#5 ノヴァポシュタに入るときに使えるウクライナ語
ノヴァポシュタとは
タイトルにある「ノヴァポシュタ」というのは、ウクライナにある郵便局・運送業者だ。
ウクライナ語での表記はНова поштаで、それをラテン文字に転写するとNova Poshtaとなる。Novaというのは「新しい」、Poshtaというのは「郵便」なので、自動翻訳などではたまに「新着メール」などと訳されることがある。
この記事では、このНова поштаのことをそのままカタカナ転写で「ノヴァポシュタ」と書くことにする。
ノヴァポシュタは、いまとても勢いがある企業で、Google翻訳を通してこの記事を読むと、「2023 年に 2242 の新しい支店を開設した」と書いてある。
ノヴァポシュタは民間企業で、それと対抗するのが、国営企業のウクルポシュタだ。ウクルポシュタのほうが料金が安いが、ノヴァポシュタのほうがサービスの質がいいというのがウクライナ人の意見だ。
ウクライナ生まれ・ヨーロッパ育ちの Nova Post
ノヴァポシュタは、2022年からのウクライナ侵攻の影響を考えているのだろう。何度も爆撃を受けているので、いろいろ厳しい思いをしているはずだ。最近ではオデーサでの爆撃が記憶に新しい。
ノヴァポシュタは、国内市場だけを見ているのではない。
そこで生まれるのが Nova Post だ。
なんだよそれ、ノヴァポシュタと同じではないのかと思うかもしれないが、ノヴァポシュタとNova Postは違う。
運営母体は同じだが、存在する国が違う。
ノヴァポシュタはウクライナ国内にある郵便局のことで、ノヴァポシュタが海外に行くと、それはその瞬間から Nova Post と呼ばれるようになる。
おそらく「Post」というのが英語など各国語の話者にも読みやすいということ、そして「Poshta」というのを看板に載せると「なんだこれ」となってしまうのを避けるからなのか、海外にあるノヴァポシュタはNova Postと呼ばれ、看板にもそう書かれている。ならいっそNew Postでもよかったのかもしれないが、それはウクライナカラーを残したかったからなのかもしれない。
つまり、Nova Postは、ウクライナ発・ヨーロッパ育ちの郵便局ということになる。
現在10以上のヨーロッパの国の主要都市にNova Postはある。
Nova Postではウクライナ語が話されている
Nova Postでは、たとえばイタリアのミラノにあるのなら、イタリア語を話すだろうと思うかもしれない。
ただ、実際のところ、Nova Postではウクライナ語が主に話されているようだ。
その理由は、たとえばイタリア人はポステ・イタリアーネ(イタリアの郵便局。株式会社)を、ポーランド人はポチュタ・ポルスカ(ポーランドの郵便局。国庫直属の個人事業会社だそうだ)を使うということにあるのかもしれない。
Nova Postを使うのは、避難民や移民などの、ウクライナにルーツがあるひとが多いようだ。ウクライナを様々な事情で後にしたひとたちが、故郷に残る家族や友人に荷物を送るときに、Nova Postが使われているようだ。
なお、ウクライナは2022年の侵攻以前から、相当経済的にしんどい思いをしていたひとが多かったようで、それ以前にウクライナを後にしているひともある程度いる。
ミラノにあるNova Postのレビュー
ためしに、ミラノにあるNova Postのレビューを見てみよう。
このコメントは、名前から察するに、ウクライナの方から書かれたものだろう。それにNova Postはこう返信している。
レビューの半数程度がウクライナ語で書かれていて、それ以外は英語やイタリア語で書かれていた。
そして投稿者の名前を見る限り、ウクライナにつながりがあるひとが多そうだった。
つまり、あなたがもしNova Postを訪れたいなら、ウクライナ語がすこしでも話せたほうがいいということだ。
このミラノにあるNova Postでは、ロシア語で書かれているコメントにもウクライナ語で返答されている。それはロシアの侵攻にあらがうということと、自らの言葉を大事にしようという動きの影響だろう。
事実、ソビエト時代以外にも何度も、ウクライナ語は使用禁止令が出され、ウクライナ人がロシア語を使うことを強いられていた時期がたくさんある。そのため、侵攻でただでさえ日常が奪われているが、せめて自分たちのアイデンティティである言葉だけは奪わせないということなのだろう。
Nova Postやノヴァポシュタに行くときに使える挨拶
とはいっても、ウクライナ語を覚えるのは簡単なことではないので、この記事では挨拶のみを紹介する。
ウクライナにあるノヴァポシュタに私達が行ける日がいつになるのか、そもそもその日が訪れるのかすらわからないが、Nova Postであれば明日にでも行ける。
そのため、希望を捨てることなく、引き続きこの記事ではその挨拶について語っていく。
ウクライナ語で「こんにちは」と訳せそうな言葉は、3種類ある。
Привіт
Вітаю
Доброго ранку
これをラテン文字に転写すると、こうなる。
Pryvit
Vitayu
Dobroho ranku
Доброго ранку と Добрий ранок という朝の挨拶「おはようございます」について
ここで、主に非ネイティブスピーカーからたまに見る挨拶である Добрий ранок についても紹介する。
ラテン文字に転写すると Добрий ранок は Dobryy ranok となる。
なぜこれをネイティブスピーカーはあまり使わないのか。以下がウクライナ人からの解説だ。
なおこの訳について私は一切手を加えていない。彼の日本語は私のよりかなりうまいので、この記事の執筆も丸投げしたいくらいだ。
これらの挨拶は「良い一日を」といった訳をするのだが、朝の場合は「良い一日になりますように」ということで対格を取り、昼と夜は「今日も良い一日だったね」という意味で主格を取るのだという。
ウクライナ語の7つの格
ウクライナ語には格がある。
名詞の格は主格、対格、属格、所格、与格、具格、呼格の7種類である。
簡単に言うと「私は」が主格、「私の」が性格であるといったように、「てにをは」を7つの格で表す。これがスラブ系の言葉の難しさであるが、慣れてしまうと楽しいものに変わる。
それで、先ほどの3つの挨拶を再掲しよう。
Привіт
Вітаю
Доброго ранку
結論
結論から言うと、最後の Доброго ранку をノヴァポシュタでは使うのが良い。
これを書くだけのためにここまで4500字書いている。長くなったが、もうそろそろ記事を締めたい。(といいつつあと1200文字続くのだが)
では、残りの2つを見てみよう。
Привітは親しい友人などに使う挨拶だ。
従業員と顧客という関係性では、 Доброго ранку を使ったほうが無難だ。
では Вітаю はいつ使うのだろう?
この答えは、ウクルポシュタが教えてくれる。
正直「移動されます」がよくわからなかったのだが、これに対するウクルポシュタのコメントを見よう。
最後の文 Юлія, команда Укрпошти (ユリア、ウクルポシュタチーム) だけでも1つの記事が書けてしまうのだが、それはまた別の機会に。
ここの最後のほうにもすこし書いたが、基本的に Вітаємо と Вітаю は同じものだ。前者のほうが丁寧な形となる。
ウクルポシュタは好んで Вітаю ではなく Вітаємо を使っている。
それで、 Вітаю あるいは Вітаємо についてだが、挨拶の部分だけ見てみよう。
Доброго дня という「こんにちは」という、客が書いた挨拶へのウクルポシュタの返信が、Вітаємо となっている。
つまり、 Вітаю あるいは Вітаємо は、「主に企業が、主にお客さんに向かって、「こんにちは」と言うときに使われるということになる。
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