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指輪

はじめに
これは、#リモラブ をもとにした私の妄想小説です。今回は、以前書いた「信頼と愛情」という話のその後です。

美々と青林は久しぶりに二人で会っていた。
日曜日の昼間の公園。周囲は家族連れなどで比較的混んでいた。だが、みんなそれぞれ距離感を持って休日を過ごしてる雰囲気があった。

公園の芝生にシートを敷いて、二人は仲良く寝ころんでいた。
こんな時代だからこそ、隣に、信頼できる、愛する事ができる人をしっかりと感じれる、この雰囲気が、二人は嬉しかった。

「美々」
青林が空を見つめながら隣で目を閉じて寝ころぶ美々に声をかけた。
「ん?」
気持ちよさそうな表情で美々は答える。
「この間の指輪、持ってきたんだ。
こんな雰囲気も何もないところだけど、もらってくれる?」

先日、二人はPC越しに結婚することを宣言した。その時に青林から指輪を渡されていたのだ。画面越しに。

「え?
貰う貰う。やった。うれしい」
美々は、起き上がり、はじけるような笑顔で青林を見つめた。

青林もその笑顔につられるように微笑み、バッグの中からケースを取り出し、美々に渡した。

「開けていい?」
「もちろん!」
ケースを開けると、かわいらしい桜をモチーフにした指輪が見えた。画面越しで見たが、実物を見ると、一段とかわいらしい指輪に見えた。
「つけていい?」
「もちろん、もちろん」

美々は、指輪を自分の左手の薬指にはめた。


「あれ?」


ぶかぶかで、サイズがまるで合ってなかった。

「あれ?」
異変に気付いた青林もつぶやいた。
「え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~どうして~~?しっかりサイズ測ってお店に行ったのに」
しばらく考え込んで、青林は自分の行動を思い出した。
「あ」

実は、ずっと指輪を買おうと目論んでいた青林は、いろいろ方法を考え、検討した結果、美々が寝ている間にそっと毛糸を指に巻いて長さを測ったのだ。
美々を起こさず、左手の薬指に毛糸を巻くことに成功!すると、美々の薬指と自分の小指のサイズが同じことが判明。
意気揚々と指輪を買いに向かったが、お店では緊張しすぎて、なんと、自分の薬指のサイズで指輪を買ってしまったのだ。
青林も男性としては指が細い方なので、店員さんもあまり不審に思わずそのサイズで作ってしまった。

「あ~~やっちゃった~~」
そんな落ち込む青林を尻目に、美々は笑いが止まらなかった。
次第に、つられるように青林も笑い出した。
「こう言う所だよね。僕ってさ、ツメが甘いと言うかなんと言うか」

美々は、指輪をネックレスに通した。

「これで問題ないよ。
どうせ仕事中は、感染上指輪をつけられないもん。
でも、ネックレスなら問題ない。
こうしておけばいつでも青ちゃんを感じられるよ」

笑ってはいるが、まだ落ち込んでいる様子の青林を見て、美々は「ふふふ」と、一回小さく笑った。

「ね、かぜさん」

ものすごくご機嫌な時、美々は、青林のことを風一だから、かぜさんと呼ぶ。
青林の方を向いて、美々は青林の両手をぎゅっと握った。

「かぜさん。
ありがとう。一生懸命私のために色々考えて行動してくれたんだね。それがうれしい。指輪を買ってくれたことよりも、その行動がうれしいよ。
でもね、これからは、サプライズとかはそんなにいらないよ。一緒に考えることの方が、ずっと楽しい。これから、ずっとずっと一緒にいるんだから、サプライズとか考えてたら、疲れちゃう。
ほら、かぜさん、絶対間違えちゃうし」

美々はまた笑いだした。
その様子を見て、青林も自分の行動をしっかり振り返った。

「そうだね。
こうしたい。って思う時って、相手の事を思っているはずなのに、なぜか相手の事を置いてけぼりにしちゃいがちだよね。
それは、僕がしたいことだから。
だから、独りよがりになっちゃう。思い通りにいかないと、勝手に落ち込んだり怒ったり。
一緒に考えていれば、相手の事も、自分の事も、ちゃんと考えられるのにね。
秋のキャンプの時だってそうだったよね。僕だけ突っ走って、美々を混乱させた。
あの時の事を後悔して、いろいろきちんと話をするようにしてきたのに、重要なところでまたやっちゃったな。ごめんね」

美々は笑顔で首を振った。
こういう、素直な青林がとても好きだった。一番好きだった。

「ねえ!」
青林が、しまった!という風に声を出す。
「どうしたの?」
「指輪!勝手に選んじゃったけど、それも良くないよね??一緒に選べばよかったのに!大丈夫?僕のセンスで大丈夫?」

美々は、慌てる青林にそっとキスをした。

「大丈夫。気に入らなかったら、ちゃんと言うから。
すごいかわいい。嬉しい。ありがとうね」

青林は、ホッとした顔をして今度は自分から美々にキスをした。

二人は、ここが公園であることを思い出し、「はずかしいね」と言いながら、手をつなぎ、再び寝ころんだ。

「ねえねえ、好きなサンドイッチの具、シリーズやる?」
「いいよ。サンドイッチね」
「じゃあ、言うよ。せーーの」

「たまご」
「ツナ」

「揃わなかった~」
二人は笑いあった。
そして、お互い、なぜたまごがいいのか、ツナがいいのかを語り合った。

小さなことから、二人はこうやって楽しみながら話し合っていく。
これからも、ずっと。

7月の空は、青く、とても透き通っていた。遠くで子供たちのはしゃぐ声が聞こえた。

おわりに
前回、信頼と愛情を書いた後、感想を言ってくれた方から「青ちゃんは、指輪のサイズを知っていたのかな?」と聞かれ、その辺の設定を全くしていなかったことに気付き、今回のお話を思いつきました。
まめいかさん、ありがとうございます。

このお話は、私の完全なる妄想です。本編とは全く関係ありませんので、悪しからずです。

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