Mastercard、欧州で2030年までにEコマースのトークン化100%をめざす
オンラインショップで買い物をする時、今では様々な決済方法を選択できます。
以前、当マガジンでは世界の決済方法のトレンドをまとめた記事を紹介しましたが、その中でも最も一般的な決済方法は、クレジットカードによるものではないでしょうか。
あなたがそのショップの会員になる時、初めてそのショップで買い物をする時、よく求められる情報のひとつがクレジットカードの情報です。
ウェブサイトがイマイチ信用できなくて、カードの番号を入力するのは気が引ける…。
そんなふうに感じる人も多いかと思います。
カード情報をいちいち入力しなくてもいい決済方法として、世界的にもポピュラーなPayPalがあります。
PayPalは米国を中心に、現在では世界の200か国以上の国々で普及しており、ユーザー数は4億人とも言われています。
PayPalにアカウントを作った後、使用したい銀行口座情報やクレジットカード情報を登録しておけば、PayPal対応のオンラインショップではPayPalで決済することができます。
決済画面でクレジットカードではなくPayPalでの決済を選択し、あとはオートで開くPayPal画面にログインして支払いを済ませるだけです。
オンラインショップのウェブサイトにクレジットカード情報を入力しなくていいので、精神衛生上にも良いと好んで利用されている方も多いのではないかと思います。
日本国内の場合は、この他に考えられる決済方法はPayPayなどでしょうか。
◇ ◇ ◇
このような、クレジットカード情報を入力しなくてもいい決済方法を複数備えているオンラインショップならいいのですが、やはり中にはクレジットカードのみでの決済方法しかない場合もあります。
パンデミック以降、急激に成長したEC業界ですが、それと同時にクレジットカード情報を盗み取ろうとする悪質な詐欺も増えているのも確かです。
以前、当マガジンではMagentoのバグを悪用して巧妙に仕掛けられていた、決済データを盗むレイアウトテンプレートのニュースを紹介しました。
この事件は、ヨーロッパのユーザーがターゲットだったと言われています。
ヨーロッパ住みの私としては、冗談じゃないよ!と言いたい事件でした。
今日紹介する話題も、同じくヨーロッパのお話です。
クレジットカードの国際ブランドMastercardのプレスリリースを紹介します。
私個人にとっても朗報です。笑。
Mastercard がオンライン・チェックアウトを再構築、欧州で2030年までにEコマースのトークン化を100%達成することを表明
2024年6月11日
私たちが伝えたいこと:
Mastercardは本日、欧州において10年以内にオンライン商取引を100%トークン化するというビジョンを発表いたしました。これは、手作業によるカード入力を段階的に廃止し、オンライン商取引をより安全で誰もが利用しやすいものにするという世界的な取り組みを支援するものです。
決済が複雑化する中、Mastercardはトークン化、ゲストチェックアウトの合理化、ペイメントパスキーを活用し、デバイス、ブラウザ、オペレーティングシステムを問わず、一貫したエクスペリエンスを実現します。
それは何を意味するのか:
非接触型決済は、対面での決済をシームレスかつユビキタスにしましたが、それと同じ体験をオンライン決済にももたらすチャンスがあります。
決済業界が厳格なセキュリティ・ソリューションを導入しているにもかかわらず、オンライン商取引は悪質業者による脆弱性に直面し続けています。Juniper Researchによると、オンライン決済詐欺による損失は2028年までに910億ドルを超えると予測されています。
Mastercardは、脅威を軽減し、オンライン商取引をユビキタスなものにするだけでなく、オンライン商取引を実現するための重要な以下のソリューションを提供しています。
1. トークン化は、ペイメントカードの16~19桁の番号を安全なトークンに置き換えるもので、不正行為を減らし承認率も向上させます。
2. 手入力の手間を省くため、Mastercardは加盟店サイトへのClick to Payの組み込みを容易にし、銀行パートナーがカードの登録を支援できるようにしています。
3. ペイメントパスキーは、パスワードやワンタイムコードをなくすため、オンライン・モバイル機器ベースの生体認証を活用しています。
なぜそれが重要なのか:
Mastercardは、非接触決済をはじめとするペイメント・イノベーションのリーダーとして、長年にわたり欧州をリードしてきました。
2014年に導入されたMastercardのトークン化サービスは、現在、全世界のオンライン商取引の25%を保護しており、その普及は前年比で50%加速しています。
トークン化は、携帯電話や自動車といった日常的なテクノロジーをコマース機器に変えるなど、多くのユースケースとメリットを引き出します。
トークン化とClick to Payや決済パスキーの融合は、エコシステム全体に利益をもたらします。消費者はより迅速で安全なチェックアウトを体験できる。加盟店は、売上の増加、不正行為の防止、承認率の向上が期待できる。また、発行会社はトップ・オブ・ウォレットの地位と顧客のセキュリティを得ることができるでしょう。
専門家の意見を聞く:
Mastercardのチーフ・プロダクト・オフィサーであるJorn Lambertは、次のように述べています。
「物理的なエクスペリエンスとデジタルなエクスペリエンスが融合し続ける中、私たちは可能性の限界を押し広げています。
私たちは、クラス最高のデジタル・サービスを統合し、お客様や最終消費者の皆様により多くの価値、アクセス、安全をお届けすることに注力しています。我々は、セキュリティの強化、より良い体験、そして全体として新しい支払い方法を提供するために、これらの技術の可能性を活用し続けます。」
Mastercard Europeのプロダクト&イノベーション担当エグゼクティブ・バイス・プレジデント、Valerie Nowakは付け加えます。
「ヨーロッパでは、エコシステム全体でトークン化の機運が高まっており、その利便性と不正行為の減少が評判を呼んでいます。2030年までにこのビジョンを達成することは、購入者、小売業者、カード発行会社の双方にとってWin-Win-Winになると確信しています。」
Source:Mastercard reimagines online checkout; commits to reaching 100% e-commerce tokenization by 2030 in Europe(Mastercard Newsroom)
おわりに
トークン化とは
トークン化について、記事内ではこのように説明されていました。
クレジットカードやデビットカードの番号は、例えば「○○○○ □□□□ ●●●● ■■■■」と表記されています。
トークン化とは、これらの数字を安全な別の数字に置き換えることです。
置き換えられた別の数字のことをトークンと言い、トークンは元となるカードデータは認識不可能でカードや個人の情報には結びつきません。
トークン化はコンバージョン数にも影響を及ぼす?
これまではトークン化によるカード情報のセキュリティ面にフォーカスしていましたが、販売者側、プラットフォーム側の視点も考察していきましょう。
これまで散々商品を吟味して選び抜いた後、決済画面では名前やら住所やらを散々入力して、最後にクレジットカードやデビットカードの番号を入力する作業は、購入者にとって地味にストレスが溜まります。
小さなカードに刻まれているこれまた小さな数字を間違えずに入力しなければなりませんからね。
オンラインショッピングでは、購入者は支払いに失敗すると、購入自体をあきらめてしまうことがあります。これは販売者の責任である場合もありますが、購入者が支払いカードを誤って入力したことによるフラストレーションによる場合もあります。
しかし、カード情報がトークン化され、支払いをスムーズにしかも安全におこなうことができるようになれば、コンバージョン数も確実に増えるでしょう。
Mastercardのヨーロッパにおけるこの取り組みは、販売者側にとってもまさにWin-Winですね。
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