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同志少女よ、敵を撃て 感想(原作の方)

戦争モノってやだよね。

いきなり「何で読んだんだよ」なことを書いてしまったが、戦争って暗いし辛いし悲惨だし、しかもこの小説はページ数めっちゃ多いしずっと地獄じゃん。
って思ったんですけど、実は私、試し読みで買うきっかけになった描写が…あってその…

イリーナ様がね………。

実は私、ヤバイ女が物凄っっく好きで。
イリーナ様はやばいんですよ、登場後ヤバ挙動を取りまくり、主人公をバチ切れさせて命の恩人なのに命を狙われるという女で
気づいたらポチってた。ヤバイ女が好きなばかりに。

まあこれも、鬼教官イリーナが数字をダーッと喋る下りで、正気に戻るんですが…(※文系すぎて数字を話されると萎える)。

ではネタバレしてくぜですぜ(なにその口調)。
マジで読んでない人は最後まで読んでからここに来てくれ。あ、いや、別に戻って来なくてもいいんだけど…最後の衝撃さえ食らってくれたら









読みまして?では行きますわ!

戦争モノ苦手だけど読んでよかった。
歴史弱すぎのせいで、へえ〜が多すぎて、自分自身に不安は覚えたけど、とても読みやすい。セラフィマもセラフィマ様に進化してペンラ振ったよな。女性たちにキャーーーー!って言われてるセラフィマにキャー!って言っちゃったよね。

……。
ところでなんですけど………

イリーナエンド誰か当てた人いる???

ゴールを目指して爆走してたら、いきなり直角に曲がってコースアウト、セラフィマがエンジンぶっ壊れるまでアクセル踏みぬいて星空まで飛んでったよね???
アガサ・クリスティ賞って、ミステリーじゃないんだなぁ…と思って読んでたんですが、度肝を抜かれるという意味では、ここが一番の推理小説部分ではないだろうか。おめでとうございます。

しかし諸兄の動揺は分かるが(一番動揺してるのお前やろがい)、思い返せばきちんと伏線は張られていた。思い切りミハイルがミスリード仕掛けてきただけなのだ。
まず、シャルロッタとのキス後の筆を尽くした美少女描写。これが最初の伏線である(断言)。好きな人多いからな~サービスだろな~と読み飛ばしていたが、これは営業ではなく「あるよ」という目配せ………。
そしてちょいちょい挟まれるイリーナから向けられるセラフィマへの不可思議な感情。正体が分からないながらも時に激情に苛まれるセラフィマ。

言われてみれば書かれてる。
そうはいってもアガサ・クリスティ賞大賞受賞ってことはさ…と思ってたがまさか作品を選ぶ側にその勇気があったとは。勿論完成度の高さあってこそでしょうが、喜ばしいことだと思いますわ。

そう。完成度がバリ高い。
巻末の講評で構成力が褒められてたけど、それまでの描写が全て終盤に収斂していく。
それと、とんでもなく読みやすい。戦争小説でここまで読みやすい小説はそうないんじゃないかと思う。エンタメ的な楽しさがある。

あと、個人的に読みやすさがこれで異様に高くなったと思うポイントがあって、性暴力を現在進行形で受けてる女性の描写が出てこない。
該当しそうな箇所は、終盤のミハイルが襲い掛かる瞬間だけど、これも恐らく未遂。

ここが凄くいいと思う。
「同志少女よ、敵を撃て」は題材のわりに、どこか冒険小説のようで、むかし読んだ児童書を思い起こさせる部分がある。だからといって、楽しさに重心を置いて厳しい面を隠したかと言われれば、違うと思う。

性暴力の描写は読者に悲惨さが真っ直ぐ伝わらないことが多い。
悲惨なことをそのまま描くことが、イコール真剣に捉えているとは限らないと思う。テーマに据えるなら、被害を受けている最中の描写を省くのは一つの答えだと思う。

真面目に語っちゃったよ。ともかく性暴力の描写が苦手なので(アドルフに告ぐとか、カジュアルに出てき過ぎ)、ほっとして読めた。
人はめちゃくちゃ死んでいくんだが……。

コミカライズされて思ったが、小説だから読めてる部分はあったなーと思う。思い返すと仲間たちの最期、遺体が綺麗なまま残る子があまりいないので、今後漫画を読むの結構勇気がいる……と思ったが、まあそれは置いといて。

ところで、みんな終盤のミハイルどのくらい衝撃受けた?(二度目の質問)

この小説のびっくりは「ミハイル」と「イリーナ」で九割占めると思ってるんですが……いや、ミハイルくんメッチャ・怪しいとは思ってたけど。

イェーガーさんを許さなかったのがこの小説の肝だと思うんですけど、イェーガーさんって「戦争のただなかでも、人間としてギリギリのところまで頑張ってた」人に読めるし、実際他の小説なら、いい人認定されてたと思うんですが……というよりイェーガーさんは、すごくいい人なんですが。

これは「同志少女よ、敵を撃て」なので、セラフィマは許さない。「自分なら戦争犯罪を許さない」と言う。

思い返すと、確かにセラフィマは目の前で起こる戦争犯罪を許さない。主人公ムーブかと思って読み飛ばしていたが(オイ)、セラフィマは割と最初から頑固な情熱家だ。
オリガの助けを得てイェーガーと対決し勝利するけど、ここでイェーガーを許さないから、ミハイルを許さない展開に説得力が生まれる。

セラフィマは戦争だから仕方ないという言い訳を許さないが、ここは目新しい気がする(ただしセラフィマの行動は個人レベルに留まり、集団の変革までに至らない。そこは少し気にかかるが、ここがギリギリのラインだというのも分かる)。

しかしこの小説、読み終わってみると、一番ミハイルのことを考えてしまう。
多分読者のみんな中盤まで存在を忘れてるんだけど、終盤の展開で「あの言葉は嘘だったのか」と悶々と考えてしまう。

妹をレイプされて、家族を殺され、帰る場所をなくした優しい男の子だったミハイル。
オリガは、己や仲間たちの過去の夢を語ってから「どうしてこうなったのかな」とぼやくが、ミハイルに対してもそう思う。
ミハイルの言葉は嘘になったけど、多分、いつかどこかでは本心だったんじゃないかと思ってしまうからだ。




この小説、ユリアンくんとシャルロッタがお似合いだよねとかそういうことも語りたいんですけど(最推しのカップル)(なお作中別に付き合ったりしないしユリアンくんは別に好きな子がいる)、ちょっと真面目なこととの温度差で疲れてきたのでオチてないけど感想終わりですわ!シャルロッタは可愛いよね。

重たい感想続いてるので、次は普通の日記とか煩悩しかない感想書きたいですわあ。

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