有吉佐和子『悪女について』を時系列にしてみた

有吉佐和子『悪女について』を最近読みました。

この作品を読み進めるうちに、富小路公子という女性の人生が、彼女を取り巻く人々の記憶の中で複雑に絡み合っていることに気付きました。
そこで、彼女の生涯を時間軸で整理することで、物語全体の構造や彼女の持つ魅力ついて、より明確にできるのではないかと考え、簡易な年表を作成しました。


昭和11年10月8日

公子 誕生。本名は鈴木君子。父は鈴木国次、母は鈴木タネ。生まれたのは檜町(現在の東京都港区)で両親が八百屋をやっていたその家。近所の薬局の人が赤飯をアルマイトの弁当箱に入れて届けてくれた。

小学校時代

この頃より、公子は自分は貰いっ子であると周りに言い始める。

昭和26年

中学3年生の頃、公子の父親である国次が死去。
それにより公子とタネは、公子の同級生である尾藤雪子の家に居候することになる。公子は尾藤家で女中のような扱いを受けていた。

昭和27〜昭和33年

神田神保町の夜学に通い、簿記を学ぶ。そこで、経営者の沢山栄次と、大学生の早川松夫と出会う。

公子が沢山栄次の経営する新橋の宝石店で働くようになる。その後、同じく彼が経営する中華料理店のレジ係としても勤めるようにもなる。

タネが公子と輝彦との仲を疑ったことで尾藤家とのトラブルが起こり、公子とタネは中野のアパートに移る。

公子は簿記の3級を3ヶ月で合格し、それから半年で2級を合格する。2級を合格したとき、沢山栄次から祝いに小粒のダイヤモンドの指輪を贈られる。

渡瀬義雄・沢山栄次・尾藤輝彦と肉体関係を結ぶ(正確な順序は不明)。
渡瀬義雄との関係後、公子は彼のアパートで同棲をするようになる。

公子が宝石のブローカーを始める。

公子がタネとの同居をやめる。

公子は渡瀬義雄に秘密で婚姻届を提出する。一度目の結婚。

長男 義彦を妊娠する。
これにより、公子は渡瀬義雄と破局する。さらに、沢山家との間でトラブルが起こる。
義彦を産んだ後、公子は中野のアパートに戻り、タネと義彦と同居するようになる。

ファッションデザイナー 林梨江と出会う。彼女の店「プレタポルテ」で、君子は薄紫色のドレスを注文する。その後も、公子はこの店でさまざまな服を注文するようになる。

次男 義輝の妊娠、出産。
公子が沢山栄二より月賦5万円で土地を借り、日本橋のレストラン「モンレーブ」を経営するようになる。

昭和34年

公子と渡瀬家との間でトラブルが起こる。公子は渡瀬義雄の両親の目の前で、自殺未遂をする。
のちに、公子は渡瀬家から当時で5000万円の慰謝料を受け取る。

公子が土地の売買を始める。

昭和36年

富本寛一と「モンレーブで」出会い、結婚する。公子にとっては二度目となる結婚。
「富小路公子」の名前を使い始める。その後、本名もそれに変更する。
田園調布にある富本家の改築と土地の購入を進める。

昭和37年頃

宝石店を経営し始める。
渡瀬義雄と結婚していたこと、2人の子供がいること、年齢を詐称していることが富本家に知られる。

昭和38年頃

富本寛一との離婚。公子は富本家の田園調布の家と土地を得る。
そして、息子たちをタネから引き取り、田園調布に移る。

昭和42〜45年

公子と烏丸遥子の交友が始まる。
女性の社交場である「東京レイディズ・ソサイエティ」に訪れるようになる。公子はそこの顧客を相手に宝石の売買を行う。

「東京レイディズ・ソサイエティ」の会員になった直後、公子は日本橋のビルの最上階に「東京レディス・クラブ」を設立する。

「光子」というマルチーズを飼い始める。

昭和47年頃

公子の体調が悪化しだす。

テレビに出演するようになり、多くのファンがつく。

「東京レディス・クラブ」小島誠と関係を持つ。

昭和49〜51年

小島誠からプロポーズをされる。

小学校の同級生である丸井牧子への造花のバラのプレゼントを贈る。
渡瀬義雄との同棲時代にアパートの隣人であった里野夫人へ、外国製の鏡台をプレゼントする。

小島誠との婚約。

昭和52年

死の4日前まで沢山栄次との関係が続いていた。
死の3日前、「娘が欲しかった」という旨の発言をする。
死の前日、夜学時代の同級生の早川松夫と食事の約束をする。
死の当日、真紅のウェディングドレスを着て転落死。

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