落ち込んだ彼が笑うまでの話

この間、オットーさんが、久しぶりにメンタルダウンして帰ってきた。原因は仕事であることは間違いないと瞬時に悟る。

コミュニケーションが苦手な彼は環境が変わるとお腹が緩くなり、もう辞めたいと虚無な目をして帰ってくることがある。

しっかり働いてほしい。まじで。自分で選んだ道やろがい!と思うがそんなことは言えないのでまるで部下への面談かのようによく話を聞く。昨日は久しぶりに落ち込んで帰ってきたので「お、きたね」という感じで対応した。キートン山田がここにいたら「もう慣れたもんである」とナレーションを入れてくれたに違いない。

いやもうこんな感じで帰ってくる。プシュウ…と音が聞こえてくるよう…

だいたい彼の悩みは対人関係なんだけど、今回もやはり、対人関係だった。どっかの記事で日本の職場の人間関係は本当に悪いというのを見たことあるがそれはそうですよね、と言う感じ。私にも彼の職場にも人間がいればいるほど、コミュニケーションミスは生まれる。

ほんで悩みというのは、最近職場の人とコミュニケーションがとれず(時間によって会えなかったり、会えたり)モヤモヤしてる中で、職場の人に何かのダブルチェックを頼んだら、頼んだ相手がたまたまイライラしてからなのか、いきなり「調子いいな」と嫌味を言われたらしい。なぜそんな言葉を言われたか分からず困惑と怒りと悲しみを持ち帰ってきたのだと言う。俺はいらないんだ、いる必要がないから辞めたいとまでいう。おーっと意外にもK.O直前。でもわかるよ、なぜなら私も今仕事でメンタルダウンしてるからさ。しかしまぁ、パートナーがダウンしてると落ち込んでる場合じゃねぇぞてやんでぇ!みたいな感じになるから夫婦って持ちず持たれずってやつですな。

さて、極限まで落ち込んでる時は、話が止まらなくなるので相槌を打ちながらシャワーを促す。
脱衣所でもその話をしているが、(脱衣所とキッチンが隣なのでよく聞こえる)眠たい目を擦ってご飯を用意する。(私は先に食べた)

味噌汁を温め、買った刺身をだし、サラダをもりつける。そして虚無オブ虚無な顔でシャワーから出てきた彼を座らせ落ち込んだ雰囲気を払拭するかのようにテンション高めで「刺身よ!刺身!カツオねー!」と説明する。うんうん、と聞いた彼はまた落ち込んだ話をし始めるので私もうんうんと聞く。

私も最近仕事で落ち込んでたからな…そんな時話を黙って聞いてくれたもんなと思い黙って聞いていたが若干長いその話に終わりを見たくて「そんなこというやつはレベルが低いしそのレベルに合わせて家で嫌な気持ちで刺身食べるなんてやだよね!」とあくまで刺身を思いながらコメントをいれた。

君が遅く帰ってきたから私はその刺身を食べなかったのである。2人で分ければちょうどいいなと思って買ったがあまりにもお腹が空いてささみを食べてしまったので遠慮した。

だからカツオの刺身食べたいと言う気持ちはあったのでまぁカツオ寄りの励ましになるのはしかたがない。

「そうだよなぁ…なんだかバカらしくなってきた」と彼がいう。おっ!?ここまでくればなんとか安全圏に入れたと言える。
よしよしこのままこのまま。私に先見力、つまり先を見通す力があったのか、なんと今日は気まぐれにビアードパパのシュークリームを買ってきてある。私も会社の面談で新宿まで行き大変だったので帰りに買ってきたのだ。
これはいい武器があったと、最後畳み掛けるように「シュークリームあるけど、そんなこと考えながら食べると美味しくないよねぇ」というと「そうだね」とうなづいてくれた。よしよしよし!これは意外と早く済んだぞと思い勝利を確信した。

が、しかし…「でも俺悪くないよね?」とネガティブな感情がここで立ち上がってくる。意外としぶとい、が、当たり前だ。人はネガティブな感情からは逃げられない
、逃げようとすると追いかけてくる。これは私自身、今一番体感していることだ。

でも、と、だって、は言い訳だと新入社員の頃言われたな…と妙に懐かしくなった。でも言ったていいじゃない、人間だもの、と思う。だから、全て肯定する。君は悪くない、大丈夫だ、そんな人たちに引っ張られてビアードパパのシュークリームも泣いてるぞ、と繰り返す。同じことを繰り返す。ああ、この時間でなければ、私もシュークリーム食べたかった。でもいいんだ、きみが美味しく食べてくれるなら。そう笑顔で食べてくれるなら。

一通り話してスッキリしたのか、黙々と片付け始め、アーモンドミルクでラテを入れ始めた。あれ?彼は意外と気持ちがもうシュークリームに向かってる…?と気持ちの変化を読み取ろうとするが表情は曇ったまま。

しかし、シュークリームを見るや否や「パァァ…」と顔が変わっていく。キートン山田がいたらきっと「単純である」とナレーションを入れたに違いない。いやいやいや、単純かもしれないけどここに至るまで努力があるんですよ!トレーナーの私の!やー!丹下のじーさんもびっくりなぐらいね!ジョー!立つんだジョー!って感じでね!?

気がつけば彼は隣に座って「おいしい、おいしい」と笑顔でシュークリームを食べていた。22時、帰宅から1時間半。気分を取り戻した彼を見て私も安堵した。よかった、明日から夏休みで実家に帰る私としては、落ち込んだ君を残してはいけないのだよ、本当に良かった、と心の中で繰り返した。

そうして彼は、シュークリームを食べて最近クレーンゲームで取ったハンギョドンのぬいぐるみを膝に抱えて「ハンギョドンの絵描き歌をみよう」とYouTubeを流そうとする。好きなものに囲まれると人間ご機嫌になるもんなと嬉しく思う。
まぁ、私もあなたという好きな人といるからご機嫌だよなと思う。今度も落ち込んで帰ってきても全然問題ないから、私が鰹の刺身とシュークリームを食べれる時間に帰ってきてねと思う。難しいだろうけど。
そんなことの繰り返しで2人で歳をとっていくんだなと、ハンギョドンの歌を聴きながら思った。

ん?まって?ハンギョドンの声…と彼の顔を見ると嬉しそうに目を輝かせていた。そうしてたいそう嬉しそうに笑い、「フリーザーじゃん!フリーザー様だ!」と声を上げ喜んだ。私はスネ夫だと思ってたけどフリーザー様らしい。あ、目の横に皺を作って笑ってら。

その瞬間、その表情で、私は今宵の戦いが終わったことを確信した。「殿、敵が退いていきます…!」と報告を受けたような気持ち。
そうして私は感謝をする。「この戦いは、よもや我が軍だけの力ではない」と脳内家臣に伝えるのだ。

ありがとう、カツオの刺身
ありがとう、シュークリーム
ありがとう、ハンギョドン(フリーザー)
そして全ての優しさに、、、ありがとう

まぁ、繰り返し繰り返しだよね。
2人でいるってことはいいことも悪いことも楽しめるから、まぁいいかと思い、ハンギョドンの歌を口ずさんだ、そんなある日の夜だった。うーん、夫婦って楽しい!

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