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ワタクシ流☆絵解き館番外編②雨の日の美しい午後

今回は絵画を離れての、でも絵画的な味わいの番外編②です。半世紀以上前のドラマですが、筆者には思い出の深いワンシーンを借り、自作の詩を載せます。借りた映像のようにはゆかなかった出来事なのですが‥‥。似たような思い出を持っている方は、きっとおられるのではないでしょうか。

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   1966年放映のテレビドラマ「雨の中に消えて」よりワンシーン
   (画像のタッチを加工させてもらいました)

紫陽花(あじさい)                       
                     瀬戸風 凪

止みそうにない雨が紫陽花の色で撥(は)ねていた
濡れてゆくだけのことと諦(あきら)めて大学構内を出た
すぐにずぶ濡れになったぼくの背後から
小走りに駆けてきた女性がいた
―この傘に‥‥入りませんか?

二人が一つの傘で歩くためには
いま出会ったばかりの彼女の肩を
抱き寄せて歩く姿しか描けなくて
恥ずかしさからぼくはその好意をフイにした
―もうこんなにずぶ濡れだから

彼女を駆け出させたとっさの小さな衝動
無垢(むく)なやさしさ
ぼくの返事もまた
彼女を濡れさせないためのやさしさだったはずだが
同時にその温(あたた)かい思いを拭(ぬぐ)ってもいた
ぼくの言葉を受けて彼女はばつが悪そうに
それでも翳(かげ)に在る花のような微笑みを見せてくれた
ぼくは彼女からは距離を開けて
後ろをゆっくりと歩いた
彼女へのせめてもの心遣(こころづか)いのつもりだった

―この傘に‥‥入りませんか?
遠いあの日の言葉を今も雨が弾(ひ)いている
紫陽花の花弁を鍵盤(けんばん)にして…
雨がもたらした付け足しの筋書き
そのワンショットににじんでいるのは
紫陽花の彩(いろどり)のような
「うすみづいろの とまどひ」

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