「夢輯夜」第一楽章:Allegro all'alba 夜明け:アレグロ
解説
ZUNさんの誕生日に寄せて作ったアレンジになり、東方・秘封作品を世に産み出してくれたことに対する感謝の念など、祝祭的な雰囲気に仕上げました。
また自分が好きな作曲家が使っていた技法(循環主題)など、凝ったことを色々やろうとして盛りだくさんになっています。(すみません;;)
原曲
童祭 ~ Innocent Treasures
曲調
調性:ホ短調
拍子:4/4
形式:序奏付きソナタ形式
序奏
序奏主題(00:00)
眩しく輝く太陽のような「日の出」の主題(序奏主題)が、バイオリンとチェロのユニゾンで力強く奏され、強弱を変えて繰り返されます。
この後も場面が切り替わるたびにこの主題が現れ、さながら時間と方角(位置)を示す太陽のように、曲の進行において中心的な役割を担います。
呈示部
第一主題(00:29)
チェロがリズムを取りバイオリンがそれに応えながら盛り上がると、バイオリンが「祝福」の主題(第一主題)を奏で、チェロはリズミカルに・対位法的に伴奏します。
続いてメロディが交代しますが、テンポはそのままで走り続け、再び盛り上がったところで下降音形になり、ブレーキがかかるように裏拍を取りながら緩やかに減速して次の音楽へと移っていきます。
第二主題(01:51)
第一主題と打ってかわって、横へ横へと広がっていく伸びやかな落ち着いた音楽。「遠き山」の主題(第二主題)。日を遮る山々のように、時間をかけて何度も反復する形で、「祝福」の主題(第一主題)に対抗しています。
小展開したのち、少しづつ活発なメロディに変わっていき、第一主題を回想して閉じます。
一段落して、「日の出」の主題(序奏主題)が繰り返され場面が一巡したことを明示します。
展開部
前半(03:43)
「日の出」の主題の最後の音が引き伸ばされたまま、転調して展開部へ。「祝福」の主題(第一主題)の前半部分を暗い中を進むように、耐えるように繰り返し奏されると、一転して明るい調子でチェロの上昇音形に乗って、高らかに歌われます。
(この繰り返しながら盛り上がる展開は、ベートーヴェンの弦楽四重奏第10番第一楽章のコーダをオマージュしています)
それが一段落しユニゾンで調子を合わせるように動くと、今度は「祝福」の主題(第一主題)の後半部分を使った展開になり、一段と盛り上がったあと、徐々に静かになります。
後半(04:58)
引き伸ばされた長音が転調したのち、今度は「遠き山」の主題(第二主題)の短縮形をチェロが奏すると、バイオリンは「日の出」の主題(序奏主題)で応え、対位法的に絡み合いながら進みます。さながら山の影に日が隠れたり、顔を出したりするイメージでしょうか。
そのまま盛り上がった後、フォルティッシモで和声的な、力強いテーマ(創作主題)が高らかに奏でられると、そのまま再現部へ向かっていきます。
再現部
序奏主題(06:18)
再び戻ってきたことを強く主張するように、「日の出」の主題(序奏主題)がより一層力強く奏されます。
序奏主題が最後、彼方へ向かって伸びていきチェロの音が鳴るなか、バイオリンは「日の出」の主題(序奏主題)を奏しかけますが、ためらったのち、第一主題の対旋律(伴奏パート)を懐かしむように奏でます。最後はチェロがそれに呼応するようにユニゾンになり、クレッシェンドしていきます。
第一主題(07:28)
本当の再現部。勢いよく、力強く「祝福」の主題(第一主題)が奏され、最初と同じくチェロも対旋律で応えて盛り上げます。
途中、「遠き山」の主題(第二主題)の短縮がチェロに現れますが、一瞬で通りすぎるようにして再現を終え、そのまま第一主題の再現が続きます。
終奏
回想主題(08:27)
呈示部と同じように終わると見せかけて、ここまで出てきた主題郡を使った対位法的な展開が始まり、クライマックスになります。
序奏主題(08:44)
最後はやはり、「日の出」の主題(序奏主題)に戻ってきます。この音楽を振り返るように、夜が明けて朝になるのを見届けるように、優しく静かに終わります。
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