アオボウシ
父が59歳のとき若年性アルツハイマー型認知症と診断された。仕事中のミスが増え、定年を待たずに早期退職してからわかったことだった。 最初の5、6年。切符が買えなくなったり、辻褄の合わない言動が増えたりしたものの、なんとか日常生活が送れていた。料理をぐちゃぐちゃに混ぜっ返しながらも「おいしいな」と笑っていた。 しかし、その後徘徊が始まり、トイレで排泄ができなくなり、会話がほとんど成り立たなくなっていった。ものすごいスピードで人格を失っていくように思えた。 家族だけでの介護が
日本語を学ぶ留学生の中には、アニメやマンガ、ゲームが好きだという人が多くいる(わたしは日本語教師をしている)。わたしも好きなほうだが、『one-piece』や『鋼の錬金術師』ぐらいではダメらしく、聞いてもわからないものが増えてきた。インターネットのすごさを感じる。 あるとき、クラスでロールプレイングゲームの話になった。 わたしはロールプレイングゲームが好きだ。といっても、ドラクエ専門でドラクエしか知らないのだが、ドラクエⅪまで攻略した。 中でもストーリーがすばらしいと思う
先週末に花火を見に行った。出不精でフットワークが軽いとは言えないほうだが、毎年この花火大会を楽しみにしている。例年に比べて多く感じた浴衣姿の若者が、郷愁誘うせつない夏の気分をいっそう上げてくれる。 ずいぶん前だが、日本語クラスの留学生に花火が好きだという話をした(わたしは日本語教師をしている)。花火だけではなく花見も月見も好きだ。それぞれで何をするかとか、どのスポットがおすすめかとか、そんな話をしたのだと思う。 一人の学習者が、「じゃあ、もみじを見に行くのは好きですか」と
大学に入学して4か月を過ごした留学生に、これまでの気づきを教えてもらった(わたしは日本語教師をしている)。その中で、ここ数年毎年のように耳にすることを書いてみたい。 この大学では授業の一環として、あるプロジェクトが行われている。そのプロジェクトには新入生全員が参加し、学科もバラバラにグループが構成され、学生主体で運営される。もちろん、日本人学生も留学生もいっしょだ。 その間、プロジェクトに必要な計画・運営・内容などについての「話し合い」が学生間で密にもたれ、進められていく
きのうの夕方のニュース番組『かんさい情報ネットten.』での話。お天気キャスターの蓬莱さんが手描きのフリップを手に「今日も熱帯夜になりそうです」と言っていた。 そのフリップには「トロピカルナイト」と書かれ、文字のバックにはマラカスを手に陽気に踊る人がクレヨンで描かれている。蓬莱さん自身が描いているので、彼のイメージだ。 蓬莱さんいわく、熱帯夜は英語で「トロピカルナイト」らしい。そう、「熱帯=トロピカル」「夜=ナイト」。 うーん、「トロピカルナイト」という字面と熱帯夜の実
一日は24時間で、生きている限り、これだけは皆に平等だと常々思っている。24時間にやることは人それぞれで、同じ人でも日によって違うとも思うが、みなどうやって一日を終わらせているのだろう。 「一日を終わらせる」。わたしはこれを意識的にやっている。 もう今日はこれで終わり!仕事はしない。仕事のことは考えない。仕事以外のくよくよすることも、もう考えない! わたしは日本語教師をしている。授業はもちろん仕事の一つだが、他にも授業をするための準備、添削、採点、宿題やテストの作成や授業
「あれから、自分が考えたことを時々書いているんです」 中国からの留学生が日本語の授業前に話しかけてきた(わたしは、日本語教師をしている)。 「あれから」というのは、数週間前に立ち話をした時のことだ。 なかなか観察眼に優れた人で、「日本語を勉強し始めたばかりのときは、みな『上手ですね』ってほめてくれたのに、今はほめられないんですよね」とか、「日本人の新入生の英語のレベルが(2年前より)上がっていると思う」とか、「日本の大学生が日本人らしくなくなっている。なんか言うことがは
自己紹介で仕事の話をすると、「どうして日本語教師になったんですか」と聞かれることがある(わたしは日本語教師をしている)。 「学生時代の留学経験がきっかけで…」とか 「これからの社会を見据えて、ぜひとも日本語を世界にと思い…」とかを期待されるのだと思うのだが、残念ながらこれといった動機を覚えていないのでいつも返答に困ってしまう。(現在の目標はあります、念のため)。 記憶にあるのは、学生時代に近所の大型書店で、日本語教師になりたい人のためのムック本を立ち読みしたこと。そのとき
noteで Yasuhiro Muraji さんの記事、「店員の新たなかけ声」を読んだ。ショップ店員のかけ声の変化、進化?についての文章は、店員の独特の声調子が見事に再現されていて、面白おかしく読ませていただいた。(ありがとうございました)。 https://note.mu/tsubroll/n/ncea3d0d3a883 この記事を読んで、思い出したことがある。 コンビニやスーパーで聞かない日はないかけ声。 「いらっしゃいませ、こんにちは~」 これを、初めて聞いたと
日本語の授業後に中国からの留学生にこんなことを聞かれた。(わたしは日本語教師をしている)。 「世界の言語はみんなが使いやすい言語、例えば英語だけになったらいいと思いますか」 その留学生は、大学で専門科目を学ぶかたわら教養科目で英語やフランス語などといったさまざまな言語を履修している。友人との会話でそんな話がでてきたらしい。わたしの答えは(もちろん)NOだ。 世界には6000もの言語があるそうだ。しかし、その半数近くの言語が消滅の危機にあるらしい。そもそも6000もの言語が
日本語のクラスでスピーチをするために、フランスの学習者と原稿チェックをしていたときのこと(わたしは日本語教師をしている)。 フランスの食文化を紹介するということで、食前酒を飲む習慣についても書いていた。フランス語ではアペリティフといって、フランス人の食事には欠かせない習慣だという。 しかし、その由来についての記載がなかったので 「どんな意味があるんですか」 と聞くと、その人はしばらく考える素振りを見せてからこう言った。 「たぶん、物語があると思いますが、わたしははっきり
「アオボウシはこだわりがないなあ」 学生時代に友人に言われたことばだ。 確か、いっしょに行く旅行スケジュールを決めていたときだったと思う。別に否定的な意味ではなくて、その子はこだわりが強い人だったから、「え、いいの?わたしの思った通りにしちゃって」みたいな感じだったが、記憶に残っている。 「この店に来たら、絶対コレを食べることに決めてるの。他は食べない!」 「このグループの追っかけ、20年してる。何があってもツアーには行く!」 「絵を描くのが大好きで、ずっと描きためている
雨音を聞くと思い出すことがある。 雨に濡れない小さな部屋の中でトタンや地面にうちつける雨音を聞いていると、ほっとしたような少しワクワクしたような気分になる。 もし外にいたら濡れてしまって面倒くさいことになるけれど、自分は安全なところにいるから大丈夫。小さなバリアに守られているようなそんな感覚が子どものころから好きだった。 そんな気持ちを小学校の国語の授業で詩に書いたことがある。 詳細までは覚えていないが、韻を踏んだりリフレインを使ったりして、雨の日の気持ちを詩に込めた。
台湾からの留学生がアルバイトを始めたと言ってきた(わたしは日本語教師をしている)。ゲストハウスで受付業務が主だが、時間帯によってはクリーニングもするらしい。このところの外国人観光客の増加に伴う宿泊施設の建設ラッシュのためか、ホテルやゲストハウスでの求人が増えているようだ。 留学生のアルバイトの上限時間は1週間に28時間。これを守って、かつ学業に支障が出ないのなら、日本語学習のためにも日本社会経験のためにもアルバイトは大歓迎だ。日本語学習歴は1年足らずだが、中国語も英語も堪能
前回のnoteで色彩にまつわることを書いて、子どものころからなんとなく不思議に思っていることを思い出した。 「みなさんは、時間に色がついていますか?」 わたしは時間に色のイメージがある。例えば、 6時=青 7時=ごく薄い水色 8時=朱色 のように。 もっと書くと、 9時=ピンク 10時=レモン色 11時=群青色 12時=白に近い黄色 1時=明るい青 2時=緑 3時=水色 4時=深緑 5時=黄色 午前と午後はだいたい同じイメージだ。(少し明度が違うような気もするが、よ
noteをはじめて、まもなく2か月になる。 週に2回の投稿ペースで、今回で17記事目。自分を表現する楽しさや言語化できない悩ましさ、読んでもらえた喜びやスキしてもらったときの高揚感(コレ、思いのほか強烈でした)。 noteやってみてよかったと思うことはたくさんあるのだけれど、特にいいなと思っているのは、「みんなのフォトギャラリー」から作品が借りられること。 初投稿のときにはこの機能を知らなかったのだが、2回目からはずっとイラストをお借りしている。特にイラストにこだわってい