読書録 2023年10月
網野善彦『異形の王権』 中世民衆思想史の異端児・網野善彦が、民俗学をはじめとする周辺学問の成果を受け入れながら、中世における「異形」の文化史を描き出す試み。一章にあたる「異形の風景」、二章にあたる「異形の力」で、図画資料から「異類異形」の姿を描き出し、鎌倉期には「聖なる」ものとして見られていた「異形」が、南北朝動乱期を境に、忌み、差別されるものへと変化することが述べられる。そして終章にあたる「異形の王権」において、天皇制の存続すら危ぶまれた時代に後醍醐天皇が「異形」を聖なるモ