英語版 隂山メソッドとはどういうものか
もともとは小学校の学力向上に寄与してきた隂山メソッド。
私も以前から同じようなことを中学校英語で行ってきていたわけですが、それを隂山メソッド的に解釈するとどうなるか、そして現在進行形の新・隂山メソッドとはどういうものか、ここで一度まとめておこうと思います。
①漢字の前倒し学習=英単語の前倒し学習
その日に習ったばかりの漢字や英単語を使って授業するのが、学習者にとっていかに過酷であるか。逆に、十分な訓練を積んだあとで教科書に入るなら、いかに安心でき高速学習できることか。「同じこと(先に単語習得)を隂山先生もやってたよ」と当時の教頭先生に言われたのが、隂山先生と邂逅するきっかけでした。
②百ます計算のタイム計測=タイピング英語のWPM
「ゆっくり解けるのは、まだ十分に習得できていない」ということでタイム向上のデータを取ることを重要視する百ます計算。かつては90秒切りが一つの目標でしたが、デジタル百ますの登場により30秒切りが現れているそうで、単にインターフェイス(手書き→テンキー)が脳に追いついてなかったことが明らかになってきました。タイピング英語においても、ネイティブ平均40WPM(Words Per Minute、1分に打てる単語数)のところ、中1平均44、中2平均55、最高125WPMを叩き出しました。即座にアウトプットできること=本当の習得と考える点では、言語習得理論におけるインテイクができているという考えにもつながっていると思います。
③論語などの暗唱=自作の基本文の暗唱
小1が論語を暗唱しているのが印象的な隂山メソッドですが、自作した全文法の基本文を対話形式で暗唱する訓練なんかは、「気づけば同じことをしていたなぁ」と思うところです。すべての文法をすぐに引き出せるようにしておくことは、その後の発展学習に肝要だと考えています。そもそもノンネイティブが外国語を習得しようと思うなら、文法というショートカットを使わないのはもったいないわけで、週2~4コマの授業内だけでi+1の英語のシャワーが十分に行われると考えるほうが暴論でしょう。
④百ますタイム計測&5秒で書く漢字=10秒で英作文
対話形式で全文法を暗唱したあとは、10秒で1文の作文に挑戦させます。ここでも、高速のアウトプット=充分にインテイクされていると考えます。ただし速度だけが指標だと、なるべく簡素な作文しかしなくなるので、「余った時間で、いかに副詞や場所や時間を追記できるか」を第2目標に設定します。そうすると、文の核となるSVOと、肉付けとなる部分との区分けもハッキリしてきます。オススメです。
⑤とっとと全体を俯瞰し、必要なら戻って反復する
8コマ設定された算数の単元を1コマでクリアさせてしまう隂山先生ですが、これがむしろスローラーナーに優しいことは見逃されがちです。スローラーナーやアベレージラーナーにとっては、早く説明されてもゆっくり説明されても1回で習得できるはずがないわけで、結局反復が必要です。であれば、単元の全景を俯瞰してから、細部に入る。ファストラーナーを先に行かせてから、スローラーナーのサポートに入る。そう考えると、高速の授業展開が、むしろスローラーナーに優しいことがわかります。
指導要領には「3学年間を通じて外国語科の目標を実現するために、学年ごとの目標を各学校が設定する」とあります。必要なら中3までの文法を俯瞰してもよいことの裏付けです。最初に全文法を俯瞰することで「過去形を教えたら、三人称のSが上書きされて消えてしまった」などという現象への歯止めにもなります。
すでにやっていたこと、意識的に隂山メソッドを参考にしたこと、無意識のうちに隂山メソッド的な発想で実践していたことなどありますが、隂山先生と話すたび「結局、行き着くところは一緒だったなぁ」と思う次第です。