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[組織ブログ Ver.35] インテグラル理論を用いて「なぜ組織は分かり合えないのか?」をポテンシャライトなりに紐解いていきます

「若手の退職が増えています。何が原因でしょうか?」

この質問をいただいたときに、皆さまであればどのような回答をしますでしょうか?

「若手のメンバーと1on1で本音を引き出せていないのではないか?」
「会社のカルチャーは構築されているのか?一体感がないのではないか?」
「若手のメンバーの能力に不足感があり、仕事についていけてないのではないか?」
「会社の戦略や戦術が不明瞭であるが故に、若手メンバーも戸惑っているのではないか?」

例えば、このような回答が考えられるのかもしれません。

冒頭に記載をした「質問」の質問に対して、おそらく本ブログの読者さまたちの「回答」の角度は異なるはずです。では、なぜ異なるのかをインテグラル理論を用いて説明していきたいと思います。




0. インテグラル理論とは

インテグラル理論とは
アメリカの現代思想家ケン・ウイルバーによって提唱された統合的・包括的なメタ理論(思想)であり、人間・組織・社会・世界を統合的、包括的にとらえるためのフレームワーク、地図であるといわれています。

オーセンティックワークスさんより

Webで検索をするとこのような説明にたどり着きます。こちらをご覧いただいて正確に理解することは難しいかと思います。
僕なりに解釈をしながら説明していきたいと思います。

0-1. インテグラル理論の5つの要素

インテグラルとは「統合的」という意味であり、自然科学・社会科学・人文学といったあらゆる学問を統合し、包括的に考察しようという試みから生また理論です。

ポイントとしては、 あらゆる学問を統合している点です。後述するのですが、組織においてあらゆるタイプの専門家が在籍していると思います。例えば、「戦略」「人事」「財務」「営業」など、各役割が異なると思います。役割が異なるあらゆる 職種の方が混在する組織において、「誰が偉い」と言う議論がなされた場合、どうしても「議論力」が強いメンバーの意見が反映される傾向にあります。これはどの組織でも起こり得ていることなのではないでしょうか?

インテグラル理論の面白いところは、これらのあらゆる学問を「統合」していることです。つまり、あらゆる「価値観」を正当に表現していて、どの理論にも寄り添っていると言うことになります。そんな中、インテグラル理論は5つの要素を提示しています。

象限  レベル  ライン  ステート  タイプ

この5つの要素が存在しているのですが、本ブログでは、「象限」に該当する内容を説明していきたいと思います。

0-2. 象限とは?

象限とは?
私たちが物事を捉えるときの視点のこと

インテグラル理論を学ぶきっかけになったのは、個人の内面に観点が強いメンバーとの出会いでした。社内においてあらゆる課題が存在している中で、その「原因」をメンバーの内面に設定することが非常に多かったのです。例えば、

◆パターン①
仕事に集中できていない
⇒自分自身で言いたいことが発信できていないのでは?

メンバーが肩を落として歩いていた
⇒自分自身が自社にいる意義を見出せていないのではないか?

この2つの事例を見ると、一見 筋が通ってるように見えます。ただ、下記のような捉え方もできます。

◆パターン②
仕事に集中できていない
⇒自分自身の能力/スキルが目の前の仕事に通用しないことに悶々としてしまっている。

メンバーが肩を落として歩いていた
⇒先程の仕事で十分な準備をしておらず、お客様に論破されてしまった。

いかがでしたでしょうか?前段で記載した内容と後段で記載した内容について、もちろん真実はわかりませんが、筋は通ってるように見えますよね。どちらが正解でどちらが不正解か分かりません。もう一つ事例を見ましょう。

◆パターン③
仕事に集中できていない
⇒会社の方針/方向性がぼんやりしており、個人(社員)が何を目指して仕事をすればいいかわからない。

メンバーが肩を落として歩いていた
⇒自社の事は好きなのだが、自社の商材が他社の商材よりも劣ってしまっていることを理解しており、悶々としている。

いかがでしたでしょうか?これも発生していそうですよね?僕も自分自身で文章を書いていて違和感は無いです。最後にもう一つだけ事例を見てみましょう。

◆パターン④
仕事に集中できていない
⇒会社のバリュー/カルチャーは存在しているのだが、体現できてる人がいない。自分がどのように振る舞えば良いかの軸があまりない。

メンバーが肩を落として歩いていた
⇒会社のカルチャーは存在するのだが、そのカルチャーに対して否定的な意見を言う人がいた。残念な気持ちになった。

なんとなく本ブログの文脈から僕がお伝えしたいことを推測された方もいらっしゃるかもしれません。

4つのパターンを説明いたしましたが、下記をご覧いただければと思います。


組織の価値観は4つの視点で作られる

前項で記載いたしましたが、インテグラル理論は5つの要素で成り立っています。あくまで本ブログはその要素の1つである「象限」についてスポットを当てます。ここで「象限」とは、

「私たちが物事を捉えるための視点のこと」

です。
先ほど2つの事象(あえて問題と表現しましょう)をご紹介しました。その問題に対してどのような「視点」で捉えるのか?を4パターン記載しています。

まず、皆さまに問いたいのは、この4パターンのうち、皆さまの視点はどこに偏っておりますでしょうか?もちろん詳細な背景がわからないまま記載をしているので、判断はしにくいかと思うのですが、皆さまのこれまでの原体験や人間的なタイプによってこの4パターンのうちのいずれかに、少しは興味/関心が高く、偏ってしまっている可能性があります。

僕個人的な話をしましょう。
僕は、割と個人の「能力」に興味/関心がある類です。そのため、メンバーの能力/スキルを上げることによって、あらゆる仕事における痛みを癒すことができると考えていた、あえて過去形で書くのですが、そんな類です。

ただ、前述した4象限の図をご覧いただくとわかるのですが、右側はいわゆる「外面」についての話です。「外面」に話が寄りすぎてしまうと、個人の「内面」がないがしろにされる傾向にあります。一方で、個人の「内面」に話が寄りすぎてしまう、外面がおろそかになってしまい、会社/個人の成長が合理的になされない、そんな関係性があると個人的には捉えています。


1. なぜ組織が分かり合えないのか?

突然、壮大な問いを記載してみました。

直近1年間で組織論についての学びを増やしたのですが、組織論は本当に深いと感じています。組織論はいわゆる「人事」の領域に内包されることが多いですが、「採用」と「組織」は使う筋肉が違いすぎて、戸惑っているのは事実です。言うなれば、茶道とダンスくらい異なるのでは?と感じています。

仮に採用スキルをダンスのスキルとしましょう。組織論のスキルを茶道のスキルとしましょう。今の日本の人事関連におけるキャリアアップは下記のようなイメージです。

「よし、ダンスの能力は取得してきたので、茶道に移るぞ!ダンスのスキルを確実に生かせるはずだ!」

皆さま、違和感を覚えますでしょうか?僕は覚えます。なぜ、ここまでギャップが発生するのか?本件については別のブログに記載しておりますので、詳しくは下記のブログをご覧いただければと思います。

話を戻します。なぜ、本項の冒頭にこのような話をしたかと言うと、インテグラル理論を「人事組織」に活用していくことができると確信しているからです。1つだけ補足をしておくと、インテグラル理論はものすごく深い学問です。そのため、僕はまだインテグラル理論に触れて間もないため、本ブログの内容について、個人的な解釈が多分に含まれていることをご理解ください。あくまで、僕がこれまでの人生経験や人事組織を学んだ内容と掛け算をしながら、自分の解釈を入れて説明をしています。これまで10年ほど会社の経営(取締役/代表取締役)の経験をしつつ、マネージメントの経験もそこそこ積んできたつもりです。その視点でインテグラル理論を個人的に記載をしている事はご認識いただければと思います。

そんな中で、本項のタイトルに

「なぜ組織が分かり合えないのか?」

と言う問いを記載しました。

その1つの原因が、インテグラル理論を学ぶと、明瞭になってきたと思うのです。

1-1. 若手の離職が続いている、と言う問題について

おそらく設立5年以上が経過しているベンチャー企業において、若手やミドルのレイヤーのメンバーの離職がゼロであると言う企業は存在しないのではないか?と思っています。
最近、お話をするベンチャー企業さまは、「定着率」に苦悩をされていらっしゃる企業さまばかりであると思っています。

話を戻すと、「離職」と言う問題は、社員の「役職」問わず関心があるテーマなのではないでしょうか?一方で、会社の「戦略」は経営が決めることでしょう。会社の「人事制度」は人事が決めることでしょう。「営業戦術」は営業マネージャーが決めることでしょう。と言う認識をお持ちの方もいらっしゃるのかもしれません。何を申し上げたいかと言うと、「離職」のような、原因が明らかに特定をしにくい事象において、かつ役職問わず、自分自身が関わるかもしれない問題において、人によって観点が大きく異なります。

では、皆さま、自問自答してみてください。

「自社において若手の離職が続いています。何が原因なのでしょうか?」

と言う質問が発生した場合、皆さまはどのような回答をしますでしょうか?

「若手のメンバーと1on1で本音を引き出せていないのではないか?」
「会社のカルチャーは構築されているのか?一体感がないのではないか?」
「若手のメンバーの能力に不足感があり、仕事についていけてないのではないか?」
「会社の戦略や戦術が不明瞭であるが故に、若手メンバーも戸惑っているのではないか?」

本ブログの冒頭にこんなことを記載しました。
この4つであれば、皆さまどれがイメージと近いですか?

この4つのどの回答に皆さまの意見が近しいかによって、インテグラル理論における4つの象限のうち、どの視点に偏っているかを1つの材料として理解することができます。

こんな会話が起こり得るとしましょう。

Aさん
「若手の退職が続いているのは、若手の本音を引き出していないからなのではないか?」

Bさん
「いや、本音を言える状態ではないと思います。そういった雰囲気ではないので、本音があっても心に留めておくのではないでしょうか?」

Cさん
「マネージャーの視点からすると、メンバーが約束を守らないことに腹が立っていて、叱咤をすることがあります。叱咤をしなければ良好な関係が築けるかもしれませんが、お客さまに迷惑をかけたくないので、社会人の最低限のスキルを身に付けてほしいです。だから厳しく接しているのです。それで本音が言い出せないと言うのは少し違うのではないでしょうか?」

Dさん
「皆さんの言っていることはわかるのですが、個人的な意見を言うと、会社の経営が戦略/戦術を明瞭に発信しないので、各メンバーがどちらの方向を見て仕事をすれば良いか悩んでる気がしています。また、自社の商材が市場に少しマッチしていない気がしていて、売り上げが伸び悩んでいる。もし売り上げが伸びたら、今の問題が全て癒えるのではないかと、個人的には思っているのですが。」

いかがでしたでしょうか?
本件についてこの4名が発言してる事は、おそらくすべて的を得ている可能性があります。そして、全員が思っていることを発言している良い事例だと思います。ただ、この会話は収束するのでしょうか?すごく優秀なファシリテーターが存在していた場合、「優先順位」をつけて話を収束させることができるかもしれませんが、その難易度は非常に高いと言えるかもしれません。

少し話を歪曲させると、
この事例において「対話」の文化がなければ、「最高権力者の鶴の一声」で全てが決まる可能性があります。例えば、絶対的な力を持っている取締役がいたとしましょう。その場合に、

取締役「そうですね、Cさんが言ってることが正しいと思いましたので、これからは個人の育成について強める方針でいきましょう」

こんな発言をするとします。
その場合、Cさん以外は「取締役が言っているから、それで良いか」と自分の意見に蓋をして、一定の納得感を持ちながらも、少しモヤモヤ感を残して進むことになります。

これは世に存在する企業さまの全てにおいて起こり得ていることなのかもしれません。ただ、これらをうまく「わかり合う」ためには何をすれば良いのでしょうか?個人的に考えてみました。

1-2. まずインテグラル理論の4象限を理解することなのではないか?

個人的にこの4つの象限と出会ったときに衝撃を受けました。なんとなく個人的にも頭の中で感じていたことを、ここまで図にして表現していること自体に感銘を受けたのです。

この 4つの象限を知ることによって、自分自身がどの象限に視点が偏っているのかを知ることができます。それを知ることによって、抽象度が高い問題が発生した場合、

「あ、自分と異なる象限の視点を持っている人がいるのだ」
「どの象限の視点を持っているのか、どれが正解かというわけではなくあらゆる視点があるのだ」

これをメンバーが理解しておくだけでも、「わかり合う」という側面においては強化できるのではないでしょうか?

昨日のミーティングでこんなことがありました。
当社では労務担当のメンバーと1週間30分をかけてミーティングをするようにしています。いわゆる「労務観点」で会社を主観的に捉えたときに、どのような問題が発生しているのか?をノートとしてもらい、僕個人的な意見を言う、そんな場を設定しています。

「労務」は、各メンバーの労務観点における相談を受けることがあります。そのため個人の「内面」における相談が多いように思います。これは大いに結構です。むしろ発見があることも多く、勉強になっています。そんな中で、労務のメンバーがインテグラル理論についての知見があるとしましょう。その場合、個人の内面に観点が偏らずに、「もしかしたら違う象限につながっているのではないか?」と予想することができます。

僕個人的にはインテグラル理論の一般的な知見を得たため、その労務ミーティングでは別の象限の話もするようにしていますが、メンバーにとっては、

「あ、自分にはない視点だぞ」

という気づきを創出できているのかもしれません。

一方で、合理的なタイプのマネージャーと話をする場合については、「外面の集団」についての話が多いです。これも必然的に発生しています。外面の集団とは何かと言うと、会社や事業部の戦略/戦術、商品/サービスの展開の仕方、会社の構造についてなどです。これらは非常に重要です。ただ、何かの問題を解決するために、これらにアプローチをしているのであれば、外面の集団のみでのアプローチでは問題は解決しません。
その場合に、内面の個人や内面の集団についての話をするようにしているのですが、

「はっ…、自分にはない視点だぞ」

という顔をしてもらうことが多いです。
ただ、別の象限の話を僕がすることによって、無意識的に拒絶をしてしまうメンバーもいます。なぜならば、その象限の視点でしか物事を捉えることができないメンバーも存在しているからです。これは僕の中では「育成対象」に入ります。

どういうことかと言うと、人間の「成長」と言う抽象度の高いテーマにおいて、大体の人は「専門スキル」が、すなわち社会人としての成長と捉えていることが多いです。「専門スキル」とは何かと言うと、例えば、

営業力
プログラミング力
プロジェクトマネージメント力
決算を処理するスキル
採用実務力(採用戦略立案力)

これらのイメージです。これらのスキルを得ることができれば「成長」実感を持てる方は多いのではないでしょうか?これについては全く否定的ではなく、むしろそうあるべきだと思っています。
一方で、これらの一定の成長がなされたメンバーが、「自分自身が正解である」と無意識的に思ってしまう傾向があると思っています。僕も長い期間このタイプであったと自覚しています。その場合、このインテグラル理論の「象限」についても偏りがあることが多くなります。自分が無意識的に偏っている視点に強いこだわりを見せてしまい、別の象限に視点が寄っているメンバーの話を聞くことができなくなります。少し話が拡散するので、この辺にしておきますが、ここで非常に重要なのは「自己内省力」です。自己内省力については、個人的には役職と比例しないと思っています。本ブログでは詳細な説明は割愛いたしますが、別の「象限」の視点を持つことによってさらなる成長がある、もしくは人間的な器が大きくなることを体感してもらうために、僕自身はメンバーと接してるつもりです。


2. 4つの象限の職種別の特徴

僕がインテグラル理論を学んだときに、こんな表現をしていただいてる方がいました。僕の解釈も含めて下記いたします。

組織の価値観は4つの視点で作られる

「個人」「内面」視点の方は「個人コーチング」「カウンセラー」タイプの方
「集団」「内面」視点の方は「組織コンサルタント」タイプの方
「個人」「外面」視点の方は「能力主義のマネージャー」タイプの方
「集団」「外面」視点の方は「経営コンサルタント」タイプの方

これを聞いたときに、本当に目から鱗でした。

「〇〇さんは、組織に新しい風を吹かせてくれる」と言う表現をすることがありますが、ただ新しい風を「吹かせてくれる方」もいますし、「組織に完全に馴染む方」も存在しています。これはなぜ起きるかと言うと、組織全体にもインテグラル理論の4つの象限における「片寄り」が存在しています。特に新卒文化が強い企業は、インテグラル理論における単一の傾向が非常に強いと感じています。そのため、突然、中途入社が増えることによって、別の「象限」の意見が多くなることにより、その意見を「批判」と捉えてしまった故に、意識的にその方の意見を敬遠し、逆Uの旅路に入ってしまいます。

※逆Uとは何かを詳しく知りたい方は、上記ブログの「4」をご覧ください。面白いと思います。

話を戻しますと、少子高齢化により採用活動が難航している中で、新卒入社だけではなく、中途入社/中途採用が増えてきています。そんな中で求人と求職者のパワーバランスが、少子高齢化によって「求職者」に偏りつつある昨今の世の中において、「個人の意見を尊重する」と言うような風潮も強く出始めています。

ただ、「わかり合えない」と言うケースは今後も多数発生することが予想され、

「自分はこの組織に合わない」
「自分はこのカルチャーに合わない」

などの意見が出やすい風潮がある中で、インテグラル理論の4つの象限を知ることの重要性を少しでもご理解いただけたのではないか?と感じています。

ちなみに、この4つの象限を理解していたとしても、自分の象限「以外」の人の意見を、人間は無意識的に「批判」してしまう傾向にあります。


最後に

皆さんいかがでしたでしょうか。
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