サラットナさん 第三章
相変わらず境内清掃が下手な私。
まっ、まだ数ヶ月目だから仕方ないかぁ。
でもなぁ。
思わず神主さんに、どうしたら上手になりますか?と聞くと、100年早いよと言われた。
も、もしかしてサラットナさんの存在に気がついている?サラットナさん100歳はこえていると言ってたもの。
冬に近づき、落ち葉の量も増えた。
掃いても掃いても、降り止まぬ落ち葉め、クソッ!
あーら、お口が悪いことぉ。
今日は、黄金の袴をはいたサラットナさんが現れた。
どーしたんですか?その袴。ピカピカですねぇ。
もうすぐ七五三の季節だから、気合いを入れてるのよ。ところで参道の話は覚えているかしら?
サラットナさん、ごめんなさい。少し忘れていました。
そう、あれは秋の大祭準備が始まった頃。
宮司様から全員に、秋の大祭は春の大祭の次に大切な日。この日も全国の神々様が集まるから、皆で心して準備するようにとお達しがあった。
とは言われても、普段通りにしか掃けないなぁとほうきを振り回していた時に、サラットナさんが諭し始めたのだ。
参道を清めることは、人の体や心を清めることと同じよ。大切に掃いてほしいわ。
あなた達は、神の国から産道を通ってこの世に生まれてきた。その瞬間からあなた達自身が参道そのものなの。
参道は、落ち葉でうもれたり草が生えてくるけれど、掃き清め草取りをすることで本来の姿に戻る。それと同じで、あなた達も清めることで本来もっている人間力が作動する。
サラットナさん、なんか難しいけど、それじゃ、私たちは自分を大切にする、責任があるのかもですね。
貝塚さん、あるのかもではなく、あるのです。
自分をどのように扱うかによって、日々、見るもの、現れるものが変わってゆくのです。
そしてあなた達が、生まれ持つ宝を誰かに与えてほしいのです。生まれ持つものは、当たり前に簡単に出来てしまうし減ることもない。
あなた達の参道にある、色んな大好きを磨いて、その宝を分かちあってほしい。それはそれはとても愉しい道なのよ。
サラットナさん、私にそれを言われても。
一応、毎日楽しいし、料理上手な旦那の飯は美味いし、日々呑気に生きられるだけで満足だなぁ。
そんな私のぼやきは聞こえないらしく、サラットナさんは遠い目をして話を続ける。・・・
・・・
ところで、参道は産道のほかにもう一つの意味もあるわ。見つけられるかしら?話は以上。
境内清掃をお仕事として続けるならば、貝塚さんご自身の宝を見つけて磨いて分かち合って欲しいのよ。
はぁ〜それは無理っしょ。人間今更、そんなに変わらないって。
その数日後、参道をまっすぐに照らす太陽の光と出会った。光が何かに反射して神殿の扉にも届いている。美しい。あっ、もしかして、参道=SUN道?後でサラットナさんに答えあわせしなくちゃ。
そんなことも、すっかり忘れていた私だった。
てへっ、さあ、お掃除頑張りましょう。