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移民にとって子どもの大学受験とは

先日、地元アメリカの高校主催で、「大学受験 SATとACTの違い」をテーマに説明会があったので参加してみました。

SAT/ACTは、日本のセンター試験に相当すると言ってもいいかもしれません。ただ、日本の場合、年に一回の一発勝負なのに対して、SAT/ACTは年に何回も受験日があり、何度受験しても構いません。そして受験生は、一番高いスコアを、受験先の大学に提出することができるのです。

アメリカの大学を受験する場合、現在では、ほとんどの大学がSATとACTのどちらの試験結果も受け入れるので、どちらを選択して提出するかは、受験生次第だと言われました。ただ、大きな違いは、SATが英語と数学なのに対して、ACTは、英語と数学に加え、科学もあることです。とは言え、グラフやデータを読み解いたり、科学分野の読解だったりするので、理系志望の受験生でなくても対応できるそうです。

かつてSATとACTでは、試験内容が大きく異なったそうです。SATの方が、より多くの語彙力が問われ、一般には使われない英単語も出題されたそうですが、現在ではそういうこともなくなり、二つの試験の違いはあまりなく、受験生の好みで選択すればよいと、アドバイスを受けました。

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この説明会に参加したのは、長男長女を持つ父兄か、かつアメリカで教育を受けたことがない移民系の父兄がほとんどのように見受けられました。説明会の帰り道、旧社会主義国出身で、母国で医学大学院を卒業後、アメリカに移住したという知り合いと一緒になりましたが、彼女は「アメリカの大学受験はさっぱりわからない!」と、パニックになっていました。

「私の生まれ育った母国とちがい、アメリカにはたくさんの大学と選択肢がある。それは素晴らしいことだけれど、自由に選んでよいと言われると、どうしていいかわからなくなる。娘に、どうアドバイスしたらいいの?」

私の場合、アメリカの大学受験のテクニックについて知らなくても、大学受験というものがどういうものか、なんとなく想像もつきます。しかし、彼女の場合、在米生活歴が10年を超え、アメリカの医療研究所に勤務していても、アメリカの教育を受けたことがないため、娘の大学受験に向けて、何からどうやって情報を集めたらいいのかわからないようでした。

おそらく彼女と私は同年代なので、高校か大学生の頃に東西冷戦が終結し、政治経済、そして文化的な価値観が根底から覆されたのだと思います。だからと言って、教育がすぐに変わるとは到底思えません。暗記して覚えた学習内容は忘れてしまいますが、学校教育を通じて体で覚えた考え方の習性や、立ち振る舞い、物事の価値判断などは、固定観念として定着し、大人になっても、とっさの時に出てきてしまうものだからです。

小手先のテクニカルなアメリカの大学受験について学ぶことは簡単かもしれません。でも、旧社会主義国から移住してきた彼女にとって、「自由と選択」が一番難しいことなのかもしれないと、その時、実感しました。

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