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ワーカーホリック 心酔する愚者2章-⑦

「先輩方は相変わらずハードワークですね」

花房は慣れた手つきで私とSの前にティーカップを置く、ふんわりと香るダージリンがたまらなく良い。

「お前も、前は同じ仕事してただろう。いつでも戻ってきていいぞ」
Sが脚を上に伸ばしながら声をかける。

「僕は諜報活動は得意でしたが、それ以外はちっとも向いていませんでしたし。ほれに今は事務所の1階のカフェやりながら、ここでみなさんの手伝いさせてもらっている方がやり甲斐があります」

「あれ、最近花ちゃんが事務所のカフェ休む日があるから、戻ってくるかと思ってた」

「最近週2で製菓学校と製菓学校の先生のケーキ屋さんでアルバイトしているので、お休みもらっているんです。オーナーには迷惑かけちゃいますが、あのカフェは事務所内にあるからイートインよりもテイクアウトする人が多いので、迷惑じゃないから、今のうちにケーキの腕も磨いておけって」

花ちゃんが机に置いたモンブランはまさにお店のようなデザインのケーキだ。

「試作品ですが、召し上がってください。Nさんがここのキッチンを貸してくださってくれるおかげで、淹れたての紅茶が作れて楽しいです」
「ありがとう。それじゃ今日はお休みなんだ」
「はい、カフェは休みで朝ケーキ屋さんでアルバイトしてきて今帰ってきたところです。今日のカフェは17時で閉めるので閉め作業手伝って帰ります。」

「花ちゃんもなかなかハードワークだと思うよ」

「僕は好きなことをしているだけですので、先輩方とはまた違いますよ」
そうだ、俺たちは大変なんだと、モグモグしながらSは話す。

「でも今日はケーキだけ渡しにきたわけじゃないでしょう?」
「その通りです」
花房はお盆を机におき、足元にあったトランクを机の上におく
「ボスからNさんとSさんへ、今回のお仕事の支給品だそうです。僕は中身は見ないように言われおりますので、後ほど送られてくる暗唱番号で開けてください。」

「では俺はこれで失礼します。いつも洗い物まかせてしまってすみません」
「紅茶とお皿は私たちが洗うから、気にしなくていいよ」

そうして花房は爽やかに去っていった。

「さて、打ち合わせをはじめますか」
Sがパソコンを開きながら、壁のモニター画面を操作する。
わたしは花房のいれた紅茶を一口のんで、ファイルを開いた。


「ターゲットを処理するのは、構わないけれど、何か気に食わないのよね」
Sと資料の確認を終えたところで、私はつぶやいた
「急にどうした?」
「結局この子がなぜ、掲示板に暴露するようになったのか、また脅迫するような手紙は?エコー写真の画像は?彼女に対する謎ばかり残って、根本が解決していないような気がするのよね」
「ホストにはまった女の末路ってことだろう」
「そうだけど、気にならない?この子にここまで嫌がらせをさせる知識を与えた人に」
正直、嫌がらせをする方法なんて、調べればいくらでも出てくる。
ただし、今回の彼女のやり方は一人でやったものではない。議員を手玉にとり、復讐相手4人に対して的確にいやがらせをしてきている。裏で誰かが引いていることには違いないが
「俺たちは警察でも探偵でもない。依頼されたことを的確に処理するのが仕事だ、そして、そこまで追ってもお金にはならない」
「わかっているわよ。背後関係は諦めてもいいけど、せめて彼女の理由を知りたい。」
Sは呆れた顔をして
「直接本人が話すとは限らないが、気持ちを理解する方法ならあるんじゃないか?」
「拷問でもするの?」
「ちげぇよ。ばか。俺たちは今日どこに行ってきたんだよ。本人の気持ちを理解するなた行く場所はここしかないだろう」
「まさか」
ふふんッとした顔でSはヒラヒラと異様に厚みのあるカトウアイの名刺をみせてきた。

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