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同窓会LINEグループの変貌。すみっこの人は頑張っていないのか?【現役高校教員のエッセイ】
高校生に向けたエッセイです。実際に、教室に掲示しています。
日本の多くの高校生は高校を卒業すると同時に「同窓会」というものに自動的に入会することになる。
同窓会と聞くと、年に一度くらいのペースで居酒屋に集まって同級生と飲み交わす会というイメージが浮かぶが、いわゆるOB・OG全体のことを同窓会と呼ぶらしい。
だから、みんなもいずれ、この高校の同窓会にもれなく全員入会することになる。もちろん、僕自身も高校を卒業しているので、母校の同窓会には自動的に入会している。
その母校がいよいよ80周年を迎えるらしく、「80周年を祝う会」というものが催されることとなった。
この企画は「同窓会」を中心に準備が進められるらしく、「『80周年を祝う会』を考える会」という安直なネーミングのLINEグループが発足し、どういった経緯かは不明だが、僕もそのメンバーに入れられてしまった。
このLINEグループは各年代の卒業生約200人程度で構成されており、年代も性別もさまざま。まさに老若男女。
80年の歴史を体現しているかのようであった。
そんなグループで行われる会話は、ほとんどが会議日程の相談とその会議内容の報告で、まぁ申し訳ないけど僕には関係ないことだと思った。
そして、通知の数字?を消すためだけに会話を開いてチラッと見ていた。
すると、ある日こんな通知が。
「同期の○○君が個展を開くそうです。ぜひ皆さんも見に行ってみてはいかがでしょうか?」
とコメント。
そして、その個展のインスタ?のリンクが送られてきた。
このコメント以降、
「同期の○○ちゃんのお店です。」
「同期の〇〇さんが書いた本です。」
と同期の紹介が止まらなくなり、
挙げ句の果てには
「私が勤めているネイルサロンです。」
と自らの紹介にまで発展。
このLINEグループは、業務連絡用から広報活動用へと変貌を遂げてしまったのだった。
そして、この広報活動の勢いは止まるどころかどんどん加速していった。
いかに自分の代が優れているのかを競い合うかのように次から次へと同期自慢合戦は続いていった。
その数に、その熱量に、80年の歴史を感じないではいられなかった。
その中で、僕がどうしても気になる一言があった。
「また頑張っている人が現れました。〇〇回生の〇〇さんのコンサートです。」
このコメントだ。
コンサートは別にいいのよ、どうぞ開いてください。
その前がどうしても気になる。
「また頑張っている人が現れました。」
ここです。ここ。
まず、ポケモン・ドラクエみたいに言うな!草原でも歩いとったんか!
それに、頑張っている人は突然現れるわけではない、ずっとそこにいる。
ずっとそこで頑張っている。
そもそも、このLINEグループ上で紹介されない人は頑張っていないのか。
違う。
人はみんな頑張って生きている。
起き、立ち、食べ、働き、勉強し、悪口を言い、言われ、喜び、怒り、悲しみ、恋焦がれ、手洗いうがい、歯磨き、考え、眠る。
なんて大変なことだろう。
僕たちは当たり前のように生きているが、実は頑張らなければ生き残れない。
サバンナのしまうまドキュメンタリーでも観てみて下さい。生きるって大変なんです。
それなのに、
活躍した人だけが、
真ん中に立っている人だけが、
スポットが当たる人だけが、
頑張っているような言い方に納得がいかなかった。
真ん中でも隅っこでも、みんな頑張っている。
僕も、生徒のみんなも頑張っている。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。