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薬剤師国家試験104回208|抗血小板2剤併用療法
問題
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初めに
104回208-209では労作時の胸部圧迫感に対してDAPT(抗血小板薬二剤併用療法)中の患者がPCI(経皮冠動脈インターベンション)を受ける際の注意点について出題されている問題です。術前の抗血小板薬ということで休薬期間を考えたいところですが少し落とし穴があります・・・
選択肢の概要
抗血小板薬の中止は血栓形成のリスクをたかめるので不適切
(① 誤り)継続でプラスグレルふくようしているのでローディングドーズの必要なし
(② 正解)PCI後のステント血栓症を防ぐ為にアスピリンとプラスグレルの服用は継続する。(③ 正解 ) (④,⑤ 誤り)
抗血小板薬の基礎についてはこちらを!
詳細解説
選択肢3が正解で45は不適切
患者背景
65歳男性
S:労作時呼吸困難
O:左冠動脈前下肢に75%狭窄 アスピリン100mg クロピドグレル3.75mg 朝食後以前から服用
A:抗血小板薬2剤以前から服用しているので現状血小板の活性は低いものと考える。
P:PCIによる血栓形成を防ぐためにこのまま継続。
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ステント留置した場合、ステント周辺に血小板が凝集しステント血栓症を引き起こす事がある。
→ステント血栓症を防ぐ為にもPCI施行後もDAPT(抗血小板薬2剤併用療法)を継続する必要がある。
2012年のACC/AHAおよび2018年のESC/EACTSのガ
イドラインでは,ステント留置後のステント血栓症予防の
ため,出血リスクの低い安定冠動脈疾患患者にはアスピリ
ンに加えて少なくとも6ヵ月間のクロピドグレル併用を,
出血リスクの高い安定冠動脈疾患患者に対しては1~3ヵ
月のクロピドグレル併用を推奨している
ガイドラインより、PCI後はアスピリン+クロピドグレルの使用が推奨されています。
問題文はクロピドグレルではなくプラスグレルですが同様に考えてしまって大丈夫でしょう。薬物動態学的な性質が少し異なるだけです。
効果に影響を及ぼす因子の1つとして、代謝経路が考えられる。クロピドグレルの活性化には薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)2C19が主に関与するが、日本人のCYP2C19には遺伝子多型が認められており、一部の患者ではクロピドグレルの効果が十分に発揮されない可能性が指摘されている。
一方、プラスグレルの活性化にはカルボキシルエステラーゼやCYP3A、CYP2B6などの代謝酵素が主に関与している。これらには日本人の遺伝子多型が知られていないため、理論的にはプラスグレルの方が効果に個人差が少ないと考えられている。
選択肢のうち、③が正解である事が分かります。また同時に④はアスピリンが中止されているので不適切、⑤はプラスグレルが中止されているので不適切である事がお分かりいただけるかと思います。
選択肢1-2について
PCI前の抗血小板薬の使用法について問われている問題です。
一般的にチエノピリジン系の抗血小板薬は効果が出て来るまでに時間がかかる薬剤であると言われています。
この為、PCI後のステント血栓症を防ぐ為には以下のいずれかの対応が必要になります。
初回に高容量投与を行う(ローディングドーズ)
クロピドグレル:
投与初日に300mgの投与を行いその後維持量として1日1回75mg
プラスグレル:
投与初日に20mgを投与しその後維持量として1日1回3.75mgPCI施行前の一定日数以上前から服用を始める
クロピドグレル:
1日75mgを4日間投与しているのであればローディングドーズは必須ではない。
プラスグレル:
1日3.75mgを5日間投与しているのであればローディングドーズは必須ではない。
上記を踏まえて選択肢を見てみましょう。
選択肢1では、「両持参薬共に内服する必要ない」と言っていてこれではプラスグレルの服用をしないままPCIを受ける事になります。よって不適切です。
選択肢2ではローディングドーズの必要性の有無について問われています。この方は以前からプラスグレルを継続して服用している事が処方から分かります。よってローディングドーズは必須ではありません。
よって「術前増量」は必要なく、選択肢としては正しいです。
設問209の化学についてはこちらを!
調べておきたいキーワード
生物
心臓 冠動脈 血小板 心筋収縮機構 cAMP cGMP
化学
衛生
虚血性心疾患の年次推移
→心血管疾患の死亡率は統計ルールの変更によって少し特徴的な死亡率推移を示しています。