−手紙の時間−
和紙の魅力を今に伝える日本橋の老舗 株式会社榛原さんのオンラインショップサイトにて、『手紙の時間』という連載が始まりました。
この企画の趣旨は、
お気に入りの便箋を選び、相手に伝えたい言葉を吟味しながらペンを走らせ、時に切手や封緘、シールなどの組み合わせを考える。
この特集は、そんな手紙にまつわる優しい時間を皆さまと共有することを目的としています。
POSTORY代表の近藤千草さんに考えていただいた、便箋や切手などのコーディネートを、季節や行事に合わせてご紹介して参ります。
です。(サイトより抜粋)
榛原さんは憧れの会社です。
個人的なことにはなりますが、亡くなった祖母がもしこの企画のことを知ったら、一緒に喜んでくれただろうな、と思います。千代田区神田生まれの祖母は、女学生時代に学校帰りによく千代紙を購入していました。私と同じく、やはり榛原さんのファンだったとのこと。生前その話をしたことを時折思い出します。
右側がその祖母。(幼少期)左は、祖母のお姉さん。
約80年前の、ある日の写真。日本の、そして世界の変わりようは凄まじい。できることならば、より良くありたいものです。
それではここで改めて、POSTORYの考える「手紙の時間」とは何かを記してみたいと思います。
手紙の時間とは
手紙を「書く時間」とするのが一般的です。または、手紙を「読む時間」となります。しかし、最近は手紙が投函されること自体が少なくなっていますので、当然受け取ることも減ってきました。心許す親しい相手からの手紙はもちろんのこと、尊敬するかたからの手紙が郵便受けに届いたら、手紙を読むにも襟を正したくなります。その時間は特別なものです。
そうした時間を過ごす人は現在少なくなりましたが、受け取ることは少なくても、自身が書く方に回れば、自ずと手紙の時間は増えます。
手紙の時間とは、「用意する時間」でもあります。そして「手紙や文具、紙ものを眺める時間」「選ぶ時間」「準備をしながら近況を振り返る時間」です。
人によっては「珈琲を淹れてリラックスする時間」かもしれません。そして、季語を用いて挨拶をしようと考えた場合、暮らしにまつわる本を手に取ることもあると思います。そうしていつの間にか読書タイムになることも。気がつけば、四季の移ろいを味わい、旬の草花や日本の伝統色に想いを馳せたり。POSTORYでは、それらをまとめて「手紙の時間」と考えています。
「はいばら」とは
文化3年(1806年)創業。というと、あのペリー来航より47年も前。伊能忠敬らによる日本地図完成よりも15年前。フレデリック・ショパンが生まれる5年前です。
時は19世紀。1851年の大英博覧会以降、博覧会の時代とも言われました。この頃、産業や文化の発展を世に知らしめる展示会として万国博覧会を最大限に生かしたのはフランスです。
1862年のロンドン万博では、中国、インド、日本からの展示品もあったといいます。この時、長く鎖国していた日本から到来した品々は職人技と洗練された造形により大変な注目を浴びました。その博覧会に追尾するように、1867年には再度パリで万国博覧会が開催されます。その際、フランス国内においても、西洋美術とは異なる日本の工芸や絵画の創造性は高く評価されました。そして芸術家達に大いに刺激を与え、それまでに無い新しい芸術、今では誰しも耳にしたことがある、そう、アール・ヌーヴォーが誕生します。
その様な中『榛原』は、明治6年(1873年)には、ウィーン万国博覧会、そして明治11年(1878年)のパリ万国博覧会にて和紙を出品。この時にヨーロッパに渡った榛原製和紙は、現在イギリスのグラスゴー美術館、V&A博物館、そしてフランスのパリ装飾芸術美術館に保存されています。これは、日本が1900年のパリ万国博覧会時に林忠正をパリ万国博の事務次官に任命し、主体的に成功させようと企てる前のこと。
明治の文明開化期にいち早く和紙を輸出し、また同時に洋紙を輸入した会社でもあり、『榛原』は日本の文化史にその名を刻んでいます。
また、明治政府から要請を受けて官製はがきの作成を担い、日本の郵便創業期において手紙文化発展に寄与したといわれています。
このたび、榛原さんと手紙の時間をこうしてご一緒できることは、郵便文化を愛するPOSTORYとしてとても光栄です。
『榛原』の便箋や葉書はどこで買えるの?
全国有名百貨店、主要美術館のミュージアムショップ等でお取り扱いがあります。
そして一度は、日本橋本店に足を運んでいただきたい。
落ち着いた空間でありながら、心浮き立つ場所です。
遠方にお住いの方、又はそうではなくても、今は外出もままならない時期でもありますので、オンラインショッピングサイトを覗いてみてください。手紙と同じで、眺めるだけでも楽しい気持ちに。贈答にも適しているので、大切な方へのプレゼントにも最適です。
手紙を書いても書かなくても、「手紙の時間」は作ることができます。
ほっとしたい時、自分に立ち還りたいたい時、
「手紙の時間」を過ごしませんか。
これから少しずつご紹介していきながら、
忙しい皆様の日々の中に、
ゆったりとした時間を重ねていくことができましたら幸いです。
<余談>
今日は、切手による名画の展覧会を開催しました(自宅)
<参考文献>
株式会社 榛原 発行:冊子体
「ジャポニスムからアール・ヌーヴォーへ」由水常雄 中央公論社
「デザインの20世紀」柏木博 日本放送出版協会
「世紀末のスタイル−アール・ヌーヴォーの時代と都市」海野弘
「カラー版 日本デザイン史」株式会社美術出版社
「西洋美術史ハンドブック」高階秀爾、三浦篤 株式会社新書館 他