見出し画像

ポスドクは全員留学しろ!お前ら人生の半分損するぞ!!海外ポスドク留学のすすめ

こんにちは、海外で現役ポスドク(生命科学系)をしておりますポス山毒太郎と申します。このnoteはあくまで毒太郎の体験を元に、偏見に基づいた感想を語っていく場です。ですのでほとんど統計値などは出てきませんので悪しからず。

さて前回まで「学振や申請書の書き方講座記事」、「学振DC採用者へ物申す記事」、「学振PD、海外学振の耳寄り情報記事」とアップしてきました。今記事もこれら記事の続きとして読んでいただきます幸いです。


筆者は現在米国で働いているポスドクです。今記事では日本の研究室に比べ、海外で研究することのメリット、デメリットを語っていきたいと思います。留学を考えている方のモチベーションになることを期待しており、また留学しようか悩んでいる方への一押しとなることを祈っています。

ただしこれは筆者がいた日本の研究室、研究施設と、現在所属中の米国の研究室、研究施設を比べたもので、日本全体と海外、米国全体の研究室、研究施設を比べたものではありません。ですので筆者の書くことを鵜呑みにして、いざご自身が海外に行ってみたら、「全然話が違うじゃないとか?怒」という可能性もあるので、ご注意ください。あくまで自己責任です。


その1 給料

以前の記事で日本でのポスドクの給料は額面で400万円前後と述べました。(以下の記事もご参照ください)

一方アメリカではどうでしょうか?NIHというアメリカ最大の研究機関がありまして、ここが示すポスドクの給料の基準があります。アメリカの大学、研究所は基本的にこの給料に準拠します。ドルですので、円ドルレートにもよりますが、日本円にして約1000万円ほどです。円安の影響もありますが、日本のポスドクと比べ給料が2倍以上に増えます。日本と同じ仕事をして年収2倍です。しかも大学のルールにもよりますが、毎年上がっていきます。

米国も広いので特に都会では、物価も高いので、生活が楽になるわけではありません。結局アメリカでもポスドクは低収入の仕事に位置します。聞いた話だと、お金が好きな現地アメリカ人は低給のポスドクよりファイナンスやITの方面へみんな行ってしまうので、米国のポスドクはアメリカ人以外の人種が多いそうです。確かにアメリカ人は周りであまりみません。
海外でもポスドクは低給ですが、額面で「日本の給料2倍」はとても魅力的とは思いませんか?

筆者の留学に関わるお金の細かい話はこちらをどうぞ!!筆者の給料から家賃まで赤裸々に語っております。 


その2 コアファシリティの存在

全ての大学にあるとは限りませんが、米国にはコアファシリティというシステムがあります。これは各分野の専門家が大学内にいて、こちらがお金を払うことで代わりに実験をしてくれるというシステムです。

例えば次世代シークエンスを自分で行う場合、ライブラリ調整用のキットを買い、自分でライブラリ調整を行い、シークエンシング、その後のデータ解析をしないといけません。どんな試薬を買ったらいいか、反応の条件検討や、シークエンス機械の使い方、バイオインフォマティックスの知識など、自分一人で実験を始めようと思うと途方に暮れます。

日本でこういった実験を行う場合、共同研究先を探さないといけません。いちポスドクが共同研究先を見つけるのは大変で、下手に自分で探してしまうと上司の怒りを買うこともあります(経験談)。なので自身の研究アイデアを実現するのは上司の裁量、人脈にかかってきます。企業に外注することも可能ですが、とても高価です。その点、コアファシリティはお金さえ払えば、こちらはサンプルを渡すだけで、ライブラリ調整からデータ解析まで全ておこなってくれます。

シークエンスの他にも、顕微鏡を使った実験やフローサイトメーター、プロテオミクス解析からベクター作成、メディウム作成まで全てプロのオペレーターがおこなってくれます。

ただしデメリットもあって、コアファシリティが混んでいる場合やクリスマスシーズンなど、メールも含めて反応が遅いです。また彼ら彼女らの決まったプロトコルがあるので、こちらがプロトコルの変更を指定しても行ってくれないことがあります。また筆者は自分の研究資金でコアを利用してないのですが、まあまあ高いです。ですが自分でいちからテクニックを学ばないといけないという呪縛から解き放たれるのは大きなメリットです。

その3 時間の節約

上のコアファシリティのおかげもあって、研究に費やす時間が節約できます。また日本に比べると、ラボにいる滞在時間も短くて済みます。しかしこれは研究室のルールによるので、一概には言えません。筆者が緩い研究室にいるだけの可能性もあります。

また共働きの研究者にも比較的優しく、子供が熱を出したときや、子供の学校が休みだからという理由で、家に帰っていい風土が日本よりあると思います。
 

その4 研究資金

日本ではポスドクがまず申請する研究費といえば、科研費の「若手研究(旧称: 若手研究A もしくはB)」です。科研は科学研究費助成事業の略称で、国の研究費を割り振る機関で原資は皆様の税金です。今は名称が変わっているかもしれませんが、「若手研究」は年額150-250万円x2-3年(総額500万円以下)です。


 筆者は海外の研究資金をとったことはないですが、研究室の同僚が学内の研究資金を取得したと喜んでいました。どれくらい取れたかと聞いたら、日本円にして2年で計5000万円と言っていました。これは科研費のような国の税金ではなく、いち大学がポスドクに配る研究資金です。さすがにびっくりしました。このように日本に比べ若手にも割と研究費を配ってくれる機会、また額が多いように感じます。もちろんその分コンペティティブではありますが。
 

その5 卸(おろし)業者不要論?

日本で試薬を購入する場合は、どのような手順を踏むでしょうか?欲しい試薬があったら、大学と提携している卸業者に値段を聞きます。そこで一番安かったところ、もしくは在庫を持っているところに発注します。

一方海外では大学が管理するホームページがあり、そこで直接購入していきます。簡単にいうとAmazonや楽天市場と同じ感覚で試薬が購入できます。各会社のホームページにアクセスして試薬をカートに入れて、購入するボタンを押すと数日で届きます。試薬が特殊な場合も、試薬を製造している企業に直接見積もりを出してもらい購入します。頼む卸業者によって値段が違うなんてことはありません。

卸業は日本独特のシステムなのでしょうか?日本の卸業も欲しい試薬がなかった時に、別の会社の試薬を提案してくれたりたまに役に立つこともあります。ですが彼らは自分の存在意義を考えながら、働いて欲しいです。卸の存在で日本の試薬が高くなっているとしたら本当にアホらしいです。
 

その6 研究の進みやすさ

以上の点から海外の方が、研究が進みやすいように感じます。筆者は、日本ではアイデアはあるけど金と施設がないから実現出来ないなんてことでいつも悶々としていましたが、現在は思い浮かぶアイデアを全て試せる施設、環境は揃っています。

なので逆にいうと、「いいアイデアがあるんだけど、施設がないからできないなぁ」などと日本で出来た言い訳はききません。ただし、コアファシリティなどを用いるとなんでもデータが取れてしまうので、それらを統括(マネージ)するのが大変になります。
 

その7 ポスドクに優しい?

これも大学によるかもしれませんが、ポスドクの活動を支援するオフィス(そのまんまですがPostdoc Office)があります。ここでは研究ファンドの情報から、論文や申請書の書き方講座、企業への就職講座、プレゼン講座などを定期的に開いてくれます(行ったとない)。また個人的に研究の相談からボスとの関係なども相談しに行くことができます(行ったことない)

またこれも当大学だけかもしれませんが、学内で開かれるセミナー情報を毎週末にまとめて全体メールで送ってくれます。これは日本の大学でも取り入れた方が良いように感じます。

また米国は移民の国です。ですので大学に移民専門のオフィスがあり、ビザ等に関する問い合わせにもしっかり対応してくれます。ただ筆者がいる大学では、忙しすぎるためかメールの反応は良くありません。
 

その8 人脈が広がる

筆者は「人脈」という言葉が嫌いです。周りに「人脈がー、人脈がー」魔人の日本人留学者がいますがはっきり言って辟易とします。筆者のコミュ力はエクストリームリー低いのただの嫉妬ですが。

さて筆者は「人脈」という言葉が嫌いですが、実際に多様な方々と縁ができます。大学にもよるかもしれませんが、実験スペースはフロアブチ抜きなので周りのラボとの関わりも日本に比べれば多い印象です。筆者も実験デスクの向かい側は別のラボです。試薬の貸し借りもまあまあ行います。

特に各分野の大御所ラボに籍を置くことができれば(筆者は違う)、そこにいるポスドク達は各国のエリートで次期PI候補達です。彼らと研究を共にすることで学ぶことも多いし、縁を長く持つと今後もお互い研究を進めやすくなることでしょう。

また逆に同じ大学や、フロア内にいる日本人との関係も強くなります。彼ら、彼女らとの縁も、日本に帰った後も含めて大切にしたいところです。

その9 日本人としての危機感?

海外に来ると、研究業界の世界情勢が何となく掴めます。筆者は海外に来て、中国人の多さにビビりました。場所によっては違うかもしれませんが、筆者の所属する研究施設では研究者の1/4程度は中国人と言っても過言ではないでしょう(過言かも)。ボスが中国人で、所属するポスドクが全員中国人の研究室もまあまあの頻度であります。彼らは一昔前の日本人を彷彿とさせるようにハングリーでとても勤勉に働いています。それに比べ最近の日本人ときたら、、、。

日本にいるときは全く気が付きませんでしたが、米国に来てみてこれから10−20年くらいは科学の中心は中国だろうなぁと強く感じました。そして日本は落ち目なんだなぁと肌で感じ、悲しくなりましたが、個人としては頑張りたいと思います。このように日本にいたら分からないことも見えてきます。

その10 キャリアを積み直す必要がある?

また筆者の場合は日和ってある程度の論文がないと留学できないと思っていましたが、周りの研究者の学生時代の論文はほとんどの場合大したことないです。日本でよっぽどCNS(生命科学系学術雑誌のトップ3であるCell, Nature, Science誌の総称、Central Nervous Systemじゃないよ!)レベルの論文でも持ってない限り、留学した国でいちからキャリアを積む必要があります。

筆者は中堅どころの論文を持っていて日本国内なら多少はドヤっていましたが、米国では別に周りから何とも思われていません。米国のアカデミアは大袈裟にいうと、PI(Principal Investigator)か死です。言い換えるとCNSか無(100点か0点)です。ですので、自分の持ってる論文じゃ「留学するのは無理だなぁ」と思っているそこのあなた!!アメリカに来れば、日本のほとんどのポスドクと評価は別に変わらないぞ(共に0点!)。そんなあなたこそ一発逆転を狙って留学するべきですよ!

大学院生としてトップラボに所属しておらず、かつ現在の日本で現在所属している研究室ではいい論文を出せないと感じている方に強く留学をお勧めします。

総括

皆さん、留学したくなりましたか?

以前に述べましたが、医師留学生にとってはお金のメリットがあまりないかもしれません。留学を目指している医師は以下の記事も必見!!

 
正直言ってnonMDポスドクであれば、ボスとの関係性が良好な限り、わざわざ就活してまで日本に帰る理由が全くありません。ただしいつまでもポスドクをするわけにはいきません。米国で研究室を主催するのはとても競争が激しいのでほとんど無理です。またビザの問題もあります。筆者はまだ日本に帰る予定はないので、数年後日本での就職活動の厳しさを感じたら、「留学するな!!」との記事を挙げるかもしれません。その時は察してください。

一方で米国のアカデミアはPIか死と言いましたが、我々移民には大きなアドがあります。そうです、「母国に帰る」という選択肢があるのです。ですのでネガティブになりすぎず、一歩踏み出してみてください。
 

ただし日本において、すでにトップ研究室に所属していてトップ雑誌に論文を出している方は留学するメリットはあまりないかもしれません。日本の研究室は、海外に比べ流動性が低いので、大学院生で一発当てた方はそのラボで助教、講師とランクアップした方がキャリア的に安定します(それがいいとは言っていない)こういった方々はキャリアに余裕があるので、本来は進んで留学していただきたいです。

お前らの論文なんて所詮ただの教授パワー、ラボパワーだぞ。複数ラボでそれなりの業績だして、実力を証明してみろや(筆者のやっかみ)!!ここまで保っていたのですが、最後に毒太郎の毒袋が破れてしまいました、謝罪します。この「同じラボでずーっとキャリア、論文を積む研究者」に関してはいずれまた物申したいと思います。

後書き

多くの大学院生、ポスドク、特に留学できる程度の業績を積んだ学生、ポスドクは、色々なことを我慢、犠牲にして、研究に励んできたと思います。「海外で数年過ごす機会」というのは普通の会社で勤めていても中々得られないので、この機会を得ることはポスドクの当然の権利だと思います。

研究だけでなく『人生』そのものにおいても、留学しないでポスドクしてるのは全く損です。留学で多少の失敗をしても日本には帰れると思うので、思い切って留学してみることをお勧めします。

また子持ち研究者の皆様、仮に研究がうまくいかなかったとしても最悪、子供の外国語教育にもなると思います。研究以外にもメリットが沢山あります。

最後に販促

本記事を読んで留学したいと思ったそこのあなた!?
当たり前ですが奨学金に採用されていればより留学しやすくなります。ですので筆者の上の記事も同時に読んでいただきますとモチベがさらに上がることと思います。特に「学振書き方講座記事」の有料部分を購入していただければあなたも奨学金をゲットすること間違い、、(以下略)。流石にしつこいですかね? 


明るい話題は「闇」に比べると盛り上がりに欠けるかもしれませんが、本来はこういう記事が書きたかったんです!筆者は、留学中で本記事のように留学のメリットを述べましたが、自身の研究がうまくいっているわけではありませんのでご参考まで。次回は趣向を変えて「自己紹介記事」を掲載したいと思います。いいね、フォローお願いします、モチベーションになります。


いいなと思ったら応援しよう!