結局、捨てられない
Xをぼんやり見ていたら、地元の私立高校の卒業式の話題が。
卒業…か。
ダメだ。
去年からの話が解決していないからなのか、ブワッと思い出してしまった。
卒業式の日のこと。
来ないのは分かっていたのに、帰るかどうするか悩んでいた私に、思いがけない先生が私を呼び止めた。
大好きな生物の先生だった。
算数も数学も化学もできないくせに、生物だけは大好きだった私。
だから、この先生も大好きで。
そんな大好きな先生が、私をわざわざ探してまで靴箱で呼び止めて来たから驚いた。
「西岡さん、帰るが?」
うん?何でこんなこと聞かれるがやお???
「後悔せんかね?このまま帰って。」
私は一度も好きだった人の話をこの先生にはしたことがないし、私が相手に
「卒業式の日に迎えに来て」
って言った話なんて誰にもしたことがない。
なのに、先生から
「室戸からなら2時間はかかる。どんなに頑張ってもそればぁかかる。帰って後悔せん?待って来んのは諦めもつくと思う。でも帰ったら絶対後悔するで。」
と何故か熱心に止めてくれた。
でも、あの時の私は、奇跡なんて起きないことを知っていたし。
自分が手を離したこの恋が叶うこともないことも分かっていた。
だって、私がもういいって最後に手紙を書いてから、一度も向こうからは何の連絡もなくて。
最初で最後の絵葉書の「将来のことも考えてる」の言葉の裏にあるものが、私と同じ気持ちなのなら、連絡してきたと思うから。
もう終わったことだから考えないようにしていたのを、この先生は知っていたのかしら…。
「先生はね、後悔しちゅうことがあるがよ。大人になってから後悔しても取り戻せんがよ。ホンマに後悔せん?このまま帰ったら、大人になってから後悔することになるよ。」
そう言うてきくれたのに、私は
「先生、あの人は迎えにきたりせんよ。一回も電話にも出てくれんかった。一回も手紙に返事してくれんかった。会いに行ってもおらんかった。おらんことを予め教えてもくれんかった。こんなの、好きな女するようなことやないと思わん?だから、今日ここで待っても、私だけが結局泣くことになると思うき。先生、ありがとうね。」
って言うと、悲しい顔で
「そっか。」
って。
「もしね、来たら…バカじゃない今更って言うちゃって。じゃぁね、先生。お世話になりました。」
って 深々と頭を下げてそのまま帰った私。
あの先生が何かを知っていたのか、何も知らなかったのか、今となってはわからないし。
あの人が迎えに来たのかどうかも分からない。
きっと来てないと思う。
…思うじゃなく来てないでしょ。
来るわけないじゃん。
真相は分からない。
分からないけど、解決してないせいだろうな、モヤモヤし始めた。
考えたくないから、吐き出してしまう。
何故ここまで逃げるんだろうね。
責めたいわけでも、今更付き合いたいわけでもないのに。
別に私が納得できなくてもいいから、自分の言葉に責任を持とうよ。
とにかく連絡だけしてこようよ。
バカだねーって言ってあげるから。
私も見る目がなかったんだなぁって笑ってあげるよ。
私からメールしても何にも返事して来ないね?
ブロックしてるの?もしかして。
嫌なんでしょう?話するの。
だからしないでおいてあげてるのに。
このままだと、電話するしかないんだけど?
ブロックされてたら私この歳で、またあなたに失望するよ?
あなたが言い出したんだよ、連絡します、返事しますって。
ちゃんとそろそろして?
苦しくなる季節が巡ってくるから。
お願い。