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Jさん。お元気ですか?

父の四十九日が終わり、
骨壷が寺から墓へと移された。
寒がりだった父に編んで
渡せないままでいた
黒いマフラーを真っ白な骨つぼに巻いた。

「これで寒くないね。」 

墓の下の冷たい石の扉をゆっくりと閉める音が
静かな森の中でゴゴゴーっと鳴り響く。

桜が散り始めたころマフラーを抜き取ると…
「ぎゃぁああ!!」
しっかり巻きついたヘビの抜け殻が。
父はヘビが大大大キライ。

若い頃勤めていた長距離トラック会社の同僚に
イタズラでおもちゃのゴムヘビを
顔に向けて投げられたあと
男を半殺しの目に遭わせ警察に連行された。

「ごめんなさいお父さん…」
墓の前で肩をすくめ手を合わせた。

そして今もコレを書きながら
謝らなければならない。

お父さんごめんね。
でもね、これだけは二十年経った今も
どうしても踏ん切りがつかんのよ。

お父さんとJさん。
白い粉で繋がっていたんでしょ?
だからJさんはお父さんの
司法解剖を強く断ったんでしょ?

Jさん。あなたは今も父の遺族年金を受け取り
ながら他の男と暮らしてるそうだけど、
それはどうして?
まだ白い粉がやめられないの?

「3回忌が終わるまでの二年はここにいます。」

そう言ってあなたは両親が暮らしていたあの部屋に男を連れ込んでいた。

寂しがりで男にだらしないJさんだから
仕方がないとは思ってたけど、

その男たちもみんな白い粉で
繋がっているんでしょ?

母は今でも時々、
包丁を持った父に追い回される夢を見ています。
でも母は一度でも父の財産の半分を
あなたが持っていったことに対して
悔やみごとひとつ口にしていません。

四十九日のあと私はあなたに尋ねました。
「たった三ヶ月籍を入れただけなのに
財産半分でスゴイね。母が会社と父を支えてきたのは知ってますよね?放棄したいとは思いませんか?」
そのとき私もあなたも30才。

49才で寝たきりになった姉は
先日8回目の誕生日を迎え、
親父と同い年になりました。

でも誤解しないでください。
私たち家族はあなたが財産を半分持っていったことを今さらどうにかしようと言っているわけではないんです。

私たち、五十を過ぎましたね。

寂しがりだった父がなぜ車の中で
ひとり寂しく旅立ったのか。

車内からあなたと電話で会話したあと
父が最期どんな気持ちだったのか。

死因は何なのか?

真実が知りたいだけなんです。

最後にJさん、
あなたはまだ救われた気持ちでいますか?
後悔していませんか?
今からでも遅くはありませんよ。
誰もあなたを責めたりしません。





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