ワタクシ流☆絵解き館その134 初夏へ―田辺完三郎の詩③
筆者が好きな、世に知られざる詩人田辺完三郎の詩を紹介する第三編目。詩人は1941年生まれで、すでに故人。
虚空に向かって演説し続けているような現代詩の悪弊とは無縁の、企まざる一行が読後に心に残る詩を書く詩人だったと思う。生涯に『ほろ酔い詩集』一冊を亡くなる直前に出版した。
絵は、詩に出て来る「岩だらけの海岸」のイメージに添う絵として選んだもので、南薫造「犬吠岬」とは関係はない。
海岸風景を主要な画題にしていた南薫造についても一言。南の絵のいくつかの場所に立ったことがあり、写真を撮って、画像を絵と重ねて見たりもしたが、風景の姿を一切ごまかさずに描いていることに気づいた。
いうなれば無骨ともとれるが、やはり誠実という他なく、画家が今魅せられているものを、絵で伝えようとする純朴な精神を作品が語っているのを感じる。だから、見えたものを切り取ったというだけのスナップには堕していないのだ。心を引き込んでゆく魔術を持った画家だ。
では、『ほろ酔い詩集』から田辺完三郎の詩を…。
令和4年5月 瀬戸風 凪