「夢輯夜」第三楽章
解説
沈んでいく夕陽を眺めているときの、時間が伸びていくような、けれども景色はどんどん速さを増して移ろっていくような、黄昏時の不思議な時間感覚のようなアダージョです。
原曲
科学世紀の少年少女
曲調
調性:ホ短調
拍子:4/4
形式:ソナタ形式
序奏
00:00 序奏(回想)
第一楽章の展開部の最後を回想しています。少し形は違いますが、続く第一主題のメロディを予告するような役割も持たせています。
(この悲壮感ある和音で始めるのは、チャイコフスキーの「フィレンツェの思い出」第二楽章をオマージュしています)
呈示部
第一主題(00:38)
「夕日」の主題(第一主題)。原曲のメロディから音符を間引くようにアレンジし、それが繰り返されるうちにだんだんと発展していきます。
最初はチェロからメロディが出てきますが、息を長く吐き切るような、細くたなびく音形に、バイオリンが1拍遅れる形でそれを支えるように続きます。
2回繰り返されると、後半はバイオリンにメロディが移り、チェロはト長調風(ホ短調の並行調)になり、複調的な雰囲気になります。
音量も次第に増していき、チェロも重音でせき立てるように強走しますが、やがて何かを見つけたように止まります。
第二主題(03:17)
「一番星」の主題(第ニ主題)。何かを手探りで探すような、少しの前置きの後、音符が簡素化されたサビのメロディがバイオリンで奏され、チェロがそれに応えます。
そしてその流れを引き継ぐ形で、創作主題が続きます。
(この第二主題が宣言的な部分とそれに応える従属的な部分の2つからなる構成は、ベートーヴェンの弦楽四重奏第七番第三楽章をオマージュしています)
展開部
第一主題(04:07)
変ホ短調で再び第一主題が現れます。最初とは違うリズム、伴奏で出てきますが、こちらも繰り返されるたびにメロディが発展していく流れになっており、最後は燃える陽のように激しさを増していきます。
(この反復をメインにした主題展開はショスタコーヴィチの交響曲7番第一楽章をオマージュしています。またサビ直前のアクセント付きで畳みかけるところは「戦メリ」もイメージしています)
第二主題(05:26)
呈示部では省略されていた音符が入り、ほぼ原曲通りの形でサビになります。
その後は明るい調子、軽い足取りで進んでいきますが、やがて何か気にするように少しずつ減速し、歩みが止まります。
再現部
第一主題(06:11)
再び序奏に戻ってきます。
第一主題の代わりに序奏主題を持ってきたことで再現部への突入がより劇的になり、また第一主題を省略することで、冗長さを軽減する役割も担っています。
第二主題(07:01)
序奏主題が終わると、すぐさまに次に移りますが、慎重に確かめるような掛け合いになり、バイオリンの音も高く緊張感が増した状態から、「一番星」の主題(第二主題)が奏されます。
また呈示部ではなかったドラマチックな展開を挟んで、最後はまた第二主題の後半を弾き、日没になるように、徐々に落ち着いた雰囲気へと戻ってます。
最後は音を伸ばしたまま、休みを入れることなく第四楽章へつき進んでいきます。
(この展開(アタッカ)もベートーヴェンの弦楽四重奏第七番第三楽章のオマージュで、続く第四楽章もこれにならい、賑やかな舞曲のようにしています)