ネトゲからネットの世界へ
ネットの出会いは単純にオンラインゲームというモノに興味を惹かれたからだった。見ず知らずの人間と時を共有してゲームをするというのは刺激的だった。
小学2年生ごろだったろうか、オンラインゲームというものを知った。父がPC畑の人間だったために家庭にPCが何台もあったから導入は容易だった。
初めてプレイしたのがメイプルストーリー。狩場1とか、ヘネタク前とか、思い出を語るに暇がない。
最初はタイピングなどできなかったが、表情を表すアクションがあったためなんとか乗り切っていたが、スリピという場所に迷い込んだ際に帰り道もわからず難渋した時、たまたま一人通りかかった。
私はいよいよコミュニケーションをとらねばならぬと、ひらがな打ちを何とか駆使し、「あの」と声を掛けた。すると相手の足が止まり私の次の言葉を待っている。
レスポンスの遅い私に対して彼は自分の予定もあったろうにゆっくりと話を聞いてくれ、一枚の帰還書(近くの町に移動するアイテム)をくれた。暗く閉塞感があり、ゾンビキノコやトゲキノコが闊歩する中、安置に居を構えたそのコミュニケーションを私は忘れない。
こうも親切な人がいるもんだと実感し、そこからローマ字打ちを勉強し始めた。それからというモノ、他者との会話が実に楽しかった。
年齢も性別も違う人間との関りはこうも刺激的なものかと、当時はフレンドが自然とできていた。昨今ではネット上のフレンドの作り方がわからない始末。当時の無邪気なコミュニケーションはどこへやら。
リアルとネットが平行した現在、あえてネットでフレンドを作る必要もなく、リアルから引っ張ってくればいい。SNSの普及によりあのアンダーグラウンドな世界観は今やもうない。ネチケットなんて言葉も最近は聞かない。
妙にあの世界が懐かしい。ネット黎明期のあの時代が。