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映画『春の香り』プロダクションノート♯2. (プロデューサー:堀ともこ)

-坂野さんとの出会い-


「春の香り」の映画化の始まりは、2022年の暮れの突然の出来事がきっかけでした。

その頃私は、自身が10年以上かけてようやく製作が叶った映画「いちばん逢いたいひと」の全国公開が決定し、SNS等で宣伝を発信する作業に追われていました。

「愛知県の坂野と申します。私は次女春香を脳腫瘍で亡くしました。その闘病記『春の香り』を出版しました。小児脳腫瘍の方のお役に立ちたいと考えています。よろしくお願いいたします。」 ふとスマホを見ると、このようなメッセージが入っていました。坂野さん?全く見ず知らずの方からの突然のメッセージでした。娘さん、脳腫瘍で亡くされたんだ・・・辛かっただろうなぁ・・・最初の印象はそんなふうだったと思います。

坂野さんと何度かやりとりしながら、坂野さんが執筆された本「春の香り〜脳腫瘍と闘い、一八歳で逝ってしまった最愛の娘へ〜」を早速取り寄せました。

ほんの数ページ読みかけたあたりで、「人の心に何か刻みたい」「人の役に立ちたい」という、春香ちゃんの心の中にあったであろうメッセージを、親である坂野ご夫妻が代わって必死に世の中に伝えようとするその姿に、私はふと、自分が抱えている、ある思いに胸を締め付けられました。

坂野春香さんのお仏壇の前で

-私と娘の経験とのリンク-


私の娘が12歳の時に、急性リンパ性白血病と診断され、骨髄移植を受けなければ助からないと宣告されました。

隣の無菌室では同じ年頃の少女が同じ病気で同じように骨髄ドナーを今か今かと待っていました。

私の娘は順調に治療が進み、そして幸運にもドナーが見つかり骨髄移植を受けることができましたが、隣の少女はなかなかドナーが見つかりませんでした。そんな中、少女の母親は私と娘に向かって「ドナー見つかって良かったわね。早く退院できればいいわね!」と。自分の娘がまだドナーが見つからずに状況も悪化していく中、私たちのことを気遣って下さったのです。その後、その少女はドナーが見つからないまま亡くなりました。

本当にごめんなさい。あなたの娘さんが亡くなってしまったのに、うちの子が助かってしまって、本当にごめんなさい。ずっと心の中でその母親に謝り続けました。なぜ、命に対して平等ではないんだろう。生きて叶えたいこと、伝えたいこともたくさんあっただろうに。もっと生きたかっただろうに。

坂野さんの「春の香り」を読みながら、10数年前に起きた出来事が私の脳裏によみがえりました。最初のメッセージをいただいてから1ヶ月後。私は春香ちゃんが一生を過ごした愛知県江南市に向かいました。

-そして映画化へ-


「映画にしませんか?」
「春香ちゃんの人生を、懸命に生きた証を映画にしてみませんか?」

私は咄嗟にそう提案してしまっていました。まだ1作目が公開目前で、私自身、プロデューサーなんてまだまだ言えない素人同然のただのおばさんです。今思えば、そんな状況でよくそんな大それたことが言えたもんだなぁと笑ってしまいます。

ずっとずっと、もう10年以上、私の心の奥深くで隣の無菌室の少女と母親に謝り続けてきました。生き残ってしまったことに何か重い荷物を背負わされているようで、正直その荷物をどうして良いのかわからない。下ろしてしまいたいのに、下ろしてはいけない気がしていました。

私がどうしたいのか、どうするべきなのか、どう生きるべきなのか・・・誰かにその理由を決めてもらって、背中を押してもらいたい気持ちがずっとありました。坂野さんとの出会いは、その理由を自分で決めることができた、すごい出来事でした。

そこから脚本家のカマチを巻き込み、監督は私が尊敬してやまない丹野雅仁監督にお願いし、2024年4月、坂野さんが住む、春香ちゃんが生まれ育った愛知県江南市で撮影が開始されました。

原案者:坂野さんのご自宅前で、春香さんと共に映画スタッフで集合写真をパシャリ📷
クランクイン前の2024年3月末 
キャストならびにスタッフ全員でお祓い

-いのちの伝道師-


この作品を製作していく中で、改めて感じたことがあります。

人の存在は生きている間だけのものではなく、たとえ亡くなっても大切な人の心に生き続けるのだと。

そして坂野さんのように、春香ちゃんが生きていた証を残そうとすることで、また新しく命を吹き込むことができる。坂野さんご夫妻はそのことを立証するために、いのちの伝道師としての活動を続けています。そして、私が活動を続けることの意味を探す旅も、また、命のある限り続いていくのだと思います。

映画『春の香り』プロダクションノート 第二話 終
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この映画『春の香り』公式Noteでは、映画『春の香り』に関わった方々の普段あまり語られない映画が完成するまでの成り立ちや、映画の細部に宿る物語を、これから映画をお楽しみいただく皆様に向けて、つまびらかにしていく目的で執筆しています。

映画に関わったスタッフを中心にそれぞれの目線で語られる映画『春の香り』今後、続々と更新していきますので、ぜひお楽しみにお待ちください!

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