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ありがとうがいっぱいだ

ぼくのおばさんは少し変わっている。ぼくが聞いてなくても一人で話してる。

宇宙にはねぇ、2千億もの星があるそうよ。その数より、もっともっと沢山の数の細胞が、たけしくんの体の中にあるんだよ。その細胞さんたちがね、毎日、毎日、働いてくれているから、私たちは生きていられるの。ありがたいね。

それからね、ほとんどの細胞は、一年たつと、ぜーんぶ新しくなるの。だから一年後のたけしくんはプルンプルンに新しいんだよ。

ぼくは、ぼくの手をみた。今、ゲームをしているぼくの手は一年後には新しくなっちゃうんだ。でも本当かな?

また別の日におばさんは言うんだ。
たけしくん、人はね、虹色をしているのよ。足から赤、オレンジ、黄、みどりって。そしてね、たけしくんが大好きな音も入っているの。赤色がド、オレンジがレ、黄色がミ。だから音楽を聴くと楽しいのかもね。おもしろいね。みどりがファ、ブルーがソ。

ぼくが虹色の音でできている?
と思ったら、「プゥプップップウ」とおならが出た。おならも音楽だ。でもくさいや。逃げろ!

こらぁ、たけしくん逃げるなぁ。
笑いながら、おばさんがおいかけてきた。

ある日は、たけしくんの夢はなにかな?とおばさんがきく。ゲームをしたまま答えないでいると、おばさんは話をつづけた。

たけしくんはね、すごいんだぞう。何でもできるんだよ。

そばでママが笑いだした。「あまり期待しても、何もできなかったらがっかりだよ。」って。

でも、おばさんはさらに大きな声で言うんだ。
人はね無限の可能性を持って生まれてくるの。
今のたけしくんに足りないのは、身長と経験だけよ。

なんだかうれしいけど、それよりジュースが飲みたいな。ぱっと立ち上がってぼくは台所へ走っていった。

またある日は、ねえねえ、今、たけしくんが食べている大根は、くるくるまわりながら大きくなるんだよ。知ってる?ダンスしているみたいよね。すると、おばさんがくるくるまわりだした。面白くてぼくも一緒に回った。そしたら目がまわった。

ゆかにねころびながらも、おばさんの話はつづく。野菜の花は知ってる?すごく可愛いのよ。花が咲いて種ができて、その種からまた野菜ができる。今は人が手を加えた種が多いから、自然の流れのとおりにいかない野菜もあるけれど、それはともかく、自然ってすごいね。ありがたいね。

ぼくは大好きな甘い人参ソテーを思い出した。
おじいちゃん、おばあちゃんの畑でとれる野菜だから甘いんだよ。ってママが言ってた。ぼくは人参をぬいたことがあるけれど、うん、なかなかぬけなかった。きっと土の中でおねんねしていたんだな。あつ!土がなかったら、大根も人参もジャガイモも、スイカもトマトも食べられないのかな?ママが「いただきます」をちゃんと言いなさいって怒るけど、いただきますは、ママに言うんじゃなくて、土に言ってるのかな?

ぼくは、土を見たくなった。
「こら、食べかけでどこに行くの」と、おばさんと話をしていたはずのママが追いかけてくる。

畑に出て、土をつかんだ。ぱらぱらぱらと土を落とす。手をつくと手の形になった。足もサンダルの形になった。ねころんでみた。きっと、ぼくの形になっている。お空が青いや。

「またぁ〜洗い物が増えたぁ」とママがさわいでいる。おばさんは、ぼくが畑に忘れてきたサンダルに水をかけている。

ぼくは心の中で思ったんだ。
「ありがとうがいっぱいだね。」

〜おわり〜

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