本当に研究者になりますか?

今回もネガティブな話です。
むしろポジティブな部分は、嘘くさくなりそうで書こうと思いません。
根暗な人間の面倒くさいところです。
あくまで私個人が思うことですので、ご留意ください。

さて、「研究者になりたい」という夢を持っている人、そんな夢を持っている子供をもつ親御さん、本当に研究者を目指しますか?夢を追いかけさせますか?
私の子供がもしそう言った場合、止めるかもしれません。
そう言わせないように、他の何かに興味を持つようにしてしまうかもしれません。
好きなことをしたい、という純粋な気持ちを応援できないかもしれません。
実際に、博士課程に進もうか、と考えている学生に対して、「どんなに優秀な人であれ、私は勧めない」とはっきりと伝えてきました。

今のアカデミア界隈は、もうボロボロです。
日本だけでなく世界でもそうみたいです。
今現在、アメリカの研究界隈がボロボロにされていっているのを目の当たりにしています。

日本では、各大学の運営資金が減らされ、まともに運営できない状態で、それを訴えかけても特に何の対策も取られず、ボロボロの校舎、一昔前の実験装置、机すら置けない狭い部屋、先生たちに降り注ぐ雑務の雨嵐、任期付きの助教や准教授、下手すると教授。
そんな環境下で、インパクトのある研究をしなさい!、なんて言われて、よしやってやろう!という気持ちになりますか?
そんな環境なのに、「何とかなるよ!」なんて無責任なことを言う先生は、いったい何を見ているんでしょうか?
ご自身が何とかなったのは、時代のおかげではないですか?本当に違うと言えますか?
出世率も下がり、博士課程に進学する人も減り、そんな環境も変わらないまま、この先に研究者として残っていく人がどれだけいるでしょう?
若手を支援しよう!なんて口の良いことを言って、どう考えたらそういう支援策が出るの?という策しかないです。

研究室に入って、卒論や修論でしんどい、つらい、と言っている人がたくさんいますよね?
中には精神を病んで、生きていくのも大変になる人も生きることをやめてしまった人もいます。
「精神を病みやすい業界だよね、仕方ないよね」なんて聞きます。
精神を病むのが普通?あきらかに異常でしょう、それが当たり前なんて。

博士号を取るときは、ほぼ30歳です。
それまで高い授業料を払います。
学振が通ったとしても、月20万程度で、扶養を外れて税金を払うことになります。
学振がなければ、一文無しです。
博士号を取って、ポスドクになる人が多いです。
日本であれば、もちろんお給料はありません (雇われポスドクや学振PDなどであれば別です)。
無給ポスドクを何人も見てきました。
大学のポストも減り、あっても任期付きのポスト、5年程度でまた無職です。
それが「普通」と言われます、何を言っているんでしょうね。

他にも色々とあります。
ネガティブな面は、いくらでも出せますよ。
私だけではないと思います。

ポジティブな面を考えてみましょうか。
論理的思考が身に付く、海外からは専門家として見られる、とかでしょうか。
論理的思考はアカデミアでないと身に付きませんか?そんなことないですよね。
海外で仕事がしたいならつゆ知らず、日本で暮らしていくうえで「博士号」は大したメリットはありませんよ。
博士号を持っている人を採用したい、という企業は稀有でしょうね。
それなら、学部卒を取って、時間をかけて育てる方が戦力になるでしょう。
今は育てようとしてもすぐ出ていってしまうので、企業がどうしているかは分かりませんが。

「やりたいことやっているんだから、自己責任でしょう?」という人、自分の仕事が5年契約で、5年経ったらどんなに頑張ろうが成果を出そうが出ていってください、その後は知りません、という環境が普通になっても同じことが言えますか?
別に研究者は、研究者を特別扱いしろ、と言っているわけではありません。
企業で頑張って働く皆さんと同じように、普通に働かせてほしいと言っているだけなんです。
それがおかしいことですか?

私だって、こんなマイナスなことばかり考えたくないですよ。
楽しく研究できるなら、そうしたいです。
できないんですよ、今のアカデミアでは。
未来ある若者に呪詛を振り撒いて、余計に人が来なくなるのは分かっています。
じゃあ、騙して、来させて、後からネタ晴らししますか?
そんな詐欺師まがいのことをしてまで、若人を引きずり込みたいですか?

色々と思うままに書いてしまいました。
嫌な事ばかり書いて申し訳ございません。

最後に、こんな業界でも頑張ろうとしている研究者の方々、ダメになる最後まで一緒に頑張りましょう。
この業界を目指している人、今一度、自分に聞いてみてください。
本当に研究者になりますか?


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