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映画『春の香り』プロダクションノート♯1

堀プロデューサーとの出会い

2023年6月21日 1通のメールが届きました。

それは「株式会社TTGlobalの堀と申します」という件名のメールでした。
以下に内容を全文記載します。

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株式会社ポルトレ 石原 弘之 様

初めてご連絡させていただきます。
株式会社TTGlobal代表取締役の堀ともこと申します。
突然のご連絡で驚かれることと思います。

私は現在、全国公開中の映画『いちばん逢いたいひと』のプロデューサーをしております。私と娘の実体験をもとにしたもので、白血病と骨髄ドナーの物語なのですが、一人でも多くのドナー登録者を増やしたい、世の中の人たちに骨髄移植について知ってもらいたいとの強い想いで、10年前に大学勤務を退職し、映画監督のマネージメントをしながら映画製作の修行をして参りました。

念願の作品が、2年前にようやく製作が始まり今年の2月に全国順次公開となりました。今回、石原社長にご連絡差し上げたのは、次回計画しております作品について、お願いがあったからです。

愛知県江南市にお住いの坂野ご夫妻の娘、春香さんが脳腫瘍で18歳の若さで亡くなりました。ご夫妻は、春香さんが生前に残された「自分が生きていた証を残してほしい」という言葉に背中を押されるように、亡くなってから、春香さんの闘病中の様子を記したご夫妻の日記「春の香り」を出版されました。それが今、大変話題作となっており、愛知県内のマスコミなどで取り上げられております。

坂野さんが私の映画の記事をご覧になり、直接連絡をいただいて、現在映画製作に取り掛かっている、という流れです。その作品については、今、脚本も大方仕上がり、監督も先日決まりまして、来年の春ごろから撮影をしたいと思っています。

石原社長、配給・宣伝のお願いのご相談をさせていただけないでしょうか。

石原社長の記事を拝見させていただき、社長の意欲と熱意に心を打たれました。ぜひ、一緒に仕事をさせていただきたいと熱望しております。長くなりまして申し訳ございません。お会いしていただき、直接話を聞いていただけたらと思っております。もしご連絡いただけましたら大変うれしく思います。何卒よろしくお願いいたします。

株式会社TTGlobal
代表取締役  堀 ともこ
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愛知県 江南市はふるさと

愛知県の端の端の方にある江南市

私の故郷は愛知県江南市でした。江南市は名古屋から私鉄で30分ほど岐阜方面に行ったところにある人口10万人弱の地方都市です。

堀さんは、私が2018年に取材を受けた記事を見つけてくださり、私のプロフィールをご覧になり、地元である江南市が舞台の自身がプロデューサーを務める第二作目の映画『春の香り』の企画に参加して欲しいと連絡をくださったのでした。

私はすぐに堀さんとお会いしてお話ししました。第一印象からとても熱い人だと感じました。言葉を発しなくても何か伝えたいことがあり、訴えたいことを抱えている人だなということが、いでたちから醸し出されていました。端的に言うとメラメラしていました。

中日新聞の取材を受ける堀ともこプロデューサー(右)と
原案者の坂野ご夫婦(坂野さんのご自宅にて)

堀さんは前作『いちばん逢いたいひと』を製作された直後で、作品が全国の映画館で上映され、ひと段落したタイミングでした。まず堀さんが前作をどういう経緯で作られたのかのお話を伺いました。ご自身の娘さんが白血病となり、骨髄移植をして完治したが、ドナー登録者をひとりでも多く増やしたいという情熱から、その実体験を映画にして世の中に広める活動をしているということ。また、映画製作のためにマイホームを売ったお金を軍資金として、全額自費で映画を完成させたということ。堀さんの尋常じゃないパッションに言葉を失い、圧倒されました。

そして、次回作である『春の香り』について話を切り出した際に、堀さんは、愛知県江南市の映画だから江南市にゆかりのある配給会社はないだろうかと探して、ようやく辿り着いたと言う経緯を語ってくださいました。私はこんな小さな会社を見つけ出すとは、なんてマメな人なのだろうと思いました。そして堀さんは「引き受けてくれるまで、私は帰りません!」と言い切ったのでした。その時の鬼気迫る表情は今でも脳裏に焼き付いています。文字通り「必死」であることは明白でした。なんとしてもこの映画をつくりあげるのだ、と言う気合いがビシビシと伝わってきて、思わず椅子からのけ反りそうになりました。おそらく娘さんが白血病となり、いちばん苦しかった時も同じような表情をされていたのではないかと思いました。

1時間ほど話しただけでしたが、生きざまを感じ取るには十分でした。

そして咄嗟に、これはやらなければならないなと思い、引き受けることにしたのです。堀ともこプロデューサーの情熱に心が動かされました。それは映画をつくる動機の部分にただならぬ気配を感じたからでした。

これは、クランクインまでおおよそ8ヶ月ほど前の出来事でした。

こうして、私は映画『春の香り』の配給・宣伝を引き受け、この映画がひとりでも多くの人に知られ、作品を映画館で観てもらうべく、やり抜く意思を固めました。 そして、日本にあるひとつでも多くの映画館で、この『春の香り』を上映していただけるように、全力を尽くそうと決めました。

主演女優決定の瞬間

そして、2023年12月。映画のクランクインまで4ヶ月を切ったその日。主人公ハルカを演じる主演女優のオーディションが都内で行われました。そこで約1000人の候補者の中から、ハルカ役の座を射止めたのが、若干20歳の美咲姫さんでした。その時の様子は以下に記録されています。

いよいよ年明けの2024年4月に映画『春の香り』は愛知県江南市でクランクインを迎えます。

映画で何ができるのか

堀ともこさんという人物は、異色の映画プロデューサーです。映画製作は手段であり、目的はその映画をひっさげて自分自身の活動(骨髄バンクのドナー登録者を増やしたり、命を尊さを訴えかける等)を世の中の人に伝えていくことに主眼が据えられているからです。そのようなアプローチで映画製作をしているプロデューサーは稀有な存在だと思います。至難の業です。そのためには、まず第一に素晴らしい映画をつくりあげて、その映画が多くの人のもとに届かねばなりません。堀さんはその難しいチャレンジに全身全霊を傾けて取り組んでいました。

映画で何ができるのか。映画に携わる人間であれば誰しもが一度はそういった問いかけを自らに投げかけたことがあると思います。

愛知県の片田舎で紡がれたプリミティブな物語を映画にしようと決めて、実際に多くの人を動かして、有言実行した人物。その意思決定の背景には、本人の強い思い込みと剥き出しの人間力がありました。まさにそれは活動と呼ぶものでした。映画はそのむかし、活動写真と呼ばれていましたが、堀ともこさんは映画製作という手段を用いて、自らの活動を社会に訴えかけていく人物なのです。そして、堀さんがいちばん訴えたいことというのは、私が解釈するに、「いまそこにある、いのちの尊さを、伝え続けていく」という普遍的なメッセージなのだろうと感じます。

この映画『春の香り』の原案者である坂野さんご夫婦が書かれた著書「春の香り」を読んで、堀ともこさんは、本当に心が動いたのだと思います。春香さんの想いを発信し続ける坂野さんご夫婦の姿に強く共感を覚えたはずです。そして、なんとしても「春の香り」を映画にしたい!と強く思ったのでしょう。その時の堀さんの心境を思うと、ひとりの人間の決意の強さに対して、胸に迫ってくるエモーションがあります。

人が人を想う気持ち。人の想いに応えたいという人の気持ち。人の想いを受け継いで、その想いをさらに強く、深く、伝えていこうとする姿勢には、美しさが感じられます。

映画『春の香り』は、このようにして、いろんな人の想いが受け継がれて完成した、極めて珍しい奇跡の映画です。

そして何よりも、主人公ハルカが、病に冒され、それでも夢を諦めずに懸命に最後の最後まで、希望を捨てずに生き抜いた人生の轍を多くの人に感じてほしいと切に願います。

印象的な桜の木の下での撮影風景

丹野雅仁監督の気合い

そして、堀さんの想いを受け取った人たちが、この映画『春の香り』に賭けて、一致団結していきました。その筆頭者は、丹野雅仁監督です。

住み込んでいた江南市のマンションの壁に日々の
撮影スケジュール表を貼り、撮影プランを練る丹野監督

丹野監督は、この映画の撮影が開始される2024年4月のおよそ2ヶ月前から江南市に住み込み、その土地で生活をしながら撮影のイメージを固めていきました。

撮影4日目。喫茶店での撮影風景。演出をつける丹野監督。

映画『春の香り』プロダクションノート 第一話 終
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この映画『春の香り』公式Noteでは、映画『春の香り』に関わった方々の普段あまり語られない映画が完成するまでの成り立ちや映画の細部に宿る物語をできるだけつまびらかにしていく目的で執筆しています。

映画に関わったスタッフを中心にそれぞれの目線で語られる映画『春の香り』

今後、続々と更新していきますので、ぜひお楽しみにお待ちください!

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