にお母さんを部屋で待っていた。
Aくんはお部屋でブロックをして遊んでいたあと、「かくれておかあさんをまつ!」話して、お部屋で隠れてお母さんを待っていた。
そして、お母さん来る。ちょっと急いでいた様子のお母さん。私はつい、隠れていたAくんに対して、「お母さんきたよ」といってしまった。
とたんに顔が曇るAくん。「なんでいっちゃったの! Aくんが隠れているってわかるでしょ!」
泣き出すAくん。
「ごめん、隠れてるって言っちゃだめだったね。じゃあもう一回やる? 違う場所からやる?」
Aくんにあれこれ提案してみるけど、納得しない。
「だっておかあさんがもうわかってるじゃん! それじゃあいみがないじゃん!」
「じゃあ明日やる?」
「やだ! またかくれたい!」
「そしたら、もう一回隠れてみる?」
「やだ! だっておかあさんがもうわかってるじゃん!」
堂々巡りが続きながら、どんどんヒートアップしていく。
私が途方にくれていたとき、先輩保育士のB先生が助け舟を出してくれた。
「Aくん、やだやだ言ってても先生たち困る! Aくんの話、おんなじことばっか言ってて、Aくんが楽しいことできる時間、どんどん少なくなっちゃうよ!」
B先生は続ける。
「じゃあAくんはどうしたらいいと思う。まず最初は?」
「……おかあさんにもういっかいきてもらう」
「おーけー。じゃあお母さんにもう一回来てもらおう。その次は?」
「……おかあさんにわすれてもらう」
「わかった。じゃあお母さんに来て忘れてもらおう。そしたら?」
「……Aくんがかくれる」
「よし、じゃあお母さんに来てもらって、忘れてもらって、Aくんが隠れる。いいね?」
うなずくAくん。
Aくんはお母さんを呼ぶ。
「おかあさん、わすれて」
と話して、Aくんが隠れる。お母さんが見つける。
見つけられたAくんは満足そうに帰っていった。
B先生は話す。
「Aくんはちょっと気持ちがごちゃごちゃになっていたね。そういうときは、保育者が気持ちを整理してあげることが大事かな」
気持ちの整理。
子どもの気持ちをどうやって受け止めるのかを考えていた私。
でも、それ以前にAくんの気持ちがこんがらがっていたのだ。
そのことを理解して、援助していたB先生。
保育士としての専門性を感じた。
また一つ、子どもとの関わり方を学んだ気がした。

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