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『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』消えゆく街、しかしその魂はフィルムに焼き付く。
誰にでも幼少期に過ごした思い出の場所というものはあるわけで、その場所が消えてなくなることほど寂しいものはない。私がかつて通っていた小学校と中学校も今はない。校舎は建て替えられ名前が変わっていたり、丸々巨大な街の地区センターになっていたり、当時の面影はもはや記憶の中にしかない。この『トワイライト・ウォリアーズ〜』もそんな消えゆく街の映画である。
かつて香港にあった「九龍城砦」が舞台の本作。そこには鮮魚店や理髪店、定食屋、病院、裏ビデオショップもあり、人々の生活の全てが違法建築の砦の中に雑多に詰め込まれている。その狭く暗い建物の中で縦横無尽に繰り広げられるアクションがやはり本作の一番の見どころで、子供の頃観た往年の香港映画を彷彿とさせるアクロバティックな動きとそれを全て捉えるダイナミックなカメラワークに唸る。一度は真似したい「硬直!」など漫画的な楽しさもあり、あくまでファンタジーではあるが、それが映画の楽しさに直結していて気持ちが良い。
しかし何と言っても本作の主人公はやはり「九龍城砦」そのもの。主人公・陳洛軍(チャン・ロッグワン)の目を通して、住民たちの生活や人情が丁寧に描写される。気づけばアクションではなく、キャラクターたちの想いや表情、仕草、敬意、その一つ一つに魅了されている。
昨今、再開発と謳って取り壊される建物や街も多い。やがて消えると分かっていても、その街を守るための戦いには誰もが胸が熱くなる。派手なアクションの裏側には果てしない哀愁と郷愁の念が滲んでいるが、街は消えても、映画が記憶を繋いでくれるだろう。
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